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地方演劇を真面目に考える会 その5 【劇団の形態編 後編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

活動年数

今回は前回の続きで、非大都市圏の劇団の活動実態のアンケートを見て行きます。まずは、活動年数からです。

 10年以上の劇団が大多数を占めているのにはかなり驚きました。しかも4分の1が20年超えです。任意団体が多く、仲間内でやることの多い劇団では、なかなか長期の継続が難しいと思います。実際、1回・2回の公演で活動が自然消滅する団体がかなり多いと思います。しかし、これを見ると、一度それを乗り越えてしまうと、かなり長期に継続する劇団になる所が多いのかもしれません。
 イヤな言い方をすれば、競争相手が少ないので、独り勝ち状態になりやすいのかもしれません。
 ただ、悲しいことに、これを書いている現在(2023年3月)、このアンケート後に、コロナの影響からか、かなりの劇団が活動を休止したという情報が入ってきました。その中には20年以上の老舗の劇団もかなりの数が含まれていました。次回で、コロナの影響について述べますが、とても悲しい事です。

 少し、気になったので、ここで別のデータを出してみました。

やはり、劇団員の数は、平均で出すと、長い年月の方が多い傾向にあるようです。劇団の維持には人数が多い方が有利だからでしょうか。ですが、20年未満で、20人以上いる団体も3件もあるのが驚きでした。
劇団の形態については、若干ですが、年数が少ないと、ユニット・プロデュース形式が増えている感じです。やはり劇団の方が継続しやすいのでしょう。ユニット・プロデュース形式ですと、個人の活動という感じがするので、その人が辞めてしまうと休止してしまう可能性が高くなりますが、劇団はヒトが入れ替わっても団体は継続しやすいという特徴がこのデータにでているのかなと思いました。

活動頻度

二つ目は公演活動の頻度です。演劇団体の活動は公演だけではありませんが、やはり中心的な活動の一つであるのは間違いないでしょう。

数年に一度が一件だけで、他はほぼ均等な感じです。やはり一年に一度は公演を行わないと、団体として活動をしていない感じがします。大体演劇の公演は、企画から公演までが、大体3か月~半年、長い所だと一年ぐらい。稽古開始から、3か月~半年といったところが多いと思います。それを考えると、3か月というのはかなりのハイペース。公演が終わってすぐに次の稽古が始まる感じではないではないでしょうか。次の章の演劇との関わり方にも関係あるのですが、役者を専業としない人が多い、非大都会圏の演劇団体としては、思いのほか、ハイペースの劇団が多いのだなと思いました。

これも、他の年数や、形態との関連性のデータをとってみました。

やはり活動ペースは、若い劇団の方が3カ月に一度ペースが高く、逆に、活動年数が高くなると、ペースは落ちるようです。若いと元気ですね。
団員数は、20人以上は年一ペースが多く。比較的少ない方が活動ペースが高くなるようです。人数が少ない方が、軽く動きやすいという事でしょうか。
団体形態に関しては、会社・NPOは早いペース。活動し続けないと運営できないのでしょう。ほかは、あまり関係がないようです。

演劇との関わり方

劇団に関わる人にも様々な思いや、環境があります。演劇との関わり方を聞いてみました

その他は一番上のリンクのアンケート結果からご覧になれます。

大都市圏との大きな違いはここの部分かなと思うのですが、やはり仕事をしながら、演劇活動をしたいという団体が一番多くありました。また、二番目のプロを目指す人と趣味でやりたい人との混在しているというのも、地域の劇団の在り方としての一つの姿かなと思います。やはり非大都市圏では演劇で生計を立てるのは厳しく、演劇以外もする舞台スタッフになる以外はかなり難しい。しかし、進学でもなく、演劇をやるためだけに、いきなり演劇をするために大都会に行くのはハードルが高い。その中間点の受け皿として、地域の劇団が受け皿になっているという実態もあるのだと思います。

劇団の形態に対しての個人的見解

今回は、劇団の年数や、関わり方についてみてきたのですが、自分が感じている実感よりも、思いのほか、活発に活動する演劇団体が多いのだなと思いました。自団体の話で申し訳ないのですが、年数が若いころは、3か月ペースでやっていたのですが、徐々に活動頻度は落ちてきました。やはり仕事をしながらなので、稽古回数・時間の確保が難しく、その中で、満足のいく公演を行う為に、稽古期間が長くなっていき、気づけば稽古期間が半年を超えてくるようになり、活動ペースが落ちるという事になりました。逆に、劇団員が多くいれば、なれた人達で効率的に劇団運営を行えるので、公演ペースを上げて行けるのかもしれません。
 ですが、次回の話にもなるのですが、このアンケート後、かなり長期でコロナの影響にさらされてしまい、現在の劇団の活動状況は、かなり厳しい状況に陥ってると思います。ねがわくば、これからコロナの影響を抜け出し、新しい、劇団の活動にいい方向にむかえればと思います。

つづきます。
その6はコチラ

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきはかりごと)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita


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