【中編戯曲】FILE-O-Fish Humberger
FILE-O-Fish Humberger
●時と場所
夏と秋の狭間・ある街のあるアトリエ倉庫の前
● 登場人物
佐田 松本の弟子。
和子 松本の弟子。
南 松本のファン。
早喜 野菜画家。
佳枝 近所のおばさん。
警官 この町のお巡りさん。
松本 奇人アーティスト。
溶明。
ドアがある。固く閉ざされたドア。
松本が、水を飲んでいる。
遠く、ドアを眺めている。泣いているのか? 笑っているのか? くくくと方を揺らす。
ドアを、ドアの温度を確かめるようにゆっくりと頬をよせた。
そしてゆっくりと暗転。
ドアが逆を向いている。
その前に、テーブルと椅子が二脚、置かれている。
そのテーブルは、ここの住人達に似て、どこかいびつだ。
微妙な距離をとって並んで座っている、佐田と和子。ぼうっと前を眺めている。
テーブルの下に空のペットボトルが転がっている。
和子はアイスキャンディーの無くなった棒を舐めている。
佐田がタバコを取り出し、吸おうとして、和子にキッと睨まれる。
佐田、そぶりで、駄目?と聞く。
和子は首を振る。
佐田、しぶしぶタバコをポケットに入れる。と、ポケットに何かあるのに気づく。
佐田、ポケットから、棒付きキャンディーを取り出す。
和子がそれを見ている。
佐田、それに気づいて、キャンディーを和子に差し出す。
和子がふっと笑う。
佐田、キャンディーを渡そうとして、椅子ごとずり寄ろうとする。
和子、キャンディーを受け取りながら、佐田の目を見て、
和子 距離。
佐田 うん。
佐田、距離を意識して、再び元に戻る。
佐田 うん。距離だと思うんだ。
和子 うん。距離。
佐田 うん。距離なんだ。
佐田 どっかん。
和子 どん。
佐田 で、オレは食べた。
和子 フィレオフィッシュ。
佐田 うん。フィレオフィッシュを食べた。だって、食べるために買ってきたからな。
和子 もう、聞いたって~。
佐田 目の前で、人が死にかけてるのに。食べた。
和子 いいよ。もう。(もう聞いていない)
佐田 距離だよ。距離。ドンと、どっか~んは。
和子 どっか~ん……どん。
佐田 落ちてきた。人が、屋上から。ドン。オレは救急車を呼んだよ。すっげえ驚いた。で、もうやることなくてさ。オレの部屋から見えんだよ。野次馬、救急隊。あ~、この人は死ぬのかもな。人生の山場だな。クライマックスか? いや、もしかしたらエンディング? そんでさ、目の前には食べるために買って来たフィレオフィッシュ。だから食べたんだろ。な? アパートの屋上から飛び降りた人を前に。それさあ、☆どっか~んをテレビで見ながら食卓で食べるのと同じってさ。キョリ。距離なんだ!
警官が下手より、やってくる。
和子 あ。こんちわ~。
警官 あ、こんにちわ~。キョリ?
佐田 あ。
警官 へへへへ。
佐田 ハハ……。どうも。
警官 ヘヘヘ。キョリ?
佐田 ええっ。はい。
和子 まあた、あの話しなんですよ~。
警官 ああ~。フィレオフィッシュ。
佐田 あ、はい。
警官 はいはいはい。距離!
佐田 ええ……。
警官 へへへ。ドッカ~ン!
和子 どん。
警官 キョリ。
佐田 はい。キョリなんだ~!
警官 へへへへ。
佐田 ハハハ。
警官 へへへ……(あたりの様子をうかがっている)
佐田 あの、何か?
警官 あ、いや~。え? 逆に? 何か?って。
和子 え?
警官 何かありましたかぁっ? って。
佐田 あ、何もないですよ。
警官 だよねえ。へへへへ
佐田 何かあったんですか?
警官 おお~。そちらは何もない。で、逆に? こちらに何かあったのかと聞かれている。
佐田 ええ~。はい。
警官 え~っと。……何もないですよ~う。
佐田 ない?
警官 ですよねえ?って。
和子 ああ~。
警官 ある? あるって?
和子 い~え。
警官 ああ~。
和子 ん??
警官 ああ、えっと。これはこれは違和感ですよね。
佐田 違和感?
警官 こう、ああ、へへへ。あ、静かすぎる? って。そしてこう。(変なポーズ)コトバで現せないものを現してみるってのが大事でしたよね?
佐田 ああ~。はい。
和子 暑い……
警官 ああ~。そうそう。暑さも入れないとね。こう?(ポーズがより素敵に、しかし目はあたりの様子をうかがっている)
佐田 あの?
警官 はいはい。
佐田 すごく目が警察って感じです。
警官 ああ~。え? (普通に戻り)やっぱり難しいなあ。やっぱりボクがその警察ってところが駄目なんでしょか?
佐田 え~っと。いや、なかなか素敵です。
警官 ああ。うん。うんうん。あの。
佐田 はい!
