日本人が知らない日本人No.11
アルゼンチンで頑張る日本人、玉井光さん。
養蜂家として奮闘する玉井光さん。
光さんが海を渡って35年。
光さんが暮らすウインカレナンコという町は首都・ブエノスアイレスから車で10時間もかかる場所にある。
まだ上下水道も整っていない人口1万人ほどの小さな町に住む日本人は、光さんだけだそう。
12月の南米は夏真っ盛りで、養蜂の最盛期でもある。
アルゼンチンの各地で養蜂に適した土地を見つけては、地主と契約して巣箱を置かせてもらうのだといい、遠い所では片道3時間かかることも。
ある日やってきたのは、畑の脇に茂る原生林。中に置いておいた70個の巣箱から、蜂が巣を作った蜜枠を回収していく。
しかも作業中は常に蜜蜂の攻撃を受ける危険な重労働だが、アルゼンチンでは蜂蜜をとるのは夏の3カ月間だけ。
後はのんびりと1年を過ごすのだという。
農業が好きだった光さんは、東京農業大学に進学。
在学中に南米研修に参加したことが大きな転機となった。「誰かが勝って、誰かが負ける。誰かが得して、誰かが損する。そういう生き方だけは私には無理だと思っていた」。
そう感じていた光さんは、現地で知ったアルゼンチンの養蜂家の生活に憧れを抱く。そして卒業後、一度は就職するも思いを捨てきれず日本を飛び出したのだった。
養蜂は自然と天候に大きく左右されるため、回収した巣箱に蜂蜜が全く入っていないことも。
ただそれは自分の努力が足りなかったわけでもなく、自然のひとつだからしょうがないと受け止める。
重労働の後の1日の癒しは、5年前に再婚した妻のカロリーナさんと食べる夕食。余暇も近くに住む娘や孫らに囲まれながら、のんびりと楽しい時間を過ごす。