岡山で滋賀を読む『成瀬は世界を取りにいく』の感想
4月8日の日記。
一日用事で岡山。青春18切符で出かける。姫路または相生まで新快速で行き、そこから山陽本線に乗り換える。時間にして3時間ほど。値段にして一日2500円。
岡山で用事を済ませた後で、パン屋さん「PUBLIC」へ行った。おしゃれな店内、見た目にも美味しそうなパン、おかずパン多めのラインナップ、丁寧な接客、何をとっても文句なし。次々にお客さんが入ってくる。
中では食べられないんだけど、外のテーブルで食べることはでき、オーブントースターもあって温めることもできる。スープとセットにしたら、軽いランチにできる。
とても美味しく楽しい時間になりました。こういう店って京都や大阪には多いけど地方都市には少ないから、地方都市の駅前とかで開店した方が都会でやるよりいいビジネスになりそうな気がするんだけどそんなことないんだろうか。
次に「おだ珈琲店」なんだか、朝ドラ『カムカムエブリバディ』に出てきたマウス・ディッパーブルースみたいな店構えでワクワクした。メニューには岡山名物「えびめし」があったので、それをオーダーしてみた。ご飯が香ばしく、エビのプリプリ感もあっておいしかった。
そして、長い乗車時間で読んだのが『成瀬は世界を取りにいく』夢中で一気に読了した。
まず、滋賀が舞台というのが面白い。ちょっと待って、滋賀だけでもない、滋賀といってもいろいろだ。大津だ。大津といっても昔西武大津店があったあたりの大津。そのローカルな舞台で繰り広げられる成瀬という破天荒な女の子とその周りの人々の話だ。ここまでローカルを突き詰めているところが面白い。わたしはこの場所をよく知っているのだけど、大津を知らない人でも面白いのだろうか。
そして、これはコロナ禍文学ともいえる作品だ。時代背景として2020年からのコロナ禍での影響が作品のなかでも描かれていて興味深い。心の距離を表現するのに「壁がある」ではなく「アクリル板がある」と表現するあたりもイマドキ感がある。数年後、この小説を読んだら、どんなふうに感じるのだろうと思ったりもする。
最後に、どんな人でもあっても成瀬のように生きればいいのだというメッセージを強く感じた。成瀬は「200歳で生きる」とか「滋賀にデパートを建てる」とかとてつもないことを言う。言うわりに、やってみてダメなら諦めたりする。でも、やったぶんだけ、進歩している。そのことを自分自身で認めている。
成瀬は自分が周りにどうみられているか、全く気にしていない。自分に正直で、自分なりに周りの人を愛している。そんな生き方を小説の主人公だからできると感じてしまうかもしれないが、そんなことはない。みんな自分に正直に生きればいいのである。天下を取りに行こうではないか。そんな気持ちにさせてくれる明るい小説なのだ。
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