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小沢健二 ‘24ツアー Monochromatique@名古屋

⚠️この記事にはネタバレが存在します。
これから東京公演に行かれる方は読まないことをオススメします⚠️

 GWの隙間、5月1日に小沢健二 ‘24ツアー Monochromatique(モノクロマティック)の初日、名古屋会場(@名古屋国際会議場 センチュリーホール)に参戦してきた。

 日本の人口の4分の1、非昭和生まれである私が小沢健二にハマったのはここ2〜3年のことであり、今回がLIVE初参戦。チケットを取った年始からワクワクしまくっていて、宇野維正「小沢健二の帰還」(岩波書店)をはじめ、数々の記録やサブスクにないアルバム(犬キャラ、球体の奏でる音楽)も辿り、万全の用意で挑んだ。

 また、この記事ではサラッと流してしまう箇所もあるため、ライブの全体的な流れについては以下のページを参照してほしい。

開演前

当日:会場に着くまで

 名古屋会場の物販は第1次販売が13:30〜。ライブの行われた5月1日(水)はGW中とはいえ扱いとしては平日。それゆえ私は午前中は自身の生活を優先し、第2次販売に行ってグッズを買おうかな〜と考えていたが、Xwitterを見ていると、「完売」との情報が。即座にグッズを買えないであろうことを理解し、飲み込み、潔く開場ギリギリまでゆっくりすることを決意。
 全身を黒・灰・白のグレーモノクロマティックで包み、いざ家を出発。

今回のツアーのドレスコード
(小沢健二 Xwitterより)

会場着

 開場(17:30)ギリギリに会場に到着し、周りの皆さんのモノクロマティックコーデを観察した。

ひみつ小道具の配布

 開場時間になると、イベントホールでひみつ小道具の配布が始まり、四角い缶バッグを持った人がたくさん出てくる。私も列に並び、ひみつ小道具を入手。中には、ネクタイホイッスルが。ホイッスルを組み立て、ネクタイを結び、いざライブへ。

開演

 小沢健二が書いたであろう文章を、影アナが平たく読むという、ミスマッチなアナウンスから、いよいよライブが始まった。

1〜2曲目

 まずライブは「フクロウの声が聞こえる」で始まった。オザケン自身、「長男の視点で書いた」「強くインスピレーションを受けたんだと思う」と語っており、本人にとっても大切な曲であることがわかる。
 途中、配られたホイッスルの音量調整や吹くタイミングの話などをしたり、オザケン側から立ち上がり、一緒に歌うように呼びかけがあったりした。そして、曲の中盤あたりにさしかかると、「天使たちのシーン」が始まった。
 実は私がこのライブで最も聴きたかった曲がこの2曲であり、この時点で私は号泣していた。右隣のお兄さんも私と同じ熱量で号泣しており、左隣のお姉さんは静かに泣いていた。きっと他のみんなもそうだっただろう。そして、私たちはみんなでこう歌った。

愛すべき 生まれて 育ってくサークル
君や僕をつないでる緩やかな 止まらない法則

天使たちのシーン/小沢健二

 確かに私たちはひとつになっていた。ひとりではない確信と喜びがあった。
 そして曲は再び「フクロウの声が聞こえる」へと戻り、私は叫びともとれるような声でこう歌った。

ちゃんと食べること 眠ること
怪物を恐れずに進むこと

フクロウの声が聞こえる/小沢健二

 「怪物を恐れずに進むこと」
それはいま私が必死に戦っていることだった。この一節は今の私にとって"マントラ"といっても良いほど、勇気を与えてくれる言葉である。あの会場で、小沢健二は私たちに向けて、確かにそう歌い、私たちもみんなで、そう歌った。

 そして何より、効果的だったのは会場で配られた「ホイッスル」であった。
 マインドフルネスには、「葉っぱのワーク」などと呼ばれる技法がある。それは浮かんでくる思考や感情を川の上を流れる葉っぱに載せ、流れていくのを観察するというものである。
 この時、私たちは日頃の、人生の苦しみをホイッスルに吹き込んでいた。けたたましく鳴り響くホイッスルの音は私たちの叫びだった。そして、その息・音と共に私たちの苦しみは身体から離れ、私たちは"マインドフル"な状態になった。この2曲があったから、この後のライブを楽しめたのだと後になって思った。