警官 あ、いやいや。えっと、二人は引っ越さないんですか?っていう。その世間話でした。
佐田 ああ。
和子 しろよっっていう意味合いは含まれる?
警官 あ、いえいえ。そこらへんはいえいえ。
和子 答えるべきであるっていう意味合いは。
警官 ああ~。なんだろっていう。ああ~。答えを期待っていうのは、ちょびっとありましたが。そこはごめんなさい。
佐田 暑いですから。
警官 そう。そうです。暑いです。だからですよね。
和子 何が?
警官 へへへへへ。ねえ?
佐田 え?
警官 ああ~。うわ~。携帯ならないかなあ。事件起きろよと。
佐田 え?
警官 今、結構ボク的には事件です。事件だ~。
和子 じゃあ、現場へ急行したら?
警官 ああ~。そうします。現場、どこかなって言うところ、ですよね?
和子 あっちの方じゃない?
警官 ああ~。そうなんだ~。じゃ、ちょっと行ってきます。
佐田 あ、ご苦労様です。
警官 いえいえ。そっちもその、お大事に。
和子 は~いはい。
警官 じゃ。
警官、上手に去る。
警官を見送る二人。
和子 ははは。
佐田 ん……? オレ何の話してたっけ?
和子 え?
佐田 あれ?
和子 うん。あ……エドワードホッパーの描いた都市生活者の夜について。
佐田 え?
和子 夜の街は灯りをえることによって、逆に夜は闇を深くしたことについて。
佐田 え? そうだった?
和子 嘘、ジョ~ダン。
佐田 ああ。
和子 ホント忘れっぽい。つ~か、冗談通じなさすぎ。全然面白くないも~ん。
佐田 そうか?
和子 終わってるよね~。アーティストの卵として。
佐田 おいよお~。
和子 カタイ、カッタイ。
佐田 うん……。
和子 公務員みたい。そだ、もう公務員になっちゃえば!
佐田 おい。
和子 ハハハ! イイ! 似合うよね~。公務員。
佐田 バカにしてるよな。
和子 何? ☆怒った?
佐田 ☆公務員。
和子 うん。公務員。
佐田 公務員に対して。失礼だよ。
和子 え? そっちい?
佐田 だってよ。公務員は、カタイってことだろ。クリエイティブじゃないって事だろ。
和子 そうでしょ?
佐田 バカにしてるよ。
和子 どこが。
佐田 違うよ。違う。公務員だってな。大変なんだよ。すんげー。
和子 そう?
佐田 だって街のため、人の為。それってすんげークリエイティブだろ。ある意味。ある意味な?
和子 あ~。
佐田 なっ!
和子 カタイよ。その話し自体がすでにカタイ。
佐田 おまえはさあ、もうちょっとカタクなった方がいいと思う。
早喜 足して2で割ったらちょうどいいかもね。
佐田 おわ!
和子 早喜さ~ん!
早喜 おはよっ。
和子 あのね! あの、こいつカタイんっすよ~。カタウルサイんすよ~。
早喜 カタウルサイ?
佐田 いや、ボクはただ、公務員は大変なんだぞって。カタイだけじゃないんだぞって。
和子 ほら、カタウルサイ。
佐田 んだよ!
早喜 ま、それが佐田君の良さじゃない?
佐田 そ、そうですかね?
和子 喜んでる。カタ喜んでるよ。ハハハ!
佐田 なんだよ。カタ喜ぶってよ。
和子 カタイのよ! 喜び方も。
佐田 うるせっ! あ~! この……、ユルキツ女!
和子 わけわかんない!
早喜 もー! (白菜をテーブルにドンと置く)漫才はいいから。
和子 漫才って~。
早喜 でさ、どう? ほら、中。
和子 ま、なんかね。
佐田 緊張感ナイですよ。なんかほのぼ~のしてますもん。めちゃ。ま、そうですよね。誰も見てなきゃただの引きこもりですから。
早喜 そうよね~。引きこもりよね。
和子 あっ、そだ! 踊ったら出てくるかも!
佐田 ん?
早喜 ああ、かもね~。
和子、踊り出す。
佐田一人、訳が分かってない。
佐田 おい、え? 何?
和子 うずめよ。うずめ。
佐田 うずめ?
和子の踊りを見る佐田。
上手より、佳枝現れる。
空のバケツを持った佳枝がじと~っとした目で、三人を見ている。
前を通りたいのだが、和子が邪魔なのだ。
佐田 え???
早喜 ほら、神話の洞窟にこもった神様の。
佐田 ああ、アマテラスオオミカミ。で、それが?
和子 (あきれて踊りを止め)バカ。
佐田 んん!
早喜 こんにちわ。
佳枝 どうも。
佐田は、佳枝に会釈するが、和子は会釈せず、佳枝をじと~っとにらみ返している。
佳枝、じと~っとしたまま通り過ぎ、下手へ去る。
和子 湿ってる。明らかに湿ってる。
早喜 ちょっと
佐田 止めとけよ。地獄耳だぞ?
