見出し画像

運動後のクーリングダウンは必要か?


クーリングダウンの目的と効果


①運動後低血圧・心筋虚血・不整脈の予防

 有酸素運動を急激に中止すると、それまで運動による筋肉のポンプ作用で心臓に送っていた静脈還流量は急激に減少します。そのため心臓は激しく鼓動していましたが、血流が少なくなるため、空うち状態となります。加えて、急激な副交感神経の再活化による心拍数の低下や1回拍出量の低下も相まって、心拍出量は低下します。
 一方で、運動中は骨格筋への血流配分や体温上昇の影響で末梢血管抵抗は低下した状態であり、運動直後にもすぐには安静の状態には回復しません。
 その結果、運動直後の過剰な血圧低下や心筋虚血、不整脈が惹起されると考えられています。
 クーリングダウンには、運動直後の循環動態の変化を緩徐にし、これらの悪影響を予防する効果が期待できます。


②乳酸除去の促進

 クーリングダウンとして有酸素運動を行うのと、マッサージや安静にするのとで運動後の乳酸除去率を比較した研究では、有酸素運動を行う方が乳酸除去率が高い結果でした。理由として骨格筋への酸素運搬の増加による乳酸の酸化や、血流による洗い出し効果などがあげられます。

乳酸:筋肉でエネルギーを作るときに糖が分解されてできるもの。



クーリングダウンの方法は?


 低強度で5~10分程度の有酸素運動を行います(ゆっくりとしたウォーキングなど)。心機能の低下した重症患者、高齢者などは長めのクーリングダウンも有効です。
 一方で高強度運動やレジスタンストレーニングによる乳酸などの代謝産物の除去や筋肉痛の予防においては、中強度の有酸素運動(ジョギングなど)が効果的です。



まとめ


 クーリングダウンは、運動後の低血圧、心筋虚血、不整脈の予防や運動による代謝産物の早期除去のためにも必要です。クーリングダウン低強度から中強度の運動を5~10分行うことを基本とし、高強度運動後、心機能の低下した重症患者、高齢者などではより長めに行うことも考慮します。



引用文献

Lactic acid removal rates during controlled and uncontrolled recovery exercise A. N. Belcastro 1975

心臓リハビリテーションQ&A 医歯薬出版株式会社 2018

いいなと思ったら応援しよう!