手術の前日
2014年9月4日
夕方、明日の手術を間近にした、教授の診察があった。
「久保さん、あした、頑張りましょう」
「わし、何を頑張りまんねんな? わしはあんた、生きる気満々でんがな。 頑張らないかんのはあんさんでっせ、ホンマに、しっかりたのんまっせ」
「わかりました〜おやかた」
それから、ついさっき、詳しい手術の説明があった。
「最初にうっとおしい、レンズを先にはずします。
まだまだ白内障はゆるいんですが、手術したらそのあと、てきめんに悪化して曇るので、
ついでに白内障も一緒に今回やっちゃいます。
けど、人工レンズは最後に入れます。
前がない方が、外から中が見やすいんですわ。
それから、白眼の脇から、二三本、細い管を、刺しこんで、トンネルつくってやねえ、
そこに、ライトやカメラやら、いろいろ入れて中を見ながら、汚れた中身をぬいて、洗ろうて、出血と浮いた血管をレーザーで焼いて、
最後にまた人工のゼラチン詰めて、ストローぬいて、開けた白眼の口を縫うて、そんで終わりですわ」
「白内障ではずしたレンズいれなあきませんやん?」
「あっ、忘れてました」
「そんな大事なこと、忘れたらあかんがな」
「本番では忘れませんよ、とにかく簡単でっしゃろ?」
「どこがやねん?」
「いや、正直ゆうて明日やる手術の中で、久保さんが一番おおがかりなんですわ。なんせ目の手術で1時間半ですさかいにね」
「まあ、好きにしいや」
「へい、好きにやらせてもらいまっさ」
「あのな、ゆうとくけどな、死ぬのんは怖ないけど、失明するのんと痛いのんは、あかんで」
「了解しました」
「ほんまかいな〜」