和子 あのねえ! 私はネエ! 聞こえるようにいってんの! あいつじめじめしてんのよ! 陰険。ほんと、ロシア人じゃないの? ホントは!
佐田 おいよ~。また微妙に差別発言を挟む~。
和子 するよ! 私は確信をもって差別をする! 好きな物は好き! 嫌いな物はキライ! それが私!それを全力をかけて、大事にする。
早喜 ま、それはいいことなんだけどね~。
和子 でしょ?
早喜 でも、人とは仲良くしなくちゃね。
和子 ま、分かっちゃいるんすけどね。それは。
早喜 ま、あの人はね。ちょっと私も苦手だし。
佐田 あ、そうなんですか?
和子 この裏切りもん!(佐田をこづく)
佐田 いてえなあ。ちょっとだけだろ。
早喜 何々?
和子 ちょっと聞いてくださいよ! こいつ、あのおば
はんに、日本舞踊とか、習ってんすよ!
佐田 だから一回だけだって!
早喜 あ、あの人、日本舞踊の先生なの?
佐田 らしいですよ。一応。
早喜 一応?
和子 生徒いないんだって。あれじゃあね。そりゃそうっしょ。
早喜 ハハハ。
和子 ほらあんた、踊りなさいよ。日本舞踊。
佐田 え?
和子 ほら、習ったって、自慢げに踊ってたでしょ~?
早喜 あ、見たい、見たい。
佐田 え~。
和子 ほら、踊れ! 公務員!
早喜 はい! はい! はい!
佐田 ええ~。マジで~!(といいつつカチコチに踊り始める)
和子 なんだか、あんたが踊るとわびもさびもね~や。
早喜 ちょっとね。
佐田 え? ダメっすか?
和子 間違ったドイツ人みたい。
佐田 (踊るのをやめる)また~。
南 た、楽しそうですね。
驚く3人。いつのまにか、南がいた。
早喜 びっくりした~。
和子 誰!
南 あ、すいません。すいません。
と南、後ずさって去っていこうとする。
佐田 え?
和子 お~い。
南 すいません。あれですよね。邪魔しちゃいましたよね。どうぞ、あの、続けてください。太極拳。
佐田 ええ~?
和子 ハハハ! 中国人になった!
南 え?
佐田 太極拳って……。
和子 いいね~。あんた。で? 誰?
南 あ、すいません!
和子 え? 謝る人?
南 すいません。あの……。え。松本~、洋一さんが?籠城されてるアトリエ倉庫ってここなんですよね?
佐田 え? なんで知ってんの?
南 あ、すいません。
和子 また、謝った。なんか面白いよね。あんた。
早喜 ちょっと。失礼でしょ。
南 あ、あの、松本さんのブログに、籠城するって書
いてて。そっからもブログ書いてて、で、さっき……。
和子 え? そんなことしてんの? あのおっさん。
佐田 おい! おっさんってなんだよ!
和子 あ、ごめんごめん。
佐田 知らない方がどうかしてるだろ。
和子 そうなの? 私、パソコンダメな人だからね~。
佐田 なんだよ。パソコンだめな人って。
早喜 で、あなた、まっちゃんのファン?
南 まっちゃん? あ、松本先生ですか? はい。あの、なんていうか、すごく、あの、あれです。すいません……。
早喜 初めて見た。まっちゃんのファンって。
和子 あ、ほんとだ。
南 そ、そうですか? すごく多いですよ。その……。
佐田 そうですよ。ホントにスゴイ方なんですから、先生は!
和子 へ~。
佐田 うわ~。
和子 で、何? あんた野次馬?
南 あ、あ、……すいません。
和子 もう、ちょっと今のはうざい。
早喜 ちょっと。いいからね。気にしないで、この人、ホントはいい人だから。多分?
和子 多分って~。
南 あ、……すいません……。あの……みなさんは……。
佐田 あ、僕たち? ぼくとこいつは松本先生の弟子。っていうか押しかけてるようなもんだけど。で、この……。
南 あ、もしかして、野菜画家の由良さんですか?
早喜 あ、はい。
和子 知ってるの?
南 あ、あの……。なんていうか、その……。ハイ……。あの……。えっと野菜の絵だけ描くっていう。ですよね?
早喜 そう。野菜の表情をね。生かして。表現してます。私もここのアトリエでね。
南 ごめんなさい!
和子 また~?
佳枝が下手より、再びやってきて、じと~っとしてこちらを見ている。
バケツには水が入っている様子。
南 あの、ホントは松本先生のブログで、知ったんです。はい……。
早喜 ちょっと。あのバカ、私のこともなんか書いてるの?
南 はあ……。
早喜 え? 何?
南 いや、そのあの、あの、すいません。
早喜 え? そんな謝る感じの事?
南 いや……。あの……。
早喜 あ、謝る?
