スタバの話

人生初のスタバに来ている。

二十三年生きてきて初めてスターバックスというものに来てみた。
私にとってスタバというのは「なんかオシャレな人たちが薄っぺらいノートパソコンを窓際で広げながら馬鹿でかくてクリームの乗った何かを啜る場所」というイメージがある。だから私のようなノーメイク主義ザンバラ頭の万年Tシャツカーディガンデニム女の来る場所ではないと思っていた。なんたる偏見であろうか。別にクソダッセエ格好で来ても誰も気にしないだろうに。

今回私が来たのは某巨大駅前のスタバである。
ツイッターのフォロワーからの情報で「スタバの抹茶ラテはうまい」と聞いていたので、それを頼むつもりでいた。事前にある程度注文する内容を決めていれば戸惑うこともなかろう。
結果、私は入り口で戸惑うことになった。
出入り口はどこだ。全面ガラス戸に見えるのでどこがドアなのかわからないのだ。
窓際に向かって薄っぺらいパソコンを開いている人たちがいる場所がドアではないことだけは辛うじてわかる。
結果としてたっぷり二分ほど迷い(そんなに広い店でもないのに……)、無事入店することができた。

スタバの店内は薄暗い。
飲料しか売っていないのかと思っていたが、意外にもケーキや小さいパンなどが売っている。これはおいしそうだ。次回来店することがあればこれも頼んでみたい。今回は抹茶ラテである。
昼過ぎに来店したので私の前にも何人か人がおり、おとなしく並んで待っていると店員の若いお兄さんから声をかけられた。ありがたいことである。
示されたメニュー表の抹茶ラテの上に「ダブル抹茶ラテ(アイス)」の文字が躍っているのを発見した私はまんまとダブル抹茶ラテを注文していた。抹茶好きなんだもん。
注文時、カスタムをどうするかとか口を挟む余裕がなかったのだが、熟練のスタバー(スタバ+er)ならスラスラとカスタム呪文を口にできるのであろうか。いつそういうのを教わったり練習したりしているのだろうか……
そもそも初来店ではカスタムの存在すら教わらないので、先生のいないソロスタバーは永遠に素注文しかできないことになる。恐ろしい店である。

順番待ちをしていると、調理担当とおぼしきかわいいお姉さんから声をかけられた。
「今から抹茶ラテをお作りしますねー!」
なるほど、客を待たせていると思ったので進捗を公開することで安心させようとしたのだろう。接客教育の行き届いているいい店舗である。
「抹茶、おいしいですもんねー!」
うむ。あのほろ苦さがいいのだ。牛乳との相性もバッチリだし、ホットでもアイスでもうまい。……妙に話しかけてくるなあこのお姉さん。大丈夫だからゆっくり作ってくれ。
「……あっ!かわいい!キーウィですか!?」

うん?

この日私はキーウィ(鳥の方だ)の刺繍がされたTシャツを着て出歩いていた。グラニフで購入したお気に入りの一着で、生地の肌触りの良さもそうだが、何よりこのキーウィがかわいらしいので愛用している。
お姉さんはそのキーウィを見てニコニコとしながら「めちゃくちゃかわいいですね!」と私に話しかけているのだ。

私は内心パニックになった。

読者の皆様も薄々感じているだろうが、私は基本的にコミュ障である。店員からできるだけ個として認識されたくないと思っている。
よもや着ている服をコミュニケーションのアクセサリーとして利用する文化があるとはつゆ知らず。

ありがとうございます、とマスク越しに愛想笑いを浮かべるので限界であった。


ダブル抹茶ラテはほろ苦く、甘かった。

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