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労働日記|俺たちにはまだ上があるから

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 体中を充実感が満たし、気分が乗っている。BTSの”Permission to Dance”を聴きながら、じっとしてることが難しいくらいだ。歌は若い頃の回想からはじまる。

It's the thought of being young when your heart's just like a drum beating louder with no way to guard it.
若い頃を思い返すと胸が何ものにも阻まれずにただドラムのように高鳴っていた。

BTS "Permission to Dance"

その後ちょっとあって、下に続く。見て欲しい。若い時の、ただ胸が高鳴ってわくわくしていた時、それが”that moment”。ここがリンクしてるのがアツい。

When the nights get colder and the rhythms got you falling behind,
just dream about that moment when you look yourself right in the eye, eye, eye.
Then you say "I wanna dance. The music's got me going.
Ain't nothing that can stop how we move, yeah".

同上

訳すとこんな感じ。

夜が寒くなってきて、周りより遅れているように感じたら、自分のことをその目で正しく見つめたあの時を思い出すんだ。
そして言うんだ、「踊りたい、音楽が呼んでる。もう何も止められない」って。

同上

「自分のことをその目で正しく見つめたその時」ってのもすごくて、「ただドラムのように胸が高鳴っていた時=自分のことを正しく知る時」、この二つをイコールで結ぶという、ね。エド・シーランすごすぎ。哲学の授業、留学、ロッキン、友達・恋人と過ごした時間…血が沸騰して頭がくらくらするくらいの興奮の中で、自分がどういう人間なのかを正しく知っていった。大学の頃を思い出す。

 蛇足になるけど、その後のサビも最高にイカしてる。

Let’s break our plans and live just like we’re golden.
And roll in like we’re dancing fools.

計画なんてぶっ壊して、黄金であるかのように生きよう。
ダンス馬鹿みたいに遅れて登場するんだ。

同上


”roll in ”が遅れて登場するというニュアンスを含んでいるなら、”the rhythms got you falling behind”(=周りより遅れているように感じても)、遅れて参加しちゃいなよ、楽しんじゃいなよ、っていう意味になる。エド・シーランすごいや。エンターテインメント性を多分に含んだ歌という形式でこんな芸当をやってのけるなんてさすが。

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 でも、そういう黄金のような時間とは違って今日は8時間も働いている。折角の休日なのに会社に行かないといけなかった。発注業務の処理と倉庫の片付け。平日より人がめっきり少なくて突発的に仕事を頼まれることも電話がかかってくることもなかったから、比較的ゆるい日だった。自分のペースで仕事ができるのは心地よかったけど、ねえ、土曜日じゃん?だからと言って楽しい訳じゃないじゃない。
 なのに今、幸せなの。一年と少しの会社人生の中で、8時間労働をした日の中で、最も苦のない一日だった。仕事をしたのに、肉体的な疲労感も苦役から解き放たれた解放感もない。もう終わりか、という感じ。でも楽しかった訳ではないの。それなのに仕事も全部含めて、今日という日が素晴らしく充実していた。労働が必要なことだったようにすら思える。

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 というわけで、充実していた理由を突き止めたい。まず早起きから一日がはじまる。6時半に起きて、7時半に家を出て、8時過ぎに会社に着いた。午前中は事務処理を済ませて、お昼は先輩にラーメン屋さんに連れて行ってもらった。午後は汗だらだらになりながらボルトの仕分け作業をしていた。夕方から伊豫水軍で定食を食べ、片割れ時の海を眺め、家まで送ってもらった。

今日の幸せポイントをまとめてみよう。


・早起き
・8時間活動
・シャワーで目覚める


・食後の歯磨き
・海沿いを原付にて走行
・シャワーで汗を流す


・刺身定食の夜ご飯
・海の景色を眺める
・森の空気を吸う

これだけ?これだけで幸せになれるってすごくない?アルコールも入ってないし、8時間仕事してんだよ?たかだか3〜4時間の余暇でこれだけ幸せになれるもの?いや、すごいな……

 もうこうなったら、海の近くで暮らそう。魚が美味しい場所に住もう。定食を食べたい。海の景色が一望できる場所も近くに持っておきたい。人工物が目に入らない場所、橋とか船は別にいいけどビルは嫌だな。それから空気が美味しいのも大事か。そうなると田舎だな、やっぱり俺は田舎がすきなんだな。

それと、お金に余裕が出来たら、二輪免許を取って125ccのカブを買おう、ふらっとどこへでも行けるように。バイクって最高だ。休日にロードバイクも気持ちいだろうな〜そう考えると水島はないな。ないよね、海沿いに街がない。都会まで遠過ぎるし。

