なぜ韓国は性被害の「虚偽告訴」を厳しく取り締まるのか
サッカー日本代表、伊東純也選手の「虚偽告訴」報道が話題だ。
子細は読者諸兄もご存じだろう。女性2人から「レ○プされた」として刑事告訴され週刊誌にも報じられたのだが、逆に伊東選手は事実無根であるとして女性2人を虚偽告訴罪で告訴し返した。伊藤選手の代理人弁護士は事実関係について相当の自信を持っているようであり、今後司法がどのような裁きを下すのかを含め、様々な意味で注目を集めている。
伊藤選手のケースは、単独の事件と見るよりは大きな流れの中のひとつと見做す方が適切だろう。読者諸兄もお気付きの通り、「性暴力被害を受けた」として訴えられた側の男性が、逆に相手側の女性を訴え返す事例がここのところ急増しているのだ。
昨年12月には国民的コメディアンである松本人志が全く同じような流れで週刊誌への訴訟に踏み切ったし、2019年の草津町冤罪事件は捜査が進みレ○プ疑惑が全くの虚偽であったことが明らかになっている。「性暴力疑惑をかけられた男性が相手側の女性を訴え返す」など日本社会においてそれまでほぼ見られなかった事件だが、ここ数年その「当たり前」が急激に形を変えつつある。
一体この先、日本はどうなるのか。それを占う上で恰好の題材が「男女対立先進国」たるお隣り韓国である。
韓国は日本と比べ物にならないレベルの性被害「虚偽告訴」大国だったのが、2022年から取り締まりが強化され、虚偽告訴が検事による捜査が可能な「重大犯罪」のひとつに規定され、次々と虚偽告訴事件が摘発されている。そのペースは脅威的で、2022年から2023年にかけて、虚偽告訴罪の摘発数はおよそ1.6倍にまで増加しているほどだ。
なぜ今韓国で虚偽告訴の取り締まりが強化されているのか。そもそもなぜ性暴力被害の虚偽告訴が韓国社会に蔓延してしまったのか。本稿では「虚偽告訴」を巡る男女対立先進国の最新事情をご紹介していく。
韓国の先進的かつ問題含みな司法制度
まず韓国の司法制度について軽くご説明しておこう。
韓国の司法制度は様々な点で日本と異なるが、その差異の最たるものは訴訟件数の多さ、身柄不拘束の原則、そして匿名報道の原則だろう。
まず、韓国は日本とは比べ物にならないほどの訴訟社会である。さらに民事訴訟よりも刑事訴訟に重きを置く風潮が強く、ささいなトラブルでも民事ではなく刑事で告訴する文化が社会全体に根付いている。
韓国の訴訟社会っぷりを物語る一例として、弁護士登録者数の多さがある。韓国の弁護士登録者数はおよそ3万4000人で、これは人口あたりの弁護士数で言うと日本のおよそ2倍である。とにかく日本と比較にならないレベルで司法判断を仰ぐのが韓国社会であり、それを承知の上でないと韓国の虚偽告訴ブームは理解できない。
ただし、訴訟社会だけあって、韓国の司法プロセスは日本より進んでいる面も多くある。その筆頭が身柄不拘束の原則だ。韓国司法においては捜査段階で身柄を拘束されることはほとんどない。いわゆる日本の「人質司法」のような、被疑段階での長期拘留が認められていないのだ。さらに報道においても匿名報道が原則であり、殺人や強姦などの凶悪犯罪でさえも被疑段階では(著名人を除き)実名報道が許されていない。
つまりざっくり言って、韓国における刑事訴訟は日本と比べ相当にカジュアルなのだ。日本では人質司法&実名報道の地獄コンボにより「刑事事件の被疑者になった時点で人生終了」という感が強く、告発する被害者側としても、被害届を受理する警察としても、また起訴する検察側としても、それなりの覚悟を持たなければ刑事訴訟の手続きに進むことはできない。一方の韓国は刑事訴訟そのもののハードルが低く、日本に比べると相当気軽に刑事訴訟の手続きに進むことができる。ゆえに告訴件数も日本と比べ圧倒的に多い。
日韓どちらの司法制度が優れているか、一概に断ずることはできそうにない。身柄不拘束の原則、匿名報道の原則等においては明確に韓国司法は日本司法よりも明確に先進的である。そうした意味において「韓国を見習え」と叫ぶ日本の法曹関係者は少なくない。しかしそれが刑事告訴の乱発という社会問題を招いている面もあり、その点について韓国の司法関係者は「日本を見習え」と声高に主張しているようである。
そんな韓国司法が、あるひとつの事件を契機に一転して機能不全に陥りかける事態が発生する。そう、ご存じMeTooである。
カジュアル刑事訴訟社会×MeToo=地獄
性被害告発ブームは、ある意味で韓国の司法制度と相性が良すぎた。
言うまでもなく性暴力は刑事犯罪である。刑事告訴がカジュアルな国で性被害告発ブームが生じればどうなるか?結果は火を見るよりも明らかだろう。韓国のMeTooムーブメントは、日本と比べ物にならない規模の盛り上がりを見せた。
多くの著名人や文化人や政治家がMeTooムーブメントの火炎の中に投げ込まれ、法の適正手続きを経ない経ない私刑に処されることになったのだ。折しも韓国は「フェミスト大統領」を自称するムン・ジェインが政権に就いていた時期である。政権サイドもむしろMeTooを応援し、ジェンダー政策に明るいことを以て国民の支持を得ようと躍起になった。
しかし韓国MeTooは凄惨な血生臭さを見せた。
自殺者が、それも冤罪による自殺者が続出したのである。
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