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能登半島地震における旅館の記録㉔

社長が本格的に動き出した。
震災後は来客の対応をしたり、多田屋の施設の内部状況の情報を集めたり、統括部長と今後の多田屋について話をしたりしていた。その社長が多田屋としての動きだけではなく、ついに和倉温泉復興の為に大きく動き出した。

聖火ランナーのパパ、カッコよかったよね!

実は社長、東京2020の石川県の聖火ランナーに選ばれた。コロナの影響で実際には沿道を走れなかったけど、聖火ランナーとしてセレモニーに出た。
どうして選ばれたのか…。旅館の社長だからと言われることもあるけれど、これは全くの忖度無し。社長は今後の能登への想いを小論文に書き、応募したのだ。これは家族も多田屋スタッフも知らなかった。選ばれた後に報告がありびっくりした!この時から、社長は聖火の火を絶やさぬよう、石川県、能登にその火を灯し続ける一任者として選ばれたのだと思えてならない。  能登の復興に向けて走り出す。

社長は常々、旅館は地域の魅力を発信する場だと言っていた。各旅館がお客様の滞在を完結させるのではなく、和倉の街全体を活性化させたい。奥能登にどんどん足を運んでほしい。旅館同士だけではなく、もっと商店の人や和倉に住む人達と物事を考えていきたいと言っていた。でも色んなしがらみや、しばりがあった為に残念ながら和倉がまとまって何かをするという構図は見えにくかった。

社長は自分の想いをイラストにしてくれたりするので
スタッフも非常にわかりやすい

でも、今回の震災をチャンスにしなくてはいけない。これで和倉の組織図や街の在り方、旅館としてすべきことを明確にし、変化出来なければもう和倉温泉は変われない。壊れたものをただ直して、お客様に来ていただく事が社長の目的ではない。今後20年30年50年100年先を見た時に多田屋が和倉に存在する意味をきちんと考えていかなければならないのだ。和倉温泉が奥能登の復興の架け橋になればと考えている。インフラが整ったら、和倉温泉はまずは復興支援に携わる人の宿泊施設として再開という事になるのではないかと思う。和倉温泉復興チームが結成され新しく進んで行く時には、社長は間違いなくそのチームのリーダーとなるであろう。

1月29日 構造解析チームが状況を確認する

多田屋は以前と同じ形には戻せない。
建物の耐震強度を上げる、使えない場所も多々ある。自慢の大浴場はどうするのか。今までの多田屋を知っているお客様、多田屋を好きでいてくれるお客様が戻って来て下さった時にがっかりさせてしまうのではないかという不安も正直ある。ソフト面は変えないようにしたいがハード面は変えざるを得ない。奥能登の復興に協力すべき宿として、また戻ってきて下さるお客様にも喜んでいただけるよう、それぞれが共存できる宿にするにはどうすべきか。とてもじゃないが数ヶ月では考えられないと社長は言う。
多田屋2024年 年内の営業再開は出来ない見通し 

震災前の多田屋自慢の大浴場 本当に美しい七尾湾
地震後 大浴場周りを視察する統括部長

2月1日 16:10  能登半島地震から1ヶ月
出社した皆で黙祷をする
多田屋スタッフの出社日数と人数をグッと減らす。

2月8日
 和倉温泉女将の会・理事会開催。2024年の活動は恐らく無し。女将という存在が今後どうなっていくのかも不明。各旅館がどのように再建していくかは女将同士でもわからない。2時間しゃべったが、未来の事はまったく話せなかった。でも、皆さん3月16日・北陸新幹線が敦賀まで延伸されました!福井県に是非お出かけください!石川県の復興は北陸地方全体が盛り上がらないとなかなか進みません。

3月16日に北陸新幹線金沢~敦賀延伸
和倉温泉としても北陸活性化の為に
キャンペーンのお手伝い(昨年11月福井にて)

まだまだ先が見えないが、こうなる運命だったんだという写真を見つけた。見つけた時に思わず声を上げてしまった。そしてスタッフ全員に見て!とZOHOした。社長が聖火リレーをした時に、イベントのお手伝いをしていた○○君にトーチを持たせてあげたのだ。○○君は以前は別のお仕事をしていて、昨年の8月に多田屋ファミリーの一員になった。そう、その○○君がこのnoteにも何度も登場する多田屋統括部長なのである。以前も申したように社長と統括部長は長年の知り合いであり和倉温泉を支え合う仲間であった。それがご縁があり、正式にチーム多田屋の仲間になったのだ。

統括部長は恥ずかしがり屋さんなので
モザイクをかけました
どんな人か想像してくださいね

社長が和倉温泉復興の為にリーダーとしてチームを牽引していけるのも彼がいるから。私はどうしても未来より足元を見てしまう。また現場責任者として意見を言わなければいけない。社長と私は戦友ではあるが、やはり経営責任者の社長は孤独だと思う。その社長の孤独感を統括部長は少しでも埋めてくれる人なのだ。若女将として妻としても彼には心から感謝している。

続く…


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