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大規模災害時における「プッシュ型支援」の限界

※ヘッダー画像は「フォトギャラリー」からお借りしました。

元日の夕刻に能登地方で最大震度7の地震が発生しました。最初に本震災で犠牲となった方々に哀悼の意を表し、また今も不自由な生活を送っておられる被災者の皆様にお見舞い申し上げます。

当日中に岸田首相は記者会見で「現地からの要請を待つことなく必要な物資を送り届ける『プッシュ型支援』を行う」と表明しました。
その後に政府がとった対応など、細かな動きは伝えられていませんが、初動として比較的被災地に近い大都市である関西圏の警察や消防の救助支援部隊が現地入りし、続いて東海地区、関東地方などからも続々と応援の部隊が投入されたと聞いています。これは予め関係機関の間で広域連携協定が結ばれており、それに基づいて各自治体が支援隊を編制したものと推測しております。また、災害の発生が正月休み中であったにもかかわらず、被災地に近い拠点までは様々な物資が届けられていたものと思われます。

しかし、現実のところ倒壊した建物や崩落した土砂に埋もれて救助が間に合わず、命を落とした方も少なからずおられたようです。また避難所では水も食糧も、そしてこの季節に不可欠な寒さを凌ぐ寝具類や防寒着も届かず、多くの人たちが厳しい環境に耐えることを求められたと伝え聞いています。報道からは、現場の諸機関関係者の皆様の懸命の努力にもかかわらず、被災者への支援は思うに任せていないという印象を受けます。

起伏の多い半島の地形ゆえに道路が文字通り寸断され、被災した集落があちこちで孤立する状態となり、災害派遣で出動した自衛隊もまず道路を開くことから始めなくてはならない状態だったようです。海からの支援を試みたものの、港湾施設が大きく損傷して荷揚げが困難となっているところや、海底が隆起して水深が浅くなり船の接岸自体が出来ない場所もあったと伝え聞いています。SNSでは自衛隊のホバークラフトを使用して重機を陸揚げしている映像も見かけました。

発生から10日が経ち、関係者の努力で徐々に状況が改善した部分もありますが、インフラの復旧は遅れており水道の使えない場所が多く、停電も続いています。携帯電話・テレビ放送も基地局や送信所への送電が復旧していない、あるいは設備自体が地震で損壊している、といった影響で停波している地域があるとのことです。ようやく幹線道路が通行可能となった段階ですが、集落間を結ぶ道路は依然として通行不能なところもあるようです。

現地では被災者の支援に当たる役割の自治体職員自身が被災していたり、無事であっても交通路が遮断されて登庁できないという事例も多発しています。2011年の東日本大震災の際も、津波の被害が大きかった自治体などで同様の事態が発生し、大規模災害時には周辺自治体から応援の要員を送り込む体制は整えられていたようですが、道路状況が悪く現地に到達するのも容易ではなかったとのことです。

今回の能登半島のように広い範囲に希薄に人口が分散している地域での大規模災害では、被害の全容を把握するのが一仕事であるという教訓が得られたように思われます。そして発生から72時間が勝負と言われる要救助者の救出も、同様にどこにどれだけの要救助者がいるのかの把握と、必要な救助隊の送り込みや救出された方の搬送をどのように行うのか、といった点に課題が残ったように思います。

今日、11日は自衛隊の大型ヘリを使って高齢者施設の利用者を愛知県に移送する、という救援活動が行われたというニュースが伝えられました。これ以上、災害関連死者を出さないためにも、高齢者や持病のある方などを、一時的にせよ被災地の外に移送する必要があると思われます。
近隣の各県だけでなく東京都なども宿泊施設や公営住宅を利用した被災者の受け入れを表明しています。インフラ復旧に目途が立たない地域が多い、という状況に鑑みると、当面は移動可能な人を被災地外に移動させる策が有効と思われます。

プッシュ型支援といっても、まず現地の状況を把握しなければ、必要な物を必要とする人に届けることは出来ません。また、交通網が寸断されている状況では、救援物資の送り込み自体に多大な困難が伴うことが今回の災害で明らかになりました。一刻を争う要救助者の救出にしても、必要な人員や機材を現場に送り届ける手段を再考する必要がありそうです。
自然災害の「形態」は毎回それぞれ異なっており、1つ1つの災害の教訓を積み上げて、できる限り様々な災害に対応できる支援体制を整えていく必要があると痛感しました。

【注記】本稿はあくまでも筆者が執筆時点で把握している情報に基づき本人の感じるところを記述したものです。根拠とした情報はできる限り信頼できるソースのものを用いたつもりですが、完全に検証したわけではないので誤情報や偏った解釈が含まれている可能性は有ります。また、特定の個人や団体(自治体や政府を含む)を批判する意図はありません。むしろ関係各位の尽力に敬意を表しつつ、多様な自然災害に対する備えの難しさを痛感しているところです。


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