手術のプロローグ
病室で車椅子に乗せられ、点滴をセットし、右肩に筋肉注射。これは、実に痛い。
血圧をはかれば、なんと208。これは自己新記録。
緊張感ピークとの事。
我、叫ぶ!
「俺は無実や、俺は殺してない。犯人は他におる!」
暗い通路を抜けて、手術者専用エレベーターにはいる。
このエレベーターのデザインは、なぜか、
棺桶の焼き場によく似ている。気のせいか。
エレベーターはどんどん下がり、やがて地下で止まる。
そこは、まるでショッカーの秘密基地、
我、強がって、サンダーバードのメロディを口ずさむ。
♪ チャッチャカチャー
チャラランラン
チャッチャカチャッチャッチャー
それから散髪屋の椅子に移動。
眼や顔を洗ってもらう。
少し染みる。
右眼だけを残して、顔を布が覆う。
全部覆えばすぐに仏になれそうだ。
オペスタッフ集合、
教授が訓示を述べる。
「今から、久保研二さんの、白内障及び網膜硝子体手術を行います。
よろしくお願いします。
全力を尽くして頑張りましょう。」
皆が揃って、「ハイ」と、力強く答える。
そこで想定外の患者の言葉
「とにかく今日は、初歩的なミス、いわゆる、ポカミス、凡ミス、うっかりミスだけは避けて、まずは基本に忠実に……手堅く頑張りましょう」
オペ室、なぜか異例の大爆笑。
教授
「そのとおりです。それでは、始めましょう」
まずは、麻酔、注射ブシュッ!
これが、手術のプロローグ。
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