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地方演劇を真面目に考える会 番外編11 【演劇環境を良くしたい!! 周辺環境との関係性を考える!編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

周辺環境と向き合う!

非大都市圏では、大都会よりも周辺環境の影響を受ける場合が多くあるようです。多くの場合は、生活圏と同じ環境でもあるため、影響を受けるのは当然として、演劇作品を作る時にもその影響をどれほど受けているのか? そして周辺環境を考えるという事が観客の生活圏も考える事と近い意味合いになってきます。大都市圏では、まったくないとはいいませんが、非大都市圏の持つ演劇の特性の一つかなと思います。
 ただ、かなり難しい事でもありますし、自分が上手くできていない一番の部分ですので、間違っている可能性も大!です。すいません。あくまで思考実験だと思ってお付き合いください。

周辺環境の要素

周辺環境といっても、人や、歴史や文化背景、地理的条件などかなり多岐にわたり、場所によってそれぞれで細かい部分をいいだしたら切りがないですが、非大都市圏で共通しそうな要素を考えていきたいと思います。大雑把に「ヒト」「地理」「歴史」「経済・文化」「権力構造」の面から考えて行こうと思います。

◎人的要素

・観客
色々なところで出てくる要素ですが、周辺環境の面からも観客の要素は重要です。人数はすでに色々書いているので、それ以外の面、どういった嗜好をしているか? 演劇への興味はどれぐらいか? など、地域によってさまざまだと思います。どういった観客層をターゲットにするのかは劇団の方針によりますが、地域の観客層を考えるのは、とても重要な事ですし、どこの劇団も考えていることだと思います。
・プロデューサーの存在
どう表現していいのか思いつかなかったので、仮にプロデューサーと書きましたが、いわゆるアートマネージャー的な感じの人がいるといないとでは、まったく周辺環境との付き合い方が変わってくると思います。劇団は演劇を作るという目的をもった団体ですが、演劇作品をどういう風に地域社会に役立てていくのか?はまた違った領域の問題です。作品の持つ財産性や利用価値を、いろんなところにつなげて行ったり、広げて行ったりすることができれば、演劇のやりやすさも大きく変化していくと思います。

他にも劇団数や、演劇コミュニティーの大小などあるとおもいますが、演劇関連はさんざん書き連ねたので、外しています。
ヒト関連の環境因子が多すぎて、何を書けばいいのか分からないので、大雑把に二つだけ書きました。

◎地理的要素

・交通要素
大雑把に交通要素と書きましたが、都市構造として交通系の要素は非常に重要になってきます。やはり駅などを中心に都市は発展していきますし、それだけではなく、その都市の中心に人が集まるような計画が出来ているのか?で都市の構造が大きく変化します。
それは演劇でも関係ないわけではなく、劇場は多くの場合人が集まりやすい場所にあることが多いので、交通網がどういう状況なのか?は、遠い要因かもしれませんが関係してくるとおもいます。
また、それ以外にも、他地域との距離や、大都市圏との距離も、文化的状況に大きく影響を及ぼします。特に大都市圏との距離感は、近すぎるとベッドタウン化で、いわゆるドーナツ化現象により、地域の文化が作りにくく、それ以上離れると別の文化を形成することになります。しかし、他地域との距離が離れすぎていると、若年層の人口流出が起きて、新しい文化が生まれにくかったりと交通網と、距離感は周辺環境に強い影響があります。
・人口構造
非大都市圏のほとんどが、若年層の流出という問題を抱えていると思います。進学・就職で二十代前半の若者が地域を離れてしまう、地域が受け入れられないという都市構造をしているからです。
その為、新しい劇団ができにくい、役者が増えないという問題が起きています。そして、高齢化社会が進んでいます。日本社会の問題ではありますが、演劇も、この影響を受けて、どんどんと衰退していく地域も多いように感じます。
劇団としては、演劇に興味を持つ10代・20代の若者を育てても、出て行ってしまい、劇団の発展に直結しないという問題に向き合わないといけません。いかに20代以上の観客層にアピールするのか? 中年・老年の演劇に興味を持った層を取り込んでいくのか?が、これから大きく問われていくと思います。そして、今、演劇の第二・第三世代が、年齢的に引退していき、30~40年続いた劇団が解散していくという話もよく聞くようになりました。
別に、演劇はやらなくてもいいものですし、無理に頑張らなくてもいいとは思うのですが、地域の演劇史的に、断裂が起きるのはあまり好ましい状況ではないと個人的には考えます。そしてそれは、まったく是正されないまま続いています。
演劇文化に限った話ではないですが、文化=「大都会から買うもの」という概念が、根強くある限りこの状況はよくならないと思います。そして、これは地域文化とはいえないです。文化財産は、育てなければならないと思います。

