杉中洋成
関西学院高校部の卒業アルバムを見直している。
アルバムの最後の方に、一人一人が言葉を残している。
18 歳だった悪友が残したメッセージは、
「天上においては、最上の星を、
地上においては、最高の快楽を求めよ」
きょうびの高校生と比較して、たしかにマセていた。
そう書き残した男は40歳を目前に、私を置き去りにして、先に天に……昇ったのか地獄に落ちたのかは知らないが……とにかく勝手に逝ってしまった。
奴が卒業アルバムに記した言葉は、おそらくオリジナルではなく、どこかからパクった言葉に違いない。
奴のオリジナルらしきものは、実は別にあった。普段からしょっちゅう口にしていたこの言葉である。
「俺は、畳の上では死なない」
「俺の理想は、野垂れ死にや」
そして、
「40歳の俺は、この世に存在しない」
自殺ではなかった。
フロリダで、セスナの単独練習飛行をしている時、おそらくくも膜下出血で意識を失い、そのまま沼地に墜落したのだ。
人生とは……この世界とは……いったい何なのだろう? と考える。
奴は自分の運命を知っていたのだ。
人間としては、まだまだひよっこだったはずの、高校生の時から……。