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インターネット経歴詐称マンの時代

インターネット、特に「匿名SNS」の特徴は、なんと言っても秘匿性だ。

顔も名前も社会的地位も、全て明らかにせず活動できる。

リアルの自分とは違った人間になれる

それは匿名インターネットの魅力でもあるが、しかし同時に危険性でもある。


インターネット経歴詐称マン

リアルの自分とは違った、別の人間になれる匿名空間。

そのような空間で何が起こるかといえば、当然ながら経歴詐称だ。

《日本は夏も終わりのようですが、こちらはプライベートヴィラでプール開き!》
《誕生日プレゼントはとうとうバッグやアクセサリーの域を超え、今年はなんと会社と車とドメインを貰いました》

そんな調子のツイートが逮捕前日までの1年で約400件。高級料理店での食事や身につけたブランド品の数々、海外の高級リゾートでの休日やセクシーな水着の自撮り写真をアップして、“セレブ美女”として知られていた「ばびろんまつこ」こと、松永かなえ容疑者(26才)が10月28日、京都府警に詐欺と商標法違反で逮捕された。

容疑は今年5月、カルティエの偽ブレスレットをネットオークションに出品し、京都市内の40代女性に約65万円で販売したというもの。

「松永は“中国から偽物を5万円ほどで買って正規品として出品した”と容疑を認め、これまで400万円を売り上げたと自供。被害総額は1000万円以上あるとみて捜査を進めている」(捜査関係者)

自分の容姿や豪華な暮らしぶりをアピールする女性は「キラキラ女子」と呼ばれ、若い女性の憧れの的。中でもばびろんまつこの“キラキラツイート”は約1万5000人ものフォロワーを集める人気ぶりだった。

(引用:自称・セレブのばびろんまつこ 1LDK家賃16万円に住んでいた

「会社と車を男から貢がれた」と豪語していたキラキラアカウントの正体は、偽ブランド販売で小銭を稼ぐ平凡な都内OLだった…。

なんともぞっとする話だが、2015年に生じた実際の事件である。

しかし「ばびろんまつこ」さんはインターネット経歴詐称マンの中ではまだまだ小物だ。経歴詐称マンの中でも悪質な者たちは、経歴詐称で得た偽りの社会的プレスティージを利用してビジネスや犯罪を目論む者もいる。


経歴詐称をビジネスに繋げる人たち

例えば山岳写真界隈で一時期飛ぶ鳥を落とす勢いだった「山写」さん。

彼は

エベレスト、マカルー、カンチェンジュンガ、モンブランなどの海外高峰を登頂
・元ナショナルジオグラフィックのカメラマン
・リクルート社でフロントエンジニア兼ディレクターとして勤務経験アリ
・フリークライミングの最高グレードはオンサイト5.12b
・大学の客員准教授
・この経歴で30代男性

などの輝かしい経歴で、一時期は登山界の若きスーパースターになりかけた。実際に山岳系のWEBサイトで連載を持ったり、企業相手のセミナーなどを行っていたというから恐ろしい。

しかし当然のことながらというか、規模が大きくなったことで登山界の「プロ」たちから経歴詐称を疑われはじめ、最後には活動の主軸たるTwitterアカウントの更新が完全に途絶えてしまった。自業自得と言うしかない。

【参考】
・「山写」なる人物のこと
・検証①山岳写真家「山写」氏ープロフィール編


経歴詐称を犯罪に利用する人たち

「山写」さんは経歴詐称をビジネスに繋げたパターンだが、もっと悪質な者もいる。それは経歴詐称を犯罪に繋げたパターンだ。

記憶に新しいのは、2020年にちょっとした炎上騒ぎになった「やまさん」というアカウントだろう。

「やまさん」は、

・自称・元ゴールドマン・サックス証券勤務
・自称・現在は個人投資家で運用額は100億円越え
・頻繁に超高級車や超高級腕時計の写真をアピール

というアカウントだった。

しかし次第に金融に携わる本物の「プロ」たちから疑惑の声が噴出し、「元GSで運用資産100億円超」というメッキは剥がれていく。

剥がれていくと同時に表れたのが、

「やまさんに融資や資産運用代行の名目でお金を預けている」

という人たちの声だった。なんと数百万円~数千万円の資金を「やまさん」に預けてしまった人たちが数十人単位で存在していたのだ。運用資産100億円超の元GSアカウントの正体は、詐欺師だったというわけだ。

【参考】
・【悲報】某GSさん、ゴールドマン在籍疑惑でアカ消し逃亡。


新たな経歴詐称マンの誕生

そんなインターネット経歴詐称マンの戦列に、新たな一角が加わったようだ。その名も、EU機関職員ボンドさん

彼の経歴もこれまたすごい。自称しているものを列挙してみよう。

・日本出身。親族には華族の名家。
・ドイツ・ハイデルベルク大学医学部卒
・イギリス・オックスフォード大学で修士獲得
・シンガポール国立大学中退
・ベイン・アンド・カンパニーに勤務(HSBCの前)
・HSBCシンガポールに勤務(22歳)
・HSBCロンドンで勤務(23歳)
・25歳頃、フランス人女性と結婚し離婚
・現在はEU機関職員として勤務
・年休200日over
・年収手取りで約1700万円
・11ヶ国語を操り、そのうち5ヶ国語はネイティブレベル
・スイス・フランスの二重国籍
・会計士資格を保有
・32歳男性

すごいのが来た

としか形容できないのだが、よく考えるまでもなく彼の経歴は矛盾に満ち溢れている。以下で詳しく指摘しよう。

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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