和子 うわっ。
皆が佳枝に気づく。
南、佳枝に会釈。
佳枝がそろそろと4人に近づいてくる。
和子は佳枝を睨んでいる。
イタイ間。
佳枝 あの。
早喜 はい?
佳枝 無くなりました。
早喜 え?
佳枝 水。これで最後。
早喜 ああ。
和子 あ~あ。
佳枝 いや、一応いっとこうと思って。
佐田 ああ、どうも。
佳枝 大事ですから、水。水は。
早喜 そっか、あ、私あったかな?
佳枝 分からないみたいです。次、いつくるか。あの、給水が。
早喜 あちゃ~。ひっどい水不足ですもんね。
佳枝 言ってましたから。軍服を着た人達が。聞いたんです、私。「次、いつきますか?」って。
早喜 ええ。
佳枝 じゃあ「分からない」って。「分からない」違うか。違う。「分からない!」こうです。私。言ったんです。「ごめんなさい」って。私はね、いいたかったんです。「ありがとう」って。いいたかったんです。ホントは。
和子 フフ(鼻で笑う)
佳枝 (和子を見る)水がね。無くなっちゃたのよ。私のバケツで。ほら、これ。途中で少し、でなくなって。まだちょっとだけしか入ってないのに。そしたら見るの。軍服を着た人達が。
早喜 そう。
佳枝 私、ひねったんです。自分で栓を。じゃあ掴まれたんです。私の手を。
佳枝、右手をさする。
佳枝 イタイ。でも、水、出たんです。……。(誰かと睨み合っている)そして、最後の一滴が。ポトンってえ……。(バケツを見る)
早喜 そう……。
和子 きちがい……。
佳枝、和子を睨む。
和子、目をそらす。
佳枝、早喜を見る。
早喜、苦笑いを浮かべる。
佳枝 ホントですか? 籠城してるって。
和子 うわっ、出た地獄耳。
佳枝 何か?
和子 いいえ?
佳枝 ……何故ですか?
早喜 はい?
佳枝 あの、何故籠城を?
早喜 ああ……。
佳枝 だって、そうじゃない。親会社が約束してくれたんでしょう? ここ、壊す代わりによそにもっとひろ~い新しいアトリエ提供してくれるって。
佐田 それは……そうですけど。
佳枝 それってかなりそちらの我が儘、聞いてませんか?そちらの勝ちでしょ? もう。
和子 だから?
佳枝 だから、だから? 何故? 何故籠城?
和子 わかんないわよ。そんなの。私たちにも。
佳枝 あの人は、あの人は、なんなんですか?
佐田 あの……。すいません。なるべく迷惑かけないようにするんで……。
佳枝 迷惑なんですよ! もう、迷惑なんです! ここにあなた達が居るって事が!
和子 何! それ!
早喜 ちょっと……。
佳枝 知ってるでしょう! この場所が、いいえ、街が! 変な噂が立ってるの! きちがいストリート! ここ! この通りが、きちがいストリートって呼ばれてるの! ハダカで奇声ををあげてるあれが、アート!? あなた達がやってるのはアートでもなんでもないの! 迷惑。迷惑行為なのよ!
佐田 ……。
佳枝 おかげでこの町に住んでるって、言えないの。誰にも。お住まいはどちらで? ええ、私は言えない。ああ、キチガイの?って言われるから。あんた達のおかげで生徒もみんなよそへいったのよ。どうしてくれるのよ! 迷惑。ホントに迷惑。
和子 じゃあ、あんたがどっか行けば良かったのよ! 私たちの活動する自由だってある、あるのよ!
佳枝 それよ。自由、自由って、ちがうわよ。そんなの自由じゃない。わがまま。とても迷惑なわがまま。
和子 ……!
睨み合う和子と佳枝。
南 あの……私……。
一斉に南を見る一同。急に注目の的になって慌てる南。
南 あ、すいません……。
和子 何! なんなの!
南 今さらなんですけど……。あの……。私、さっきそこのうどん屋で、松本先生見かけたんですけど。ごめんなさい。
早喜 え? 嘘。
南 いや、なんか、私、うどん屋で普通にうどん食べてたんですよお。あの、普通って言っても天ぷらうどんで、あの、今日、ちょっといいことあったもんで。えへへへへ。あの、あ、すいません。で、あの、私が「あれ? 松本先生ですか~? って聞いたら、「やべっ」って行って逃げてったんですけど。あ、微妙に似てる人かもってもおもうんですけど。あの、すいません。いまさら~。
佐田 それ、ホントに松本先生なの?
南 ……すいません。いや、それ、どうなのかなって。来たんですけど……。すいません。
和子 いちいち謝るなよ!
そこへ警官が上手より、来る。
警官 あの……、すいませ~ん。
佐田 あ……。
和子 何!
警官 あの、事件ですか?
佳枝 お巡りさん、ここ、ここです!
警官 え?
和子 あ、あんたが呼んだのね!
佳枝 ち、違うわよ!
警官 (佐田に)事件? (和子に)事件? (早喜に)事件? (南に)事件?
