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能登半島地震における旅館の記録59
今年もあと10日ほど。本来ならば年賀状や新年に向けて準備をしていましたが、今年は特別な準備をする事なく、静かに淡々と過ごす事にしました。色んな不安や言葉に出来ない寂しさがありますが、多田屋からの七尾湾の風景はそれはそれは美しく、静寂の中にも自然の力強さを感じ、パワーをもらっています。
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館内を周ると建物のズレがさらに広がっているのが確認できる。冷たい風がビューと館内に吹き込み、館内はとても寒い。皆が集まる事務所の天井が更に下がってきているのと、あちこちの扉が閉まらなくなってきている。残念だが、多田屋の建物が傾いてきているのを実感する日々である。
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倒れたら大惨事だ
12月2日 ボランティアデー
この日もスタッフが集まりボランティアでいろんな作業をしてくれる。まかないのお弁当も皆で食べるのは何回目になったかな。この日は懐かしい多田屋の朝食海苔がお弁当に添えられていた!
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12月3日 不審者現る!
多田屋事務所に、解体業者の下請けを名乗る若者が訪ねて来る。解体に向けて館内の下見をさせてくれとの事。最初は総務が話を聞いていたが、話をしていると何だか怪しい…。多田屋はまだ、解体業者が正式に決まっていない。次に社長が対応。「どこの会社?名刺は持っているの?」「○○会社です。名刺は持っていません…。」「そこの会社の誰と多田屋の誰が話をしているの?」「うちの社長と多田屋の社長様です。」「俺が社長だけど???はい!ダメ~!出直して来て!」と社長が一括。ついに来たか闇バイト。恐らく館内に入ってお金になりそうな物を探し、セキュリティーなども確認していくはずだったのか…。なんとその若者、もう一度多田屋に戻って来た。「すみません、こちらの勘違いでした。」本当に勘違いなのか、不審者なのか。とりあえず、各旅館にこの日の出来事を連絡する。
12月4日 清掃会社の社長様がいらっしゃる
多田屋は自社で館内清掃をしていたのではなく、ある清掃会社様に掃除を依頼していた。清掃会社のスタッフの皆さん達は、とても多田屋に寄り添ってくれていた。一緒に色んな事を考えて、お客様やスタッフ皆にとって何がベストなのかを話し合っては一緒の時間を過ごしてきた仲間。私が館内を周っていても、とても気持ちの良い挨拶をしてくれたり、お客様にもいつも笑顔で挨拶してくれていたスタッフの方々。でも今回の震災で清掃を依頼する事がなくなり、一旦多田屋を卒業される事となった。
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多田屋はいろんな業者さんに助けられてきた。それを忘れていたわけではないけど、改めて挨拶に来られると、感謝の気持ちを日頃からもっともっと伝えておけば良かった、日々忙しい中でも、若女将としてスタッフ一人一人に声を掛ければ良かったと後悔ばかり…。そして急に寂しさが込み上げる。多田屋が再スタートした時にはまた力を貸して頂かなければならない業者さんばかりで、また会えると思っていても寂しい。私も含め、出社していたスタッフ皆で、清掃会社様との思い出という事で一言ずつ御礼を申し上げた。その時間がとても多田屋らしく、しんみりしないように努めた。「社長さんにお手紙を書いてきました。」と清掃会社の社長様。なんかとても素敵な時間だった。一旦お別れだけどまた必ずご一緒しましょう!
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多田屋社長 かなり羨ましい
12月9日 ボランティアデー
この日もボランティアデー。私はなかなか参加出来ないが、作業内容よりも、まかないのメニューが気になってしょうがない。保育園から戻ったら、「ねぇ、今日のまかない何だった?写真撮った?」まずは、お疲れ様、ありがとう!でしょうが…。と反省。
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今年はいつもと違う年末の過ごし方。それでも変わらず、たくさんの業者さんが年末の挨拶にいらっしゃる。何も出来ない多田屋だが、忘れないでいてくれるのが本当に嬉しい。復活した際には何倍もの力になって頂かなければならないが、多田屋も何百倍もの御礼が出来ればと思っている。
続く…