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【エッセイ】女はそんなに神聖か?ーフェミニストなのにフェミニストと気が合わないことについて

※このエッセイはフェミニストでありながら、なぜか周囲のフェミニストとあまり気が合わない人間が書いています。
この世はすでにジェンダー平等だとか、フェミニズムは終わったとか、そういうとち狂ったことを書くつもりはないのでご了承を。
あと私がこんな文章を書いたからって、男の生きづらさにしか興味なくてその他マイノリティはどうでもいいとか思ってる人に利用されるのは勘弁なのでGOバックで。

2024年7月26日(金)

もはや私がフェミニストとして、どこかに欠陥でもあるのだろうか?
これまでいくつかの記事で書いてきた通り、私はDVサバイバーでフェミニストだ。4人兄弟、大企業に務める父と、専業主婦の母という、ちょっとお手本みたいな家族のなかで、私と母は父親からの暴力を受けてきた。
21歳のときにそんな父からとうとう勘当され、絶縁を果たした私だったが、その頃の私を支えたのはSNS上で腐女子のお姉さんたちが教えてくれたフェミニズムだった。
2018年、ぶっちゃけ今ほど当たり前に、フェミニズムやジェンダーは溢れていなかったころ(だと私は思っている)。最初はBL漫画を読みながら、私が何を消費しているのか知りたくて「セクシュアルマイノリティ」のことを教えてもらったところから始まり、その流れでフェミニズムと出会った。家父長制や有害な男性性など、いくつかのキーワードとそれを打破するための世界中の女性たちの活動と声を聞いて、私はようやく世界の色んなものを「許せる」ような気がした。
そう、私にとってフェミニズムは、「赦し」だった。憎たらしい父親とそこから生まれた自分のことーー男らしさの呪縛から怪物になってしまった父親と、その父親をただ憎むだけで、為す術ない自分、女であることを恨み続けていた自分のことを、まとめて「赦す」こと。そして、赦したからこそ「変わる」ことを望むための手段。
そこに、私にとってのフェミニズムの価値があった。

ジェンダー規範、すなわち今の構造を変えることなくその波に乗るような形で生きている女性たちは、一見上手に生きているように思える。
こういうのを見て、一部の男性は「女はずるい」とか「マイノリティ性を利用してる」とか、変な恨みを持つのだと思う。私はフェミニストとして、そうした恨みは的外れで、あまり意味がないと言いたいし、実際にそう言ってきている。
ただその時に、女性があたかもすごく完璧で神聖で、そして本当にただの「弱者」であるかのように語ることは、間違いだとも思っている。それはむしろ、本来目を向けるべきジェンダー規範から目を逸らさせ、家父長的なシステムに利することになるんじゃないかと。
私は思う、女はそんなに神聖じゃない。
「男性は女性を見た目で判断するが、女性はあまり容姿を気にしない」とか、「実は女性は、収入は気にしない」とか、「女は女であることを利用しない」とか、もう全然そんなわけが無い。普通にみんな利用するわ。女が男を性的に見ないとかもありえんわ。
普通に私、今のパートナーに関しては5年も一緒にいるけど未だに邪な目で見まくってるわ。(向こうはちょっと面倒くさそうだけど)普通にセックスしたいし、出会ったときも多分無意識で「この人と付き合えるか付き合えないか」を見た目も考慮して判断してたと思うし、付き合ってて時々やっぱり泣き落としとかやっちゃうときあるわよ。ごめんて。昨日もケンカしたけど、最後私がびえーと泣いて何かウヤムヤになったわ。ほんとそれは申しわけない。
でもやっちゃうんだよ。仕事辞めてきたりしたら腹立つし、年中ジャージとTシャツでいるパートナーのことを「こいつマジで服装何とかしろよ…」と思うし、なぜか格安で買えたヴィトンの財布にマイナンバーカードと免許証とレシートを大量に突っ込んでびろびろにさせて、小銭入れるケースを持ち歩かないから鞄の中にそのまま小銭放り込んでるのとか見たら「なんやねんこいつは」と思うわ。
うちのパートナーはそこそこ男前なので、ヒゲを綺麗に剃ってるときは「やっぱエッチやな…」とか思っちゃうわけですよ。
私は全然化粧しないし、たまに寝癖ついてるし、別に可愛くもないんだけど。そしてそのことについて、パートナーに決して文句は言わせないんだけどさ。
だからパートナーには「ちょっと無精髭なんとかしなよぉ」とネチネチ言っちゃうことに、私も少し罪悪感はあるのだけど。

さて、それが一部の男性からすれば、「女はずるい」ということになるんだろう。
「あんた自分のことは棚に上げて、『女性差別だ』って俺たちには言うくせにさぁ……」と。
けど、むしろその一見「ずるそう」に思われる女のことを真剣に見つめて、なにがどうして「ずるそう」に見えるのか考えるところに、ジェンダー規範を打ち破るパワーが生まれるのだと私は思っている。
「ずるそう」に見える裏には、男性たちのなにか生きづらさみたいなものが投影されているかもしれない。幸い、私の周りにあつまる男性たちは、どうにかこうにか頑張って自分の「生きづらさ」とか「傷」に向き合おうとしている気がする。
「そんなふうに女性を見てはいけないとわかっているのに、なんで俺はこうなってしまうんだろうか」
多分そんな「なんで俺はこうなっちゃうんだろう」「なんで俺にはこういう生きづらさがあるんだろう、なにが俺にとって傷になっているんだろう」と真剣に考えることを抜きにして、彼らが真の意味でジェンダーとか構造的な女性への差別とかを理解することはないと思う。変わることも、ないと思う。
そして当の私たち(女性たち)自身も、「そらまぁ私らこういうずるいとこもあるように見えるかもしれないですけどね、私個人がそういう風に見えることと、構造的な不平等はまた別の話じゃないですか?」と男性に問わなきゃいけないんじゃないか。