南 事件。
佐田 あ、いや。
警官 あの~、やっぱり立てこもってる人がいてる~って言うのは、ここしかないなあって。
佐田 ああ……。
警官 いや、あの、もしかしてまた松本さんですか?
佐田 あ……はい。微妙にそうじゃないのかもって感じが今でたんですけど、多分……はい?
警官 あれですよねえ。ええっとお? 松本さんが立てこもってる?
佐田 ああ~、そうなのかな?(南を見る)
南 ……すいません。
警官 え?
佳枝 中、中調べたらいいのよ! 早く中あけちゃってよ!
和子 あんたは黙っててよ!
警官 いや……。いやね、ボク、さっき松本さん見かけたんですよね。
佐田 あら~。
警官 ボクは松本さんが? 事件現場だと思って。だからその、追いかけたら、松本さん逃げるんで。で、ああ~ボク、なんで松本さんを追っかけるのだろうかって。これは事件なんだろうかって。ああ、分からないなあって。で、スタート地点に戻ってみようって、ほら、犯人は現場へ戻るっていうんで。
佳枝 なにいってんのよ! 警察!
警官 ああ……。なんですかね? 話しがよく見えないんですけど……。あの、まず、問題って解決したんじゃありませんでした?
佐田 あ、そうなんですけど……。
警官 ほら、あれですよね。もう出て行くって話しなってるんですよね。
佐田 あ、はい……。
警官 で、松本さんは入ってない。って? 中には、誰もいない?
佐田 でも、音してたから……、誰かいるはず。な?
和子 うん。
警官 え? どういうことです?
佐田 さあ~?
警官 う~ん。え? まず。これは事件?
早喜 そうとらえるならそうでしょ。
警官 ええ~。っとすいません。ちょっと時間を。えっと、まず、ボクが、事件か?てえ所を決めるの?って事かあ。(自分に)事件ですか? ああ~。
佳枝 なんでもいいのよ! 早くとっつかまえて刑務所ぶちこんで!
警官 おお~。何故ですかって質問はいいですか?
佳枝 うるさいい!
警官 あらら。え~っと、まず、不法占拠なんでってことで、ボクがきて、でもって? えっと立てこもっている。で、それが誰なんですかってうわ。怖い。今、怖い。
早喜 とりあえず、この状況なんとかしてくれません? 早く。
警官 ああ~(悩む)ああ、そうか。ほうほう。あの~、一応、中、確認さしてもらっていいですか?
佐田 アトリエの中、ですよね?
警官 はい。事態把握、事件確認。よ~しっってね。
佐田 いや、でもいちおう籠城中なんで……。
警官 すいません。これも警察のよっ、権力ってことで一つ。
和子が、さっとドアの前に仁王立ちになる。
警官が、それをのけて入ろうとするが、和子が身体をはって死守する。
警官 あの、すいません。
和子 ……。
警官 (佐田達のほうを振り返り)あの……。ちょっと……。
しかし佐田、早喜は何も言わない。
警官 あの、誰か……。
佳枝 ちょっと、とっとときちがい達、連れってってよ! ここのキチガイみんな!
警官 ちょっと奥さん……。
佳枝 知ってるのよ! 私は! あんた(和子を指さす)、こん中のキチガイとやってるの! 知ってるんだからね! 声が! 声が聞こえるんだからね! あんた達、アーティストなんて言ってるけどね。ただの獣よ。自分の欲望のまま動いてる獣じゃない!
和子 ……。
早喜 お巡りさん!
警官 は、はい!
早喜 あの、奥さん、興奮してるみたいなんで、お家まで送ってあげてはどうですか?
警官 ああ……(迷い、苦笑する)ええ。ボクが?
早喜 あなたは何?
警官 ああ~、なるほど。じゃ奥さん、行きましょう。
佳枝 ちょっと! 何するのよ! あなた住民の安全を守るのが仕事でしょうが!
警官 ああ~。ごもっとです。
早喜 お巡りさん!
警官 ああ……。奥さん?
佳枝 なによお!!
警官 あの、後は、ボクがやりますからってことでね。警察的にうまいぐわいに。権力ー! って
余計に興奮してわめき散らす佳枝。
警官、それを這々の体で、佳枝を抑えながら。
警官 じゃ、また来ますんで。
佐田 あっ。
佐田がバケツを拾う。そして、じっとバケツの中を見る。
警官 あの……。
佐田 あ……。どうぞ。
佐田、バケツを佳枝に渡す。
佳枝 ありがとう。
おとなしくなる佳枝。
警官 お宅まで、お送りしますから。さ、行きましょ。
警官と佳枝、上手へ去る。
早喜 どうも。さて。私も行こうかな? 新しいところの引っ越しもまだだし。(南を見て)あなた、どうする?
南 あ、私ですか?
早喜 ええ。
南 あ、居ない方がいいみたいですね?
早喜 (微笑む)佐田君は居るんでしょ?
