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米国最古の公立病院 Bellevue Hospital Center~無保険者が病院を受診する時~

米国で最初に建てられた公立病院がどこにあるか知っていますか?
「ニューヨーク」
です。

マンハッタンのミッドタウンイーストのイーストリバーを見下ろせる場所にその病院は建っています。
その創立は1736年3月31日です。米国で初めて帝王切開の手術をしたり、初めて救急車を使用したりと初めて尽くしです。
当時の救急車の複製が、現在の病院ロビーに展示されています。

この病院は、米国内で巨大な病院の一つで
医師:約1200名
医師以外のスタッフ:約5500名
年間稼働ベッド:844床
年間外来患者:72万2千名
年間ER使用者:97,679名
病院内には
カトリック教会
プロテスタント教会
モスク
シナゴーグ
等の宗教施設があり、神父、牧師、イスラム教やユダヤ教、そして仏教のスピリチュアルカウンセラーが入院患者の病室を訪れている。

入院時に自分の宗教を聞かれるので、それを見てそれぞれの宗教の人が訪れるようになっている。
私が入院した時も聞かれたのだけど「今は特に信心はしていない」と答えたのに、仏教のスピリチュアルカウンセラーが日本語が話せるからと私の病室に来てお喋りしたことがある。

そして「院内法廷」といわれる裁判所と受刑者を治療する「刑務病棟」がある。刑務病棟はワンフロアを全て使っていて、NYPDが管理している。医師を始めとする医療スタッフもボディーチェックを受けてそこに行く。
直通のエレベーターがあって、私達が間違ってもそこに行くことは無い場所です。

医師の殆どが隣のNYU Langone Health所属です。ニューヨーク大学病院と携帯していて、ニューヨーク大学医学部の教育病院になっています。

この公立病院の名称は
「Bellevue Hospital Center]

NY市の公立病院グループ「NYC HEALTH+HOSPITAL」の系列病院で、同系列の中では一番高度な治療を
「人種やステイタス、保険の有無に関わらず、全ての人に必要としている治療を適切に施す」
「セイフティーネット病院」
として有名です。

「ニューアムステルダム~医師達のカルテ」というアメリカの医療ドラマを知っていますか?日本でもアマゾンプライム等で視聴可能です。
このドラマは病院名こそ架空の物に変えていますが。Bellevueの話です。病院ロケもBellevueが使われています。
そしてドラマは全くの架空の話ではなく、実際にBellevueでメディカルディレクターとして院内の医療改革に従事した医師の手記をドラマ化したものです。
ドラマでは「不法移民」「無保険」等の問題が多く出てくるけれど、これは実際にもそうで、上記した病院理念とセーフティーネット病院の所以です。


よく「アメリカでは保険が無いと病院に行けない」「高額医療費を払えないから重い病気になったら死ぬだけ」等言われているけれど、それは「事実であって事実ではない」です。
ここ米国には、合法移民の外国人や米国人であっても保険を持っていない人がたくさんいる。キチンと仕事をして生活をしているけれど、保険に入る余裕がない人達がいる。
ましてや、きちんとした書類を持たない不法移民と呼ばれている人達は、たとえ支払い能力があったとしても保険に加入することは出来ない。
各病院には支払い能力のない人向けのプログラムが用意されている。分割払いや、値引き交渉などソーシャルワーカーが助けてくれる。

それでも、治療費を踏み倒して逃げてしまう人達が多いのも事実。
米国内病院のER(救命救急センター)は、患者を拒否する選択は出来ない。屋根のある場所とベッドで寝たいホームレスも泊まりに来る。
そして、日本と違って支払いは後日郵送で請求書が届くシステムだから、治療を終えたらそのまま帰宅できる。
重大な病気で継続的な治療が必要だったとしても、ERで今の不調を取り除いてもらい、薬を貰ってそのまま逃げてしまう。その後患者はどうなってしまうか。。。病院に行くだけ良いのだけど。

