エッセイ ビールを飲む
私は、本来アルコール類とは縁がないのだが、自分で漬けこんだ梅酒と養命酒は、食前に、たまに飲む。大事にチビチビと。
けれども夏の夕食には、どうしてもシュワシュワするものが恋しくなるので、普段は味がないストレートの炭酸水を飲むのだが、ふと、アダルトな誘惑に誘われて、ビールっ……ちゅうものを、チョビッとだけ、舐めてみようかな…なんて思うわけであった。
私はビールの美味さはよくわからないのだが、ノンアルコール ビールのクソマズさは、わかってしまうから都合が悪い。
もともと、ビールが苦手だったのには明確な理由がある。
私がずっと育った、いわゆる、アマ(兵庫県尼崎市)にある、まさに国鉄尼崎駅 の北側すぐに、昔はキリンビールの工場があって、風向きによってはホップの匂いが小学校の校庭にまで流れてきた。それがまた微妙にクサくてたまらなかったのである。
まあ、そんな私なのだが、このたびスーパーで、つい手にとって買ってしまった。
「ビールって、意外とええ値段するんや」
ラベルの文字は、
「キリン プライム……山口に乾杯……
山口県の誇りを美味しさに変えて……
一番搾り」
こういう企画は嫌いではない。
ビールなのに、案外美味かった。
しかしこのビール、神戸の新開地や花隈あたりでは、シャレにならないネーミングなのだが……。