3曲目

 マインドフルになった私たちは「LIFE IS COMING BACK!」と愛を叫んだ。(ラブリー)
人生を、人々を、愛し、讃えた。

4曲目

左へカーブを曲がると光る海が見えてくる
僕は思う! この瞬間は続くと!
いつまでも

さよならなんて云えないよ/小沢健二

 愛を叫んだあと、美しさを歌った。
マインドフルになったからこそ、心の底から人生の喜びを受け止められた。

6曲目

 モノローグと5曲目「運命、というかUFOに」を挟み、6曲目には「台所は毎日の巡礼」という新曲が披露された。この曲に関しては後述する。

15曲目

 スチャダラパーによる「サマージャム'95」や、2つの新曲「魔法がかかる夜、大阪にいる」「輝夜神楽」が披露され、ライブも終盤に差し掛かり、会場のボルテージも上がりきったあたりで、「強い気持ち・強い愛」が演奏された。

 気がつくと私はこの記事で「私たち」という言葉を多用していた。周りの友人に「最近小沢健二にハマってて…」と言っても「誰?」という反応ばかりで、いつも1人で聴いていた私と同じ会場に、たくさんのオザケンファンがいて、一緒に盛り上がっている環境に心からの喜びを感じた。私は確かに1人でライブに参戦したが、間違いなくひとりではなく、みんなと一緒だった。
 そして、私たちはこう歌った。

今のこの気持ちほんとだよね

強い気持ち・強い愛/小沢健二

17曲目

 スチャダラパー×小沢健二による「ライツカメラアクション」とそのライブ配信を終え、会場の全員が待ち望んでいたであろう、"あの曲"が始まった。

ダンスフロアーに華やかな光
僕をそっと包むようなハーモニー

今夜はブギー・バック/小沢健二×スチャダラパー

 きっとこの曲は会場にいた多くの人にとって、青春の曲なんだろう。先述した通り、私は非昭和生まれ、どころか21世紀生まれの人間なので、この曲が流行していた当時のことはあまり知らないが、「よくなくなくなくなくなくない?」と会場全員でコールした時、ものすごい多幸感に包まれた。この曲が誕生してから今年で30周年。一度は表舞台から消えてしまった小沢健二が、再びこの曲を歌ってくれることは、ファンにとってはこの上ない喜びなのだろう、と思った。
 
 最近AKB48から、ゆきりんこと柏木由紀が卒業した。神7のいたAKB48の全盛期から最前線で活躍し続けていたメンバーで、「今のメンバー誰も知らない」と言われるAKB48の中で「ゆきりんだけはわかる」と、最近では、非オタクとAKB48を繋げる架け橋のような存在となっていた。そのゆきりんと同じ3期生で、神7の1人である、まゆゆこと渡辺麻友は2020年に芸能界を引退し、現在は表舞台に出てきていない。過去の動画のコメント欄には、"まゆゆ亡霊"とでも言うべきか、彼女の復活を待ち望むファンがたくさんいる。
 そのまゆゆが、もし将来、かつての小沢健二のように10数年越しに復活するなんてことがあったら、私は全力で「超絶かわいい まゆゆ!」と叫ぶだろう。そんなことを考えた。

18曲目

 6曲目に披露された新曲「台所は毎日の巡礼」をみんなで合唱した。
 「愛」「人生」などマクロな「生活」について歌っていた小沢健二は、「料理」のようなミクロな「生活」について歌うようになった。
 最近小沢健二はラジオの中で、息子の弁当を作っていることを話していた。この曲もきっと、そんな日常の中から生まれたものなのだろう。

アンコール

 アンコールは「彗星」で始まった。

今ここにある この暮らしこそが
宇宙だよと
今も僕は思うよ なんて奇跡なんだと

彗星/小沢健二

 一度は表舞台から去った小沢健二が、こうしてまた私たちの前で、その暮らし、生活、人生を肯定してくれること、本当に良かったと思う。だからこうして私がオザケンに出会い、会場のみんなと出会うことができた。

 そしてさらに数曲演奏した後、最後の曲は「ぶぎ・ばく・べいびー」

ロマンチックなのは変わらないから
笑う 愛す
まるで90年代の夏のように

ぶき・ばく・べいびー/小沢健二×スチャダラパー

 過ぎ去った90年代を噛み締めながら、この先も生活は続いていく。

生活に帰ろう

 今回のライブで小沢健二は「最高」「楽しい」といった言葉を繰り返し発していて、最後もBOSEと肩を組み、スキップをしながらウキウキでステージを去っていった。が、肝心の"アレ"を忘れており、慌てて戻ってくると、みんなでカウントダウンをして、彼はこう言った。

「生活に帰ろう」

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