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福知山線脱線事故
私には、興味の対象においてその時々にブームがあります。まさに究極のマイブームです。
先日、生まれ故郷の尼崎に立ち寄ってからずっと《福知山線脱線事故》が頭から離れません。
YouTubeなどにもたくさん関連する動画が上がっていますが、まずは公的でオカタイ「調査報告書」に目を通しました。
そこで私が引っかかった点。それは私が大嫌いな「クレーマー」でした。
福知山線脱線事故では意外と見落とされがちなこのクレーマー。法的なことは別として、めっちゃ腹たちます。
調査報告書の中の車掌の供述をわかりやすい言葉にかえて記します。
「……伊丹駅を出発したときは、1分半か、せいぜい2分位の遅れでした。すぐに『次は尼崎…尼崎…』と放送したら、運転士から、『電話機にかかれ』の車内合図があったので、そのあとのアナウンスを止めて車内電話に出ると、運転士が『まけてくれへんか』と言ってきました。
これは、さっき伊丹駅でオーバーランした距離を、実際よりも少なく報告してくれという意味だと私はすぐにそう推測しました。
そこで私は、少し考えてから『だいぶと行ってるよ』と答 えました。
そのやりとりの途中、乗客の1人の男性が客室と運転室との間を仕切るガラスを『コンコン』と叩いたので、とりあえず車内電話の受話器を戻し、客室と運転室との間の扉を開けました。
あとから考えたら、このとき運転士は……彼には列車最後部の様子が分からないので、
★『一方的に電話を切られた。車掌(私)が怒っている』
と思ったかもしれません。
私が扉を開けるとその乗客が、
『なんでお詫びの放送せーへんのや、遅れてるのに、あやまらへんのんか』
と文句を言ったので、
『今 やろうと思ってました。今から放送しますのでちょっとお待ち下さい』
と言 ってから、私はお詫びの車内放送をしました。
その後列車無線で総合指令所へ、伊丹駅到着時に所定停止位置を行き過ぎたこと及び、それにより本件列車が遅延していることを報告しました。
自分としては、行き過ぎた距離が30~40mと思っていました。
実は5m程度なら処罰が厳しくないと聞いていたのですが、さすがに5mではあまりに少なすぎるので、『8m』と、私は輸送指令員にごまかして報告しました。
知らん仲ではないので、運転士のためになればと思いそうしたのですが、その時はこれがあとで虚偽報告としてばれるということなど、まったく考えませんでした。」
さて、上記の、★『一方的に電話を切られた。車掌(私)が怒っている』と解釈した運転士が、また後日会社で厳しく執拗に罰せられる(日勤教育のペナルティ)と思い、自分で自分を追い詰め、そのためにパニックに陥りブレーキのタイミングが遅れたのではないかという可能性が高いのです。
歴史に「もしも」は無意味かもしれませんが、このクレーマーがいなければ、もしかしたら事態は変わっていたかもしれません。
ちなみに車掌が居たのは最後尾車輌である7輌めで、その車輌からは死者はひとりも出ていません。つまりクレーマーのオッさんは、ほぼ無傷で知らん顔して難を逃がれているのです。
この広い世の中に、身に覚えがあるオッさんが必ず潜んでいます。
もしもそれが私なら、それこそ良心の呵責に耐えきれず、一生涯悩み続けるに違いありません。
軽率なクレームが、もしかしたら407名のかけがえのない命に重大な影響を与えたかもしれないのです。もちろんあくまで可能性であり、また間接的ではありますが……。
福知山線脱線事故のような大事故は、そもそも様々な偶然が重なりあって、それこそ「魔の時」の作動によって起きるケースがほとんどです。
しょうもないことでわざわざクレームを入れるようなスケールが小さい人間にだけは、私は決してなりたくないです。