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考えすぎて描けない時は…

お世話になっております。若林です。

趣味で始めたラジオに、漫画家志望者や小説家志望者の人からお悩み相談がよく来ます。

「考えすぎて描けない」
「思いついたものが面白いと思えない」
「何も思い浮かばない」

僕にも同じような経験があります。
10代から20代前半までは、机の前でずーっと考えてはいるけど、何も描けてないって感じの日々でした。
あの頃は「とりあえず描きなよ」って言われるのが嫌でしたね。
とりあえず描けるなら、描いてますもん。

でも解決策は、「とりあえず描く」しかありません。
描かないことには前に進めません。

じゃあとりあえず何を描けばいいのか。

僕の答えは「確実に描けるものを描く」です。

誰だって、描くからには面白いものを描きたいと思うじゃないですか。
でも面白いものを描こうとしちゃダメです。
面白いものを描くには、知識と技術、そして自己分析が必要です。
それが無いうちから面白いものを描こうとしても、描けるわけがありません。
そして、描けないってことは、それが無いってことです。

なので「今の自分に確実に描けるもの」を描いたらいいと僕は考えてます。

これは自分の現状を正確に知るための作業です。
自分は何が描けて、何が描けないのか。基礎力を知るための作業なんです。

面白いものが描けないなら、描けなくていいです。それが今の実力です。
ありきたりなアイデアしか思いつかないなら、それを描けばいいです。それが今の引き出しです。
わけわかんなくなるなら、わけわかんないまま描けばいいです。それが今の表現力です。

そうやって描いてくと、自分の実力がわかるはずです。
「もっと考えれば面白くなる」みたいな考えは捨てましょう。
もっと考えて何も描けてないのが、現状なんですから。

自分の実力が見えると、何ができて何ができないかがわかります。
それがわかって初めて、自分がどうしていくべきかも見えてくると思います。

でもそれ以上に、「がんばらず普通に描くとこんな感じ」というのが体感できます。
この経験が貴重です。
創作への心理的なハードルが下がりますし、「他にももっと描いてみたい」という意欲が出ると思います。
こうなったらあとは衝動に任せて、自分の描けるものを描いていけば、自ずと道が見えると思います。

その上で注意点は2つ。

まず「練習」とは思わないで下さい。僕も練習は嫌いです。
描くからには、それで誰かを楽しませて、お金を稼ぐつもりで描きましょう。
そういう姿勢が無いと、いつまでも一人よがりの創作をすることになります。

プロになるなら、お金にならない漫画を描いちゃダメですし、漫画を描いたらお金にしないとダメです。

そして「妥協」を受け入れて下さい。
誰だって自分の作品に妥協したくないと思いますし、僕もなるべく妥協はしたくありません。
でも、「いかに妥協できるか」もプロとしては大事な能力だと思います。

僕は自分の絵について、ずっと下手だと思ってきました。下手な絵の作品を世に出すのは苦痛です。
でもそのままではいつまで経ってもプロにはなれないので、妥協しています。
僕の妥協点は、「下手でも、丁寧に描かれて仕上がってれば、読者に誠意は伝わる。」という点です。
他にも……
「もっと考えれば面白いものが描けるかもしれないけど、ちゃんと〆切に間に合わせることが大事。」
「つまらないかもしれないけど、キャラの行動にウソが無いことが大事。」
とか、いろいろあります。
僕にとって、読者への誠意が大事です。
そこさえ押さえてれば、自分の実力不足は妥協できます。
そして自分がどこで妥協する作家かわかってくると、力の入れどころもわかってきます。

どこを妥協するかも、作家性の一部です。

……この話を読んでて、何か描いてみたくなりませんか?
「上手く描こう」とか思わず、5分で思いつくものを描いた時、どんなものができるか知りたくなりませんか?
練習ではなく、それも創作なんだと思うと、やる気が出ませんか?
妥協すらも、自分の作家性の一部だと思えば、妥協が楽しくなりませんか?

そんな気持ちになってくれたら僕も嬉しいです。
もう年末ですね。家で静かに何か描くにはちょうどいい時期です。
お互いがんばりましょう。

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