月によせて
10月20日(金)緑園図書館1階ラーニングコモンズにて「黒川ゼミ(音楽学部)×図書館 プロムナードコンサート」第3回「月によせて」が開催されました。
学生のみなさんは、演奏の前に、月にゆかりの和歌や物語を紹介してくれました。
思ひ出でば同じ空とは月を見よほどは雲井にめぐりあふまで(新古今和歌集・離別・877・後三条院)
後三条院が東宮だった頃、東宮学士だった藤原実政が甲斐守として赴任する際に贈った歌です。「忘るなよほどは雲井になりぬとも空行く月のめぐりあふまで」(拾遺・橘直幹、伊勢物語11段)に似すぎている感もありますが、いい歌です。
後三条院といえば、院政の端緒を作った天皇として有名です。「『雲井』にはそれ(「忘るなよ」の歌)よりも複雑な意味(はっきりいえば、東宮時代の後三条院自身の帝位への翹望)が籠められていて」(久保田淳『新古今和歌集全注釈』)、後三条院と実政との強い絆、今はまだ皇太子だが、次は「雲井(宮中)」で帝として会おうという誓いの歌とも取れる歌です。不安定だった東宮位、藤原賴通との対立、院政への道を考えると、後三条院の肉声が聞こえてくるような、そんな一首です。
昨日は、「朧月夜」の演奏もあり、その際には『源氏物語』の引用もありました。源通親に『源氏物語』朧月夜をふまえた、おもしろい歌があるので、いずれ紹介してみたいと思います。 音楽と文学の融合は、フェリスらしい試みです。次回のプロムナードコンサートのテーマは「クリスマス」、楽しみです♪