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ホストクラブの歴史 「1億円稼ぐホスト」はなぜここまで一般的になったのか

かつては有閑マダムが集い、ダンスを楽しみながら飲食する貴族的な社交サロンだったホストクラブ。前編でもお伝えしたように、 「愛本店」がホストクラブの基本システムを作ってから料金体系は大きくは変わっていない。売掛金などの制度自体も昔から存在している。

しかし今では少なくないホストクラブが札束で殴り合うホス狂の煉獄になり果てている。そうした業態を巡ってメディアからのバッシングも後を絶たない。しかしそもそも、なぜここ10年ほど異常なホストブームが吹き荒れているのだろう?インタビュー後編では2000年代に始まったホストブームを経て、2010年代以降の「ホスト・バブル」と呼ばれる業界急拡大の時代に迫っていく。

【今回お話を伺った方】
愛田観光株式会社 専務
野口左近氏

「愛本店」などを中心に展開する愛田観光株式会社のキーパーソン。「愛本店」は現存する最古の超大型ホストクラブであり、1971年のオープン以来50年以上の歴史を持つ。野口氏は愛田観光の創業社長として辣腕を振るった伝説的ホストクラブ経営者愛田武氏の右腕として、1990年の業界参入以来30年以上に渡ってホスト産業の第一線で活躍中。

Twitter : @Mv0IR7EIXvQkjFy


マスコミが生み出した第一次「ホストブーム」

聞き手:小山晃弘(以下「小山」)
前編でお話頂いたように、元々は裕福なマダム層を対象としたダンスホールといった立ち位置だったホストクラブですが、援助交際ブームによって若いセックスワーカーが増えたことで顧客層が若年化したり、石原都政の歌舞伎町浄化作戦を受けて一定の健全化を遂げたりと、様々な変化を経験しました。

ようやく、ここ10年ほどのお話に入っていければと思っているのですが、最近は「ホストブーム」を超えて「ホストバブル」などとも言われていますよね。昔は年間数千万円の売上があれば文句なしにトップホストだったのが、今では年間数億円という売上をあげるホストが珍しくなくなっている。トップ層では年間売上5億円なんて話まで伝わってきます。日本経済は不調なのに、ホスト業界だけ未曽有の好景気というか、インフレーションのようなことまで起きている。

これは一体なにが切っ掛けだったのか、という話をお伺いできればと思います。

野口左近専務(以下「野口専務」)
そうですね、今は第四次ホストブームとかって言われてるんですが、その一番最初の第一次ホストブームの切っ掛けが何だったかって言うと、やはりテレビが大きかったんじゃないかだったと思いますね。

2000年代前半くらいからかな。ホストたちが一気に地上波テレビに出始めたんですよ。「ホストの花道」とか、ホストにフォーカスを当てる番組なんかも次々と生まれて、うちの城咲仁(「愛本店」の往年のNo.1)なんかもよく出てましたし、社長(愛田武氏)もサンジャポのレギュラーになってましたからね。

小山
それまでホストというと、どちらかというとアングラな夜の世界のイメージでしたが、2000年代から一気にカジュアルなイメージがついていったと自分も感じます。漫画でも「夜王」(2003-)のような人気作品が出てきますし、ホストが主人公のテレビドラマなんかもありましたよね?

野口専務
「MR.BRAIN」(2009)かな。キムタクが人気ホストの役どころをやる。

小山
実録ドキュメンタリー番組「ホストの花道」は何年ぐらいでしたっけ?

野口専務
城咲仁のときだから、2000年代前半からですね。TVシリーズも3期、4期と続いて好調だったみたいです。愛本店では城咲が辞めてから、愛沢光が出てきました。そのあたりから、ホストという職業が一気に人気となりましたね。

小山
ホストが地上波テレビに出るようになって、ホストを目指す男性が増えていったと。ちなみに、ホストになりたがる男性ってどういう方が多いんでしょうか?自分からすると「目指せ一攫千金!」みたいなイメージがありますが。

野口専務
やっぱり一攫千金を夢見て来る子はこれは昔からいるんだけど、前の仕事場がうまくいかなくてとか、テレビで見たことある華やかなホストっていう世界を一度経験してみたかったとか、入ってくる動機はいっぱいあります。若い子メインのお店とかだと、「歌舞伎町一のイケメンって言われたくて応募しました」っていうのもあるし。ただ顔だけで売れるかというとそれは難しいけどね。うち(愛本店)もずっと「人間性」を売りにしてますから。

小山
これは半分冗談ですが、僕の顔でも採用されそうですかね?

野口専務
うん。全然OK。今いくつですか?

小山
35です。

野口専務
ああ、じゃ、ちょうどいいじゃない。うち(愛本店)は下は20歳から上は45までいます。もちろん45の子だって40歳から始めてるわけじゃなくて、25から始めてホスト歴20年ですってパターンもあるんだけど、35で入って39で年間チャンピオンを取った子もいます。その子は凄かったけどね。全てを捨てて、ホストに命かけてたから、そこら辺の子とはちょっと違うんですよ。もう人の3倍動くし、人の何倍早く起きて、その行動力もすごいし。

小山
35歳未経験からの年間トップですか!!生半可な覚悟でやれることとは思わないですが、そういうケースがあるのは同じ30代として励まされますね。

またお話を伺っていると、ホストが若い男性にとって憧れの仕事になってるのを強く感じます。煌びやかな店内やスーツ姿というのもありますが、実力主義で才能と努力次第でいくらでも稼げる仕事って、今の日本にそう存在しないと思うんですよね。そうした意味でも、若い男性の間でホストという仕事が魅力的になってるのを感じます。


ホス狂による札束バトルを加速させた最大の原因とは

小山
1990年代以降の援助交際ブームから若いセックスワーカーが増加し、ホストクラブの客層が若年化、また需要も増大していった。そして2000年代以降マスメディアにホストが登場し始めることで、ホストになりたがる若い男性も増えていった。

ここら辺がホスト「ブーム」の要因かなと思うのですが、もう一方のホスト「バブル」については如何でしょう。年間売上何億円というホストが次々と誕生していることからもわかるように、ホストクラブで遊ぶために必要な金額はここ10年ほど急激に上昇しているという印象があるのですが。

野口専務
あがっていますね。厳密に言うと「ホストクラブで使う金額が上がっている」っていうよりは、「ホストのエースになるのに必要な金額が上がっている」というのが正しい。ホストクラブの料金体系自体は昔とさほど変わりません。

小山
ホストクラブに大金を費やす女性というのは、やはり基本的にあるホストのエース(一番ホストに売上を上げさせている客)を狙うわけじゃないですか。一番の客になって、ホストさんにとって特別な存在になりたい。そういう動機でみんなお金を使ってるわけですよね。

野口専務
エース狙いだけじゃなく、例えば「あの客にだけは絶対勝ちたい」とか、「せめて売上ベスト5の客でありたい」とか、色々ありますけどね。お店の中でどれだけそのホストにお金を使ったかをめぐる、女の子同士の争いがあるわけです。

もちろんそういう争いは昔からあるんだけど、ここ10年ほどその争いが激しくなっています。ひとつの理由としては、

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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