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ジンギスカン

 2018年3月。コロナが流行るずっと前、三密なんてまったく問題がなかった懐かしい時期。

 長門の"ホテル西京"で講演をした帰り山口のスーパーに寄ると、なんとジンギスカン用のラム肉が半額になっているではありませんか。

 私は1パック 170gのを迷わず3パックカゴに入れました。
 でも、
「ちょいと待てよ…今夜この3パックを焼いて食うたらそれでしまいや、せっかく安いわけやから、もっとこうて、それでラム肉カレーを仕込もう…そうや、よしあと2パック追加! ウリャ!」

 と、その私の爆買いの様子を見ていた見知らぬお姉さん…いや…ちょいオバさんが、なんとアカの他人の私に声をかけてきたのです。ナンパやないですよ。

「ラム肉…臭くはないですか?」と……。

「はあっ?」
 それで私は逆にたずねました。

「食べたことないんですか?」

「はい、一度も」

「羊ですが、マトンではないし、ぜんぜん大丈夫ですよ。でも気になるようなら焼く前に1時間ほどジプロックにいれてパイナップルジュースに漬け込んでおくんですよ、でもなぜかここのスーパーにはパイナップルジュースを売ってへんのです。だから代替え品でオレンジジュースでもええです。もちろん100%のやつ。そうすると肉もより柔らかくなり、ニオイも消えて、そこらの牛や豚よりずっと美味いですよ」

「タレは、焼肉のタレで大丈夫ですか?」

「ホンマはジンギスカン用のがありますけど、普通の焼肉のタレでも大丈夫ですよ」

「何かほかに気をつけることとかは……?」

「そうそう、とにかく焼き過ぎんようにするのがコツです。ラム肉は…豚は論外ですが、鶏肉よりも牛肉よりも、生の安全性が高いんです。だから、ミデアムで食えますから」

 私の説明を聞いて、その女性は半額のラム肉1パックだけをカゴにいれはりました。
 まずは少量で試すんでしょうね。

 そやけど、店員でもないワシが、なんでこんな親切丁寧にレクチャーせなあかんのか、サッパリわかりません。

 あっ、そうか?
 講演で講釈をタレた帰りやから、きっとまだカラダに講釈グセのオーラが出てたんでしょうね。ついでにタレも。

 ホンマは私も憧れますよ。

「男は黙って、サッポロビール」みたいな渋いキャラクターに。

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