私にとって、フェミニズムは世界を「赦す」ための最後の心の砦みたいなもので、世の中を多少マシにし、人間を信じるためのツールである。
だから目の前にいる男性がもしかしたら「変わる」かもしれないと思ったら、全力でこちらの味方につけたい。だから積極的に問う。あんたの生きづらさの原因が何であるかを。それは多分、「カノジョがいないせい」ではないだろう。
私は別に男を甘やかすつもりはない。むしろ徹底的に刺していると思う。「女が俺を認めないから」で、話を閉じるのは簡単だ。「女性差別があるってことが分かりました」で、似非フェミ男に仕立て上げるのも簡単だ。でも口ではどれだけ「ジェンダー不平等があるよね」なんて言ってても、自分の傷と向き合えていないそいつらは全然変わっていない。そんな男たちを見続けて、余計に傷つくのは当の女性フェミニストたちだ。
だから徹底的に私は問うようにしている。そうした私の行為は、時々男性に寄り添っているように見えるかもしれない。し、確かに自分も寄り添っているという自覚はある。
周囲のフェミニストからは「男に甘い」とか「もっと男女不平等の証拠を突きつけて論破せよ」とか、なんかそんなふうなパフォーマンスを求められているように思うのだが、逆に問うけどなんで「寄り添う」ことが「甘やかす」ことになるんだ?
こっちは寄り添いながら戦ってんだよ。
男女不平等の証拠を突きつけて、論破できるわけがないだろうが。私は「なんでお前はそんな生きづらいんだよ」「それって女のせいか?ほんまか?ちゃんと考えたか?もっと考えろよ、何で傷ついてんだよお前はよ」って問い続けることで、本気で彼らの鼻をへし折りに行ってるんだよ。
(今、私はジェンダーしゃべり場を主催してるんだけど)しゃべり場に来るメンズたちはホンマどうしようもない非モテだよ。もう全然上手くいってない奴らだよ。それでも生身の男性たちだ。私らフェミニストが、構造的な不平等を理解するためにおっきい主語で「男性」って言ってるのとは、また全然違うやつらが来る。
もちろんおっきい主語の「男性」を論じるのが大事になる場面も多い。私も論考を書くときにはそうしている。でもこっちのしゃべり場はそんな回じゃない。
このクソみたいなジェンダー差別のせいで、割を食ってる全員が傷を自覚し本気で「変わる」ための会なんだよ。

だからもうあの、色んなことがfuckなんですよ。
なんでフェミニストなのに揃いも揃って生身の人間を馬鹿にできるんだ????
私がおかしいか?「甘い」のか?
ちゃうもうなんやねんマジで。こっちは遊びでフェミニストやっとんちゃうねん。フェミニストで、でも自分の生きる世界が好きで、自分と関わった人をフェミニストでもそうでなくても同じように大事にしたくて、だからこそ男性たちにも本気で変わって欲しいしできることなら馬鹿にせず見くびらず生きたい私がおかしいんかい。
なんやねん「非モテ男性ってモテる努力もしてないくせに全部女のせいにしますよね」って。なんの努力やねんそれは。マジで。そういうのは「できれば女性を傷つけずに変わりたい」と思ってる男性にかける言葉ちゃうてよ。

でも一方で分かっとるねん。
もう私があまりにも「こいつほんま腹立つ気が合わん」とか思ってるフェミニストも、多分自分が受けてきたうんざりするような異性からの視線とか、偏見とか、被害とかの、裏返しでそうなってるんやろうなと。
そうした彼女たちの生き方を否定したいわけじゃなく、そしてまた彼女たちが本当に「男」への信用を取り戻し、「男なんか全員キモくて信用できない!」というトライアンドエラーの果ての傷つきから解放されるためには、まさしく「男」が「変わる」瞬間を見せなきゃいけないのだと思う。逆に言えばその瞬間まで、多分私のこの悩みなんか理解されることがない。向こうからしたら「シスヘテロで初めて付き合った男性がフェミニズムに理解ある人で大切にされて、DV親父とも絶縁できて、周りもそんなやばい男がいなかった特権的な女が何か言うてら」くらいにしかならんと思うし、まぁまぁ自分でもそう思うわ。
だから私の愚痴は完全に行き場がない。すみません、めっちゃ愚痴でした。(完)

追記
でも一応、「理解あるパートナー」との関係は5年もかけて愛して戦って丁寧に築きあげたものなんですけどね!?!?!?
付き合い始めた当初とか、友達から大不評でしたけど!!!!「みみ先輩って絶対カレシ顔で選びましたよね(笑)」とか後輩に言われたくらいでしたが何か!!!!!

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