夏子の酒
日本のコミック(漫画)の水準は、ほんまにめちゃくちゃ高いと日ごろから感心しきりでございます。
先日、一週間ほどの音楽合宿のために来佐(佐々並に来ること)した、東京のミュージシャン。齢(よわい)25才の聡明なる美女が、
休憩時間に音楽堂の書棚から引っ張りだして読んでいた本が、「夏子の酒」でした。
私が「夏子の酒」を読んだのはもう10年以上も前です。
その頃の私は漫画喫茶のプロデュースを生業にしていて、世界有数のゲームメーカー8社と、大検察庁から目をつけられていたのですが、そんなこととはつゆ知らず……。
とにかく、
「夏子の酒」全12巻 完結 は、漫画喫茶の必須アイテムでした。
さて、美女につられてなんとなく読み進めると、涙が出る出るのです。しかもこんこんと。
一巻で平均5回は、すすり泣きました。
「えっ? そんなに泣く箇所がありますか?」
と美女は不審がりますが、お涙ちょうだいではなく人間の崇高なる決意や営み、優しさや厳しさの表現に私は涙がちょちょぎれるのであります。
もちろんそれとは別に、この国の悪政。 農協の大罪。 田舎の農業従事者の無気力、無関心、無責任さ。
そして酒業界の堕落と衰退などの辛口な内容が、次々と展開されます。
しかしこの「夏子の酒」の中に書かれている様々なキーワードが、酒や米づくりに限らず、音楽にもピッタリと重なるのです。
「良い酒とは、造りがいい酒」
「昔の農業は貧困との戦いだったが、今の農業は、贅沢との戦いだ」
「造り手のこだわりを、消費者に押し付けるのはよくない」
などなど……数えあげるとキリがありません。
本当に、役に立つ知識や考え方を「夏子の酒」からたくさん教えてもらいました。
さて、残念なのは、私がほとんどお酒が飲めないことであります。
ビールだと、お好み焼き屋にある三ツ矢サイダーのグラス一杯が致死量です。
主人公の夏子と正反対で、きっと私はアルコールを分解できない特殊体質なのだと思います。
日本酒の芸術性を味わえない私は、この歳になると、これはこれでめっちゃ悔しいのです。
人知れずこっそりチャレンジしようかと、ウジウジしている最中であります。
いずれにせよ、父親が絶対に見つけられないところに隠さなあきません。
以前、認知症やからとなめて、えらいめにあいました。
急な予定変更で帰宅した時に、納屋の奥から掘り出した古い酒に手を出し、かつ、とっさに嘘をつくろう……見てはいけない妖怪のような、みじめで意地汚い父親の姿を発見した時の衝撃はいまだに忘れられません。
実はその時の異常なストレスがひきがねとなって、私の右目の眼底出血が勃発したのです。
さて、ガチガチの保守、バリバリ インサイドの人が、よく痴漢や暴力行為で逮捕されることがあります。
その場合、酒で理性を失っているケースがほとんどです。
記憶もとんでいたり……。
酒を美化するのは、怖いです。
でも、
「夏子の酒」は、味わい深くて羨ましいのであります。
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