佐田 あ……。
早喜 行きましょ。ああ……。佐田君。
佐田 ……はい。
早喜 あのね。お巡りさん呼んじゃった、私。
佐田 え?
早喜 なんかヤになっちゃった。ごめんね。……じゃ。
佐田 ちょっと……。
早喜、上手へ去る。
慌てて行こうとする南。
南、早喜が白菜を忘れているのに気づく。
南、白菜を持つ。
南、白菜に「??」となる。
南 あ、あの、これ。
早喜 あ、ごめん。
南、慌てて白菜を持って、早喜の後を追う。
南、白菜を早喜に渡す。
上手へ去っていく早喜と南。
佐田 ……ハァ……。な~。
和子 ナニッ。
佐田 なんなんだよ……。
和子 知らないわよ。
佐田 あのさあ。
和子 ……。
佐田 ……。無かったよ。水。
和子 ナニ。水不足だからでしょ!
佐田 ちげえんだよ。バケツにな、水入ってねえんだよ。
佐田、和子に近づこうとする。
和子 近づかないで! ちょっと……それ以上。
佐田 (立ち止まる)うん。
和子 あんたも新しいアトリエ行けば?
佐田 ……。いいんだろ? この距離だったら。
和子 うん。
佐田 この、距離。
和子 ええ。
佐田 距離だよ。距離。
和子 もういいよ。それは。
佐田 こうやってな。じっと見る。じ~っと、ほんとにじ~っとな。見るとな、距離って、なくなるんだ。知ってたか?
和子 ……。
佐田 じ~っと。あのな、じゃあ、距離もなくなるんだ。
和子 何いってんの?
佐田 わかんないか。ハハハ。
和子 ……。
佐田 先生! 聞いてるんですか! 先生! 何か言ってくださいよ。ねえ。
和子 ……いないかもしれないのに。
佐田 先生! 先生はホントにキチガイなんですか! 先生! ボクはいいですよ。先生がキチガイでも、ボクがきちがいでも! ボクが先生の作品に感動したには違いないですから……。
ドアを狂ったように叩く和子。
和子 ねえ。
佐田 何?
和子 これってどういうことなのかな?
佐田 え?
和子 あんた、このきちがいの事、訳の分からない事、ちょっとは分かるんでしょ? 分かってるんでしょ?
佐田 それは……。
和子 これってどういうことなの? 全然、意味分からない。全部が分からないや。もうどうでもいいってこと? 全部。全部。私のことも、全部。
佐田 ごめん。分からない。
和子 だめだね。あんた、やっぱアーティストに向いてないわ。
佐田 はは、そうかもな。
和子 絶対そうよ。
佐田 あ~あ、うん。……よし、辞めた。オレ辞めたわ。うん。今! アーティストや~めた!
和子 ……。
佐田 はい! 今、オレ、ただの堅めの男です。ドイツ人風、公務員チャイナ型のただの男! (ドイツ語風に)ニーハオ!
和子 ……。
佐田 どいて。
和子 ……。
佐田 どけよ。
和子 ……。
佐田 どけ!
和子、ゆっくり退く。
佐田、ドアのノブをゆっくり回す。
佐田 あ、開いてる。
和子 え?
佐田 鍵、かかってないわ。
和子 そう……。
佐田 なんでだろ。
和子 最初から、鍵なんかかかってなかったんじゃない?
佐田 かもな。ハハハ。
和子 何?
佐田 ああ……だめだな。おれ。すげえや、先生は。
和子 どういう事?
佐田 君には一生分からないよ。開けるぞ。
和子 うん
ゆっくりドアが開いた。
暗転。
声1 どうも、ボクです。目が覚めた。これを書いている。ああ、地震だ。結構強いな。ここも潰れるんだろうか?なんかもうどうでもいい。(ここからゆっくり)せめてもう一本煙草を吸いたかった。
声2 どうも、ボクです。昨日は晴れていて、どこかで祭りをやっていたようだ。子供の声が聞こえる。はしゃいで泣いて、笑っている。遠くの声が、ここまで聞こえる。
声3 どうも、ボクです。テンツクテンツクテンテンテン。誰かの太鼓の音が今聞こえる。誰かの祈りの太鼓だ。なんて綺麗な音なんだろう。
声4 どうも、ボクです。崩れた。自分の根本が。じぶんが意識していない前提みたいなのがいくらでもある。ほら、昔の作品を読む時に、ついてくる注釈のように、あの時代はなになにだから。みたいなものが。それが一瞬にして崩された気がしてた。つまり、世界が変わってしまった。それは地球という意味ではなく、ボクの中の世界。それが、ようやく、みえてきたのかもしれない。あれから、もうすぐで4年なのか……。
声5 どうも、ボクです。何もいらない。お金も、才能も、成功も。名誉も。気をつけろ。おまえらが考えてるほど、単純じゃないんだ。ただ、ボクは目の前の物の距離を測って。それを壊す。その怖さが分かってるか?時間も、距離も、何もかも関係ない。人類が続く限り、そこにいるぞ。
声6 どうも、ボクです。ことあるごとに、自分は死んでいるんだなあと思う事がある。何も欲しくない、何もやりたいことはない。ただ、作ることの為に生きてるだけなんだなあって。後はその為に、肉体を生かすだけ。なんてつまんないんだろう。やっぱり、まだ明日が来るなんて言う事実が信じられないんだ。やだなあ。
声1 どうも、ボクです。身体をちぎらるような痛みを沢山感じた。もし、それが本当なら、ボクは両手両足が、もうない。むしろ、それが本当の方がいいのに。ああ、やだなあ。ひどくイタイ。痛いんだ。なんてことだろう。ボクは、ああ、なんだろう。このつらさは慣れなければならないこと、というのが、辛いんだ。
声4 どうも、ボクです。しばらく気づかなかったよ。こっちの方が現実だなんて。がっかりだ。こんな現実ならいらない。夢の方がいい。そう本当に思ったよ。
声3 どうも、ボクです。分かるかな? わかんないんだろうな。いつだってそうなんだよ。ボクはもうめいっぱい、めいっぱい手を広げてるんだ。でも、なんで届かないんだ!ってなるさ。ああ、発狂しそうだ! 手を伸ばしてるのかい? それは、ボクがタイミングを見失ってるから?分からない。分からないんだ。もう、腕がちぎれてしまいそうだ! ああ、気が狂いそうだ!