◎歴史的要素

・地域史
地域の歴史は、地域のアイデンティティーに深く影響を与えています。それは、観客においても同じですし、そこで活動する劇団も同じく影響を受けることになります。また、地域での活動だけではなく、他地域での公演活動においても、独自性という観点からすると、強い優位性を持つことができるものです。
ただ、そこにこだわりすぎても、地域の歴史は、そこに暮らす人ならば知っているという事でもあるという事なので、同地域圏での作品を作るうえで、注意なければならない諸刃の剣でもあると思います。
・地域の演劇史
劇団の成り立ちにもよりますが、地域独自の演劇は、その地域の観客であったり、演劇環境に強く影響があります。ただ、非大都市圏の演劇文化は、大都市圏の影響をかなり強く受けて、分断がたびたび起きがちなので、忘れ去られやすいという事も言えます。

◎経済的・文化的要素

下記の文化規模に一番影響を与える大元の要因として経済的規模の大きさがかなり影響が強くでます。経済規模が大きいという事は人口規模も大きいでしょうし、税収も大きく、その分、文化に回すお金も大きくなります。
・演劇の文化規模
全体的な文化状況もありますが、その中で演劇が占める文化状況も細かく考える必要があります。大きくは義務教育に取り込まれている文化芸術が強かったり、地域の伝統的な文化が強かったりすることが多いように感じます。

◎権力構造的要素

非大都市圏に限らないですが、演劇コミュニティーが小さい地域では、それ以外の権力構造と付き合う場面が増えてくると思います。演劇をやっている人の間だと、どういう思惑かが分かりやすいのですが、それ以外だと、わかりづらくなってしまい、めんどさいと感じる気がします。
・政治面
地域の文化状況は政治・行政の影響を強く受けやすいです。単純に行政が、文化に力を入れている所、演劇に力を入れている所で大きく変わります。例えば、スポーツに力を入れている所と、文化面に力を入れている所とハッキリわかれている場合もありますし、さほど差がない所もあると思います。また、権力的に影響力が強い人、たとえば議員が後援についているか?で、文化活動の規模が大きく変わるようです。ただ、演劇を楽しむだけであればそこまで考慮する必要はないかと思いますが、演劇環境を良くするための要素としては、かなり強く意識する必要がある部分でもあると思います。

周辺環境とどう付き合っていけばいいのか?

・地域社会を意識するのか?

まず、地域社会をどこまで意識するのか?が関係すると思います。地域の劇団だからと言って、地域の為に演劇をする必要はないからです。地域社会・地域文化の中に演劇があると考えるのも、演劇をするのに、ただそこが地域だったというのも、どちらでもいいと思います。そしてそこに優劣はありませんし、演劇はどんな人がどうやっても自由だからです。

・都市構造を意識するのか?

周辺環境には、都市構造がかなり関係しています。いわゆる都市計画なんかがその一つなんですが、交通網や、人口構造など、どういう風に人が生活しているのか? どういう開発計画があるのか?は、演劇に限らず、住民の生活に直結します。そして、それらを踏まえて、演劇活動をするのか? それを意識せずに演劇活動するのか?は大きく活動方針も変わってくると思います。

・権力構造を意識するのか?

非大都市圏に限らない話ですが、活動の規模を広げていくと、どこかで組織や行政などの権力構造と遭遇してきます。そこから離れるのも一つの方針ですし、そことうまく付き合っていくというのも周辺環境との付き合い方です。
そういった組織や権力者との関係性は、煩雑なのも間違いなく、理不尽なものも多いです。そういうのが苦手な人は、演劇作品を制作することにおいては、関係のない話なので、離れてもいいと思います。
逆に、周辺地域との関りを重要視するのであれば、そういった関係性を上手く繋げていくことで、よりよい環境を手に入れることができると思います。

まとめ

書いていて、権力構造との話であったりと、自分がかなり苦手な分野の話になってきたので、書いていて、とてもじゃないですが、上手く出来てないなと感じます。これを書く立場ではないなと思うのですが、それだけこういった話題が苦手な人も多いのではないでしょうか。確かに、演劇を続けていく、劇団を形成する、周辺地域と付き合っていくという時に、避けられない話題だとは思いますが、それに思い悩むぐらいなら、別に気にしなくてもいいと思います。演劇は誰がやってもいいのですし、そういう事が苦手な人こそ、演劇に安らぎを感じることもあると思います。
こういった周辺環境と上手く付き合える人は、演劇に限らず、社会的に上手に生きていける人だと思います。うらやましいなと思いますが、「ヒトとのつながりを大事する」という、大正解で話を終えたくないなと自分は考えています。

つづきます。
番外編 その12はコチラ

特別編 その7はコチラ

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきぼう)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita


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