 神奈川の海沿いに住んで、カブで仕事に行くか?それ、すごくいいな。逗子、藤沢、横須賀、茅ヶ崎、鵠沼、三浦……う〜〜ん、これは神奈川が俺を呼んでるな??仕事終わりに定食を食べて、銭湯に浸かるのもいい。休みの日はパン屋に原付を走らせるのも、ロードバイクで海風に当たるのもいい。バレーボーラーが集まる体育館やビーチに行くのもいい。ジムにも行こう、哲学と教養に浸れる場所も外に持てるといい。

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 話逸れちゃった。そう考えると、休みって活動的に過ごしたほうが元気になれるんだな。新しい発見だ。だらだら過ごす時間が必要って思ってたけど、少しだけ自分を律して早起きして、外に出て活動して、その後の”整い”で天国へ、relax……

 家にずっといるのは健康に良くないよな〜やっぱり動物だもんな〜スマホ見過ぎで頭痛くなるくらいなら、銭湯行くとか、美味しいご飯食べるとか、海や森の近くに行ったりした方が2万倍いいよ。

 それにしても驚いたな、ここでも十分に幸せになれるということが今日証明された。コロナで留学に敗れて、成り行きで会社に就職して、人生を呪うか、仕事の愚痴をこぼすか、人生の充実を将来に託すかしかしてなかったけど、ここでもこんなに幸せになれるのか。いや、びっくりだな……幸せになる方法はあって、ただ行動力が足りなかっただけなんだ。

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 ちょっと待て、それだけか?それだけでこんな幸せになれるものか?勿論、必要なことは全部揃ってた。今日みたいな生活が下地として最低限必要なんだとは思う。それは間違いない。

 でも、それだけで今日ほど幸せになれるか?多分ね、一人で今日のメニューをこなしても、どこか虚しさに襲われたりネガティブな考え事をしてたりしてたんじゃないかと思うんだ。「今自分は楽しいんだ」と自分に暗示をかける瞬間があったんじゃないかと思うんだ。少なくとも一回はSNSを開いただろうね。この今だけに集中して今を味わって、のびのび羽を伸ばすなんてこと、出来なかっただろう。

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 そうだ、そうなんだ、何も考えずにただ楽しんでいられた。見落としていた、最も重要な幸せポイントがあった。

・先輩と一日一緒だった

朝9時過ぎから夜8時までかな、ずっと一緒だった。ストレスなんて一瞬もなかった。先輩以外は事務所にいなかったからね。仕事はほぼ一人でしていたし、何のトラブルもなく、ただ褒められただけの日というのも穏やかでよかった。

 先輩の話を聞いているだけで面白くて、ユーモアの塊みたいな人だった。ハマりやすい性格のようで、パチンコと土鍋にハマっていた時期があったそう。パチンコとOneカップ大関じゃなくて?と思わず聞いてしまった。 ゲーム、コーヒー、ポーカー…ハマると研究心が止まらない様子だった。

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 たくさん笑ったし、ご飯の美味しさと景色のすばらしさと空気のきれいさと、「これ勝ち確やな」と今日の優勝っぷりを全部分かち合って、いや〜〜最高だった!なんてストレスフリーな平日!途中から没入して、自分でもびっくりするくらい自然体でのびのびいられた気がする。

 車の中でもらったCOSTA COFFEEが冷たかったことと貼ってあったローソンのテープから察するに、俺の家に迎えに来る途中にコンビニ寄って買ったんだろうな…いい人だったな……

 すごく充実していたから、まだ仕事の本番が始まっていないのにやりきった感が出てしまって、「でも心なしか来週もまた頑張れる気がしてる」と行った俺に対して、「まだ俺たちには上が残っているから…!www」と明るく返してくれたのも好きだなあと思った。そこにユーモアと人の良さが詰まってた。俺たちが行った伊豫水軍の隣のボヌール・ブッソールのことを指して”上”と言っていたんだ。まだ上が残っているから、それに向けて頑張れるねっていうニュアンス。

 返すがえす素敵な人だ。俺は神経質で細かいところがあるけど、先輩くらいフレキシブルで面白い返しができる人になりたいなあ。

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 友達とでも恋人とでも楽しい時間は過ごせるんだと思う。思うけど、土曜日なのに仕事をして、それが終わった後、一緒にご飯食べて、海を見て、森の空気を吸う。疲れた後に整う……それがよかったんだろうな〜〜部活の後に先輩とラーメン食べた感じ?さながら文化祭の打ち上げのような達成感もあった。

 休みの昼間をだらだらと貪って、その後伊豫水軍に行って海を眺めても今日にはならない。間違いなく、ならない。もしかして、仕事のよさってここに詰め込まれているのでは?仕事終わりの心身の解放はきっとよさの一つに過ぎないのだろうけど、きっとこれも確かな一つだ。友達や恋人とのひと時も最も幸せな時間に間違いないけれど、仕事の人とのオフも最高なんだ。今日、それを知った。

p.s.
あくびとともに寝る。おやすみ。気分よくて夜更かししちゃった。午前0時。


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建内 亮太
最後まで読んでくれてありがとう〜〜!