声5 どうも、ボクです。水が欲しい。ずっと水道が止まっている。しおれてゆく花のように身体もだらりとたれてゆく。このコンビニで売っていた水はどこから来たのだろう。わざわざアルプスから来たらしい。本当だろうか? 遠く離れた水を、この闇の中でボクは飲んでみる。あああ。外は……。
松本 外はまだあるのだろうか?
蝉の音。
完全な溶明。
ドアが開いている。
松本が、立っている。
松本、手にしていた空のペットボトルを地面に置く。
タバコを吸おうとした、タバコが無かった。
松本は何かを考えているのか?
そして、松本は去っていく。
ゆっくり暗転。
溶明すると、ドアは無くなっている。
再びテーブルと長椅子がある。
テーブルの上に、やや大きな袋が乗っている。
和子が、後ろを向いて立っている。そこは、ちょうどドアのあったあたりだろう。
南が上手よりやってきて、椅子に座る。
南は首にタオル。。
和子が振り返って、テーブルにやってくる。
和子 あ、ごめんなさい。
と、テーブルの上の袋をのけようとして、南と目が合う。
南 あ。
和子 ?
軽く会釈する南。
和子はまだ誰だか分かっていない。
南 あ、すいません。あの、ここで、あの時。
和子 あ! ああ、こんにちわ。
南 どうも。
間。
南 あ、さっき、あっちの方で、由良さんにも会いましたよ。
和子 え? 早喜さんの事?
南 あ、はい。
和子 あれ~?
南 ? どうか、しました?
和子 いや、今日、早喜さんと待ち合わせしてたのにな。
南 あ、そうなんですか。なんか向こうも待ってる感じでしたよ。あっちの公園の方で。
和子 あちゃ~。勘違いしてるのかな?
南 かも?
和子 う~ん。
テンツクテンツクテンテンテンと太鼓の音が聞こえてくる。
和子、ちらっと携帯を見て、考える。
和子 すぐそこの公園だよね?
南 あ、はい。
和子、袋を見、後ろの方を見て、
和子 ここ、居る?
南 あ、はい。
和子 ちょっとこれ、見てて。
南 あ、はい。いいですよ。
和子 じゃ、お願い。あ、これ、あなたにもあげる。
と、袋からフィレオフィッシュを何個か渡す。
南 あ、ども。
南、渡されたものを見る。
佳枝がゴミ袋を持って上手より来る。
南 フレオフィッシュ……。
和子、上手に去ろうとして、佳枝に気づく。
和子と佳枝、お互い目を合わさずに行く。
警官、下手より登場。
佳枝 あっ。
警官 あ、こんにちわ。
佳枝 どうも。
佳枝、一度下手へ行こうとするが、戻ってくる。
佳枝 あの、ウルサイのよ。
警官 はい?
佳枝 前の、前の道、夜、車の音。
警官 ああ。はい。
佳枝 なんとかなんないの?
警官 はあ、いや、なんとか。え~っと。できることはしてるんですけども。
佳枝 何を。
警官 え~。いや。ああ! 看板立てました!。
佳枝 近隣の迷惑になりますからってやつ?
警官 ええ~はいはいはい。
佳枝 それが警察の権力?
警官 え? 権力。え~。権力? ですか? 権力……。
佳枝 そう。ま、いいわ。お疲れ様。
警官 どうも。
佳枝、ちらっと南を見て、下手へ去る。
それを見送る警官と南。
警官は苦笑いをする。
南 こんにちわ。
警官 ああ、どうもどうも。今日もですか? スキですねえ。この場所。
南 あ、はい。
警官 素敵な場所になりましたもんねえ。公園としては。
南 ええ。
警官 ボクもね。あの、ここ、スキです。
南 そうなんですか?
