労働日記|退職しました

 この日記はレターにしようと思います。ふふ、永井さんの「たまにとどく手紙」に感化されて、または他の多くの人がnoteで書いているように、ただ自分のためだけに記憶として書いておくのではなくて、誰かに向けて書いてみようとそう思いました。ほらね、文体もすこしやわらかい気がする。

 退職しました。労働日記も最終回です。2年半勤めた、新卒で入った会社。川崎の寮に住み、すぐに岡山の製油所、化学工場の近くで働き、今年関東に戻ってきました。2年半と言うとそんなもんか、と思ってしまいがちだけど、長かったよ〜〜長かった。最近、松本杏奈『夢をつかむ力』で俺が2年半かけて稼いだ額とほぼ同額を財団から毎年もらっていることを知って驚愕した。俺の2年半ってそんなもんだったんか〜とも悲しくなったけれど、てんこ盛りの2年半だったので、もう少ししたら、けらけら笑いながらこの期間のことを話しているんじゃないかと思います。今は遠回りしちゃったかなという気がしてるけれど、いつか答え合わせができるといいなあとのんびり祈りながら、留学に向けて準備しています。

 退職時のほっこりした話をいくつか。まず「寂しくなっちゃうじゃないですか」と後輩に声をかけられた。「もっと仕事で絡みがあったら良かったんですけどね」って、え、そんなこと思ってくれてたの。彼が本当に寂しそうにしていたから、また飲めたらなと思った。

 退職の挨拶の時に哲学をやりに留学したいんだという話はしていたから、最後の最後で、「実は哲学の先生と縁があって」とか「大学の時に政治思想を研究してて」という話を聞いたりした。早く教えてよ〜!と口を開けて笑った。以前に大学で働いでいた方からは「(たけうちさんは)文学部っぽいですね、法学部とか経済学部の学生も見てたので」と聞いて、やはりそうなのかと笑ったり、大学で思想史を勉強してた先輩からは「哲学やるから金がなくても仕方ないっていうのは違うと思うんだ。ビジネスの最前線にいる人たちからも学ぶことは多かった。」という話に大きく頷いたりした。

 最後の写真撮影。どこに座ろうか、皆が様子見してた時、「じゃあ私が隣座っちゃお〜」とおどけて座ってくれた先輩の横顔がほんのり赤い気がして、いつもはクールな先輩だからちょっと嬉しかったり。育児に奮闘中の先輩にも「もやもやしながら仕事を続けて、やりたいことに飛び込んでいくのはすごいね!」と感心してもらって、最後は「私帰ります、写真送ってね!」と肩をぽんと叩いてもらった。

 いくつかと言ったのに、沢山あったみたい。子供ができる前はよくイタリアに行っていた素敵な方に「楽しんできてくださいね」とエールをもらって、「トスカーナかフィレンツェ行った時は写真送ります」と笑顔を返した。めちゃめちゃな迷惑をかけた上長にも「自分で選んだ道だ、悔いの残らないようにな」と最後まで優しく笑ってもらった。丸い眼鏡とスーツがよく似合う、初めてカッコいいと思ったサラリーマン。60近い人で好きな人はこの上長くらいしかいない気がする。恩人。

 いい部署だったな〜〜こんないい部署はそうそうない、ここに来れて良かったなとしみじみ思った。本当に感謝してます。哲学を生業にして、職業・哲学者を名乗れるよう、精進します。

(おわり)

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建内 亮太
最後まで読んでくれてありがとう〜〜!