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歌集『母となる』 第九章「母となる」~『生殖の海』2024年版~


歌集『母となる』 第九章「母となる」

抱き上げてやろうとして、飛鳥は両手を腹の下に差し入れた。
ぎくりとして手を引っ込めた。猫はかすれた声で、にあ、あ、と鳴いた。


腹まろき猫をいだきて泣けるひとよ春はきらいと言はぬものから

子の話をするあなたの横顔をどんな気持ちで見てゐたつけな

若草はもう、そよそよと知りてよりほのかにふるふ野ゝうすみどり

我が胎を痛めで母となることを思ふ夜明けの風しづかなり

夢を見て覚むれば淡き峰の雲のわかれて消ゆる曙の空

生さぬ子の母とやといふやすらひにあなたの右手めては肩をかない

母となること思ひ寝の覚め初めてそよやわたしのたまぼこの道

空のいろをめむとぞ思ふひとの子に母と呼ばせて生きるさいはひ

あの猫は産んだゞらうか草の原ひばり鳴きなく春の夕暮れ

花の香の風にまかするかよひ路に母とはならぬ日を重ねたり


梶間和歌歌集『母となる』 ~『生殖の海』2024年版~

梶間和歌歌集『母となる』

序章 にほふマルボロ
第一章 松の緑
第二章 まよふうたゝね
第三章 レモンのマドレーヌ
第四章 明けぬ夜の闇
第五章 海の辺の女
第六章 及ばぬ高きすがた
第七章 露のあけぼの
第八章 草枕
第九章 母となる
第十章 水鳥のつばさ
終章 夢の浮橋

出典

2024年版にはあとがきを用意しておりません。
2020年版のあとがきを無料公開しておりますので、そちらをご覧ください。


過去の『生殖の海』

2020年版『生殖の海』


2021年版『生殖の海』


2022年版『生殖の海』


2023年版『生殖の海』


紙媒体の『生殖の海』2020年版


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特にこのたび令和5年の隠岐後鳥羽院大賞和歌部門で古事記編纂一三〇〇年記念大賞を受賞し、表彰式を含む大会のツアーに申し込み、ツアー代金(9万円弱)は生活費と別に工面することになりました。
ツアーには無事参りましたが、その後の生活もございます。お気持ちとお財布事情の許します方に、ぜひともご支援を頂けましたら幸いです。

ツアーの様子はこちらのマガジンで連載して参ります。どうぞお楽しみに。


今後とも、それぞれの領分において世界を美しくしてゆく営みを、楽しんで参りましょう。


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