警官 あっちの公園より、こうぱっと。ぱ~!!って。
南 分かります。
警官 ほ、ほんとに?
南 はい。
警官 ああ、嬉しいなあ。嬉しい。ぱ!!
南 はい。
警官 へへへへ。ぱ!
南 ……。
警官 すいません。あ、お食事中でした?
南 あ、これは……。
警官 青い、フィレオフィッシュ?
南 はい。
警官 なんだか、思い出しますね。
南 ええ。
警官 よく話しを聞かされましたよ。佐田君に。
南 そうなんですか? 私も直接聞きいてみたかったな~。
警官 あ、聞いたことなかったですか。
南 私、あのとき会っただけですから。でも、その話し、まだインタビューでよく言ってますよ。
警官 ヘヘヘ。そうなんですか~。ああ、でも、今じゃ、人気アーティストになっちゃたって。
南 ええ、今、フランスにいるらしいです。
警官 詳しいですよね。
南 書いてましたから。ブログに。インターネットでフランスで書いてるブログ、読んでるんです。
警官 ブログ。すごいですよねえ。インターネットは。どんなに離れててもあれですからね。
南 ええ。
警官 サインもらっときゃよかったな。
南 そうですね。
警官 ヘヘヘ。
警官の携帯が鳴る。
警官 はい。……え? あ、はい。今近くを巡回中です。はい。分かりました。
携帯を切る。
警官 へへへすいません。じゃこれで。
南 事件ですか?
警官 多分。では。
南 あ、ごくろうさまです。
警官、慌てて下手へ去る。
南、顔の汗を拭く。
南椅子に座り、、フィレオフィッシュの袋をはぎ、食べる。ん?となる南。
早喜がやってくる。
早喜 あれ?
南 あ、どうも。
早喜 ああ。ねえ。和子ちゃん見なかった?
南 あの、松本先生の弟子だった?
早喜 そうそう。ちょっときつそうな。
南 さっき、あの、由良さん探しに行きましたよ。
早喜 あちゃ~。ほんとう。あ~。
南 ハハハ。
早喜 あ、参ったなあ。どうしよ。待ってた方がいいのかな?
南 さあ~?
早喜、テーブルの上の袋に気づく。
早喜 あ、これか。
南 ?
早喜 いや、なんかフランスの佐田君からフィレオフィッシュ大量に送ってきたんだって。私宛にもあるみたい。
佳枝が下手後ろずさりで、やってくる。
何かを見つめている佳枝。
南 そ、そうなんですか。これ。
早喜 そうそう。あ、食べちゃった?
南 ああ~……はい。
早喜 大丈夫? 腐ってなかった?
南 う~ん……。ん?
南、佳枝に気づく。
佳枝、逃げるようにゆっくりと上手へ去っていく。
早喜 なんだろ?
南 さあ?
早喜 はあ……。疲れた。
早喜、椅子に座る。
南 いいんですか? 待ち合わせ。
早喜 いいんじゃない? わかんなかったらそのうち電話かかってくるでしょ。
南 すいません。
早喜 ん?
南 私があっちにいるっていったから。
早喜 ああ~。そうなんだ。いいのいいの。全然。私が悪いんだから。ちょっと、あの娘に会うのヤでね。
南 そうなんですか。
早喜 うん。
南 ……。
早喜、ドアのあった方を見る。
佳枝、逃げるようにゆっくりと上手へ去っていく。
早喜 今日もここで?
南 あ、はい。
早喜 そっか。えらいね。
南 そんなんじゃないですよ。
早喜 ……。
南 ……あ。
早喜 ん?
早喜と南、下手を見た。
太鼓の音がリフレインしだす。
南 松本先生?
早喜 ハハ。
二人が見た、松本はどんな顔をしてそこに立っていたんだろうか? きっと気まずそうに苦笑いしながら、ヨッと手でも挙げて、いつものように。
《了》
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使用許可について
基本無料・使用許可不要。改訂改編自由。作者名は明記をお願いします。
上演に際しては、観に行きたいので連絡を貰えると嬉しいです。
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita
劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきはかりごと)
1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
深津篤史(岸田戯曲賞・読売演劇賞受賞)に師事。想流私塾にて、北村想氏に師事し、21期として卒業。
2010年に書きおろした、和歌山の偉人、嶋清一をモチーフとして描いた「白球止まらず、飛んで行く」は、好評を得て、その後2回に渡り再演を繰り返す。また、大阪で公演した「JOB」「ジオラマサイズの断末魔」は大阪演劇人の間でも好評を博した。
2014年劇作家協会主催短編フェスタにて「¥15869」が上演作品に選ばれ、絶賛される。
近年では、県外の東京や地方の劇団とも交流を広げ、和歌山県内にとどまらない活動を行っており、またワークショップも行い、若手の劇団のプロデュースを行うなど、後進の育成にも力を入れている