パーフェクトでないこと
ロスアンゼルスに生まれたノーマ・ジーン・ベイカー。
彼女の父親は行方知らずで、母親も祖母も精神を病んでいたため、幼い頃からながく施設などを転々とし、ろくな教育を受けないまま育ちました。
やがて16歳で自立して、生きるために最初の結婚をし工場で働きだします。
普通の主婦だった彼女は、その後ひょんなきっかけで、モデルを経て女優になろうと決意します。
なんのコネも実力もない、女優に憧れる世間知らずなちょっとオツムの軽い女の子だった彼女は、それでもどこかでチャンスをつかもうと、ハリウッドでヌードモデルやコールガールをしながら、必死になって底辺の生活を続けました。
当時を振り返って彼女はこう述べています。
「もし私がすべてのルールを守っていたら、成功なんてしていなかったでしょうね」
でも私が注目するのは、彼女の一生の中で、最も貧しく困難だった時代であったにも関わらず、俳優養成所学校に通うお金だけは、食費を削ってでも残し、よりよい演技につなげるための投資を惜しまず、常に自分を磨き、学び、そこに情熱を傾け続けたことです。
たとえば「自分のボディを魅惑的に見せるためには?」
そのためにウェイトリフティングやジョギングを行い、『人体解剖学』を図書館で読みふけり、骨格、筋肉、ポージングまで独自に研究を重ねていました。
さらに内面的な魅力を醸し出すための知性や感性を得るために、今までの自分と最も遠くにあった文学作品を読みあさりました。
彼女は常に無学だというコンプレックスを持っていました。けれどもそのことがバネになって、逆に彼女を大きく飛躍させたのだと思います。
いま山口あたりで、たとえば音楽なんかをこころざしている人で、彼女と同等の努力を、バカみたいにしている人に、残念ながら私はほとんど出会ったことがありません。
そんな人はみんな山口以外に住んでいるんですよね……なぜか。
もちろんそれはたまたまであって、まだ私が山口で出会ったことがない人の中に、きっと居ると信じたいのですが……。
いくら地元の人にたずねても、頭から居ないと否定されるのは、山口という土地が持つ悪しき土壌か何か? 原因は不明です。残念なことです。
そらそうと、
「人に偉そうに言いながら、オマエはどないやねん?」
というご指摘は、いくら我が家に棚が多いといえ、ごもっともなことでして。
そやけど、言うときますけど、わたくし……こないみえても……長い人生の中で今が一番、貪欲に勉強してまんがな……マジで、バカみたいに。
最後に、ノーマ・ジーン・ベイカーは、女優として大成功したあとに、こんなことも言っています。
「"パーフェクトでない”というのは美しいことよ。熱中するのは正直な気持ちから生まれるものだし、まったくバカげているほうが、つまらない人間でいるよりマシだわ」 マリリン・モンロー 。