ここからは、ニューヨーク州及びニューヨーク市の話です。他の市、他の州の事は知りません。(他州や他の市にも独自のプログラムはあると思います。)
具合が悪くなるのって突然です。急に具合が悪くなった、身体の部位が激痛。。となった時は、保険が無くてもステイタスが無くても病院に行くことを躊躇しないでください。
速やかに「公立病院(NYC HEALTH+HOSPITALグループ)のER(救命救急センター)」に行ってください。

何故公立病院かというと、私立の病院にも支払いの救済措置はあるけれど、NYC HEALTH+HOSPITALグループでしか使えないニューヨーク市のプログラムがあるからです。
NYC HEALTH+HOSPITALグループは、小さいクリニックから大病院まで市内に多くありますが、ERのある病院でERに行ってください。(理由は上記しましたが、ERは患者を断ることをしません)
なかでもBellevueは「セイフティーネット病院」なので、プログラムも豊富でソーシャルワーカーの人数も多いです。

そのプログラムは

「NYC CARE」

参加資格は

*ニューヨーク市の5つの行政区(マンハッタン、クイーンズ、ブルックリン、ザ・ブロンクス、スタテン島)居住者
*ニューヨーク州で利用可能な健康保険プランの資格を満たしていないこと*政府のガイドラインに基づいて健康保険に加入できない
上記3点を満たしていれば、滞在資格の有無は関係なく(不法滞在者でも)加入できます。

参加すれば医師の診察費、薬代、検査代、入院費、手術費等の医療費が全て収入と家族の人数によって決まります。収入が無い人や、限りなく低い人はスケールによって無料になったりします。
申請方法は下記ウェブサイトに書いてあります。英語が得意じゃない場合は、ウェブサイトの言語を日本語に変えると日本語で読めます。
繰り返しになりますが、このプログラムはニューヨーク市の公立病院「NYC HEALTH+HOSPITALグループ」のみで使うことが出来ます。

自分でウェブサイトからアプライしても良いし、保険が無い状態でERで診察を受けると、ソーシャルワーカーが加入手続きをしてくれます。患者は後日必要書類をソーシャルワーカーに提出するだけで済みます。

もちろんこのプログラムで賄えない治療もあります。高度な治療や難しいとされている手術などがそれに当たります。
そんな時もソーシャルワーカーが動きます。
これから話す3つの救済措置は、ニューヨーク州の公立、私立病院で使えるものです。

①ニューヨーク州メディケイド
65歳以下の米国市民及び税金を納めている外国人永住権保持者で、低収入や無収入で医療保険を利用できない人。資産が限られた状況(持ち家がある人は加入資格がない)で、満たさなければならない条件をクリアした人が加入出来ます。100%の医療費を保障する、政府による医療扶助事業です。

②エッセンシャルプラン
メディケイドとの違いは「合法なビザ所有者であれば永住権がなくても加入できる」ということ。そして「他保険と併用できる」ということ。こちらも100%医療費を負担してもらえます。

③エマージェンシーメディケイド
こちらは無保険者が「緊急」に高度な治療を受けなければいけないときに加入出来ます。①②との違いは、「移民ステータスに関係なく(不法滞在でも)加入して高度な治療が受けられます。但し1年間だけです。

全部で4つの救済措置を説明しました。普通に生活してたら知らないことかもしれませんが、保険が無くてもこれらのプログラムを使えば医療費を心配しなくても治療を受けることが出来るのです。
病院によっては、これらのプログラムを率先して勧めてくれないところもあると思いますが、ベルビューは「セイフティーネット病院」故に、ソーシャルワーカー、ファイナンシャルカウンセラーやペイシャントアシスタント達が率先して勧めてくれ、手続きも手伝ってくれるのです。

だから無保険でも怖がらずに病院に行ってください。
ただ、全てのプログラムは、アプライ時に収入証明書等の書類を提出して審査されるので、保険に入れる収入がある人がアプライしても直ぐバレます。

次回は、高額な薬代が無料になるプログラムについて書いてみます。

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