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医師の仕事はなぜ「つまらない」のか

近頃SNSなどで公衆衛生にまつわる論争が過熱しつつあるように見える。

発端はもちろんコロナ禍における諸々の行動制限に関する議論だが、論争が深まるにつれ国民皆保険制度をはじめとする医療行政そのものに対する反対言論のようなものも生まれつつある。

「我々の生活に医療行政が介入することは必ずしも正義なのか?」という命題について、多くの人が疑問を抱きはじめたようなのだ。

ある意味で、これは極めて健全な論争だ。

公衆衛生は必然的に外部性デメリットを伴う。感染症対策であれば広範な産業にダメージを与えてしまうし、年金や国民皆保険制度なども実質的な税負担として現役世代の生活を苦しめている。これら制度について舌鋒鋭く議論が戦わされることは、民主国家として極めて健全な在り方と言えるだろう。

個人的に、「必要不可欠だが外部性を伴う」という意味において、公衆衛生は徴税や安全保障と似たような性質を持つと思っている。税務官や自衛官が国民的な論争と無縁ではいられないように、感染症医や医系技官をはじめとする医療者が国民の激しい批判に晒されるのはある意味で必然だろう。国民生活を厳しく制限することを職務として行っているのだから、そこに批判や議論が巻き起こらない方がむしろ不自然である。

…というのが筆者の考えなのだが、どうも医療者たちの見解はやや異なるらしい。多くの医療者は昨今の公衆衛生をめぐる論争について、かなり根強い不満感を抱いているようなのだ。

これは何を意味するのだろう?というのが本稿のテーマである。もちろん「医師業の高い社会的地位が批判を許さないタイプの自尊心を育ててしまった」という面も少なからずあるのかもしれないが、筆者としては別の要因が大きいのではないかと感じている。

端的に言えば、「医師」という仕事に対する当事者と非当事者のイメージ格差、これが公衆衛生をめぐる論争を、不必要なまでに過激なものにしてしまっているように感じるのだ。

つまり、どうも医師という人々は、自分の仕事に大きな不満足感や不全感を抱いているようなのである。しかし一方で外野は「医師」という仕事にピカピカのイメージを抱いており、そのイメージのギャップが両者の議論を嚙み合わないものにしている。

本稿は「医師の仕事はなぜつまらないのか」と題して、医師たちが抱く不全感の背景について考察していく。


医師業の満足度は高い?低い?

そもそも医師業の満足度は高いのだろうか。低いのだろうか。「医師たちは自らの仕事に不全感を抱いている」という筆者の予測を裏付けるには、それなりのデータが必要になる。

幸いなことに、医療従事者専門のポータルサイト「M3」が、ビジネスパーソン向けメディア「News Picks」と協力して医師業とそれ以外の満足度を比較したアンケート調査がある。

調査によれば、

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