見出し画像

紙にできてWebにできないこと


雑誌の編集をしている身としては、今までにない状況に頭を悩まされることも多い。二次元の紙媒体は、どうしても見せたい部分がある場合、それが1枚の写真では伝えきれないとなると、複数枚の写真で補い、掲載していくことがある。でも、動画ならば、いとも簡単にそれを見せられたりする。

あるとき、編集長から「紙にしかできないことを考えてほしい」と言われたことがある。もう何年か前の話なのだけれど、ずっとずっと頭の片隅にあり、考え続けても容易に答えが出ないものとして、私の中に長らくある。


果たして、本当に紙にしかできないことってあるんだろうか?


紙にできなくて、Webでできることは思いつく。でもその逆は・・・? 多くの意見としては、取っておきたくなる誌面を作ることだとよく言われる。ずっと手元に置いておきたい写真だったり、文章だったり。あとは紙をめくるという行為が好きだという方もいたりするだろう。けれど、本当にそれだけなんだろうか? もっと他に決定打はないのかなと、ふと頭をよぎる。

私の個人的な考えでいえば、頭への内容の入り方が違う。雑誌ではあまりないこと(そこまで真剣に、難しい事柄を読む媒体が少ないから)だけれど、電子書籍をよく読むようになってから気づいたことがある。編集者でも分かれると思うが、私は紙の本が好きだ。めくる感覚、めくった先に何があるのかというワクワク感、続きが読みたいという嬉しい焦燥感、そして何より、本のこのへんに書いてあったなという感覚(例えば1/3くらい読んだところにあのことは書いてあったななど)は電子書籍だと、実感がなく、私には上手く掴めなかったことの1つ。そして、電子書籍だと内容がとにかく頭に残りにくいのだ。これは私の事情なので、もちろん全員が全員ではないのだけれど、読んでいる実感がもてないのは、紙の本に慣れすぎているからだろうか・・・そんなことをモヤモヤと考えていたときに、

とある書籍に、

「手で文字を書く」のと「キーボードで文字を打つ」のとでは、
  使っている脳の部分が違う。

と書かれているのを見て、もしかしたら「読む」という行為も、実際にページをめくるのと、画面上でスワイプするのとでは異なるのだろうか? ともちょっと考えてみたりする。いつか取材して確かめてみたいなと思う。

脇道に逸れてしまったけれど、やっぱり手元に持っていたい、もっとその本を理解したいと思ったときに、紙のほうが重宝されるのではないかと思っている。雑誌でそれが可能かは置いておいても、書籍は間違いなく紙であることが優位になることもあると思っていたら、目から鱗な企画を見つけたのだ。


なんと、書籍の全文公開をするという・・・!!


「会計の地図」というチャーリーさんのnote。
https://note.com/tck/n/na0f87af89407

言わずもがな、会計、お金の話なのだけれど、書籍の発売日前から徐々に全文を掲載していくと発表。編集者としては「なぬ???」となるわけで、最初は「えぇそんなことをして本が売れなくなったらどうするの?」と思った。でも、ちょっと待てよ、と(笑)。もしかしたら、紙にしかできないことの究極ってここなんじゃないかってふと思い直した。

ページ数の多い書籍を分割とはいえ、画面上で読み切るにはなかなかの労力がいるはず。興味を持った人はもちろん最後まで読んでいくだろう。けれど、ページの操作性や画面上での読みにくさを感じたら、おそらく紙の本を買うだろう。また、徐々に公開されるのが待ちきれなくて本体を買う人もいるだろう。この場合は電子書籍を手にとる人もいるだろうけれど。きっと版元も紙だからどうのではなく、本を売るためのプロモーションとしてお考えなのは重々承知しているものの、紙への希望を感じたのも事実。

なんとなく、あぁ、目から鱗だったけれど、こういう秘策もあるのだなぁと考えさせれた企画。もっと頭を柔軟に、視野を広げていったら、思いつくことはありそうだなぁと思った次第。日能研さんではないけれど、「シカクいアタマをマルくする」ことって、本当に大事だな・・・


まだまだきっとできることはあるけれど、そこに執着しすぎることなく、紙とWebと上手く補完し合いながらできることを考えていけたらいいなと思う。大好きな編集の仕事が斜陽産業だと言われているだけでは悔しいから(笑)!


ちなみに、つねにお金に対してどんぶり勘定な私はnoteで読みつつも、やっぱり紙の本を買いました(笑)。ここまでの入門書はなかった!というのが率直な感想。数字が苦手でも、お金の仕組みを毛嫌いしていても、初めてちゃんと理解できた気がします。小3息子にも読ませたい!





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?