若井のフィクション日記 No.1「ホテルの決め手」
皆さんはホテルを決める時に何を重視して決めるだろうか。
接客の良さだろうか、最寄り駅の近さだろうか、はたまたエレベーターの台数だったりするだろうか。
いろいろあると思うが、私は睡眠環境の良さと朝ごはんに生たまごがあるかどうかで決めている。
出張でホテルに泊まった時の話だ。
昔よく利用していたホテルに数年ぶりに泊まることになった。
以前は立体駐車場があったはずだが、今ではなくなり平面駐車場だけになっていた。
どうやらタイムズカーシェアリングに場所を提供することになったようだ。
宿泊客からの売り上げだけでは経営が厳しくなってきたのだろうか。
睡眠環境でホテルを選んでいることもあり、非常によく眠れた。
カーテンが窓にぴったり貼り付いているタイプで、とても遮光性が良いので部屋が真っ暗になる。
枕も何種類からか選べるので自分に合ったものを使えるのだ。
次の日の朝はホテルで朝食を取った。
ホテルの朝食では必ずたまごかけご飯にすると決めている。
しかしここで問題が起きた。
生卵が見当たらないのだ。
ホテルマンへ話を聞いてみると数年前から置くのをやめたらしい。
保健所から指導が入ったんだとか。
非常に残念だが、おとなしく納豆ご飯を食べることにした。
ホテルの決め手が欠けてしまった時、皆さんならどうするだろうか。
私は初回であれば新しいホテルを探すだろう。
ただ今回はそれなりの回数通ったホテルだ。
数年前までにのべ50泊以上はしただろう。
新しいホテルを探すべきかどうか悩みながら一日を過ごした。
特に答えも出ないまま、仕事を終えホテルへ戻った。
フロントへ預けた鍵を取りに行った。
「若井さんお久しぶりです。3年ぶりですね。」
声をかけてきたのは50代前半くらいのホテルマンであった。
私も彼の顔をすぐに思い出した。
3年前まではよくフロントで声をかけてもらって、立ち話もしていた。
チェックインした時にはいなかったが、まだご健在だったようだ。
ホテルマンとしての気配りの一つなのかもしれないが、私は単純に少し嬉しかった。
少し立ち話をして部屋に戻った。
時間にしてたかだか5分と言うところだろう。
ただこの5分は私にまたこのホテルに来ようと思わせるには十分であった。
また訪れることがあれば生たまごは置いてないけど、このホテルにしよう。
そう決めて出張を終え、帰路に着いた。
若井俊頼
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