上手いことを言っているようで実際そうでもない

僕ね、本を探すのがすごく下手なんですよ。

一冊の本を探すのに一時間以上かかることなんてザラにあるし。

目当てのものを事前に調べて、題名、作者、表紙はもちろん背表紙のデザインまでしっかり把握しているはずなのに、何故か見つからないんです。

例えば、白い背表紙に黒字で題名が書いてある本を探しているとするでしょう。

僕は目を凝らして、必死でそれらしきものを探すんです。

2、3周しても全然見つかりやしない。

全く、どこに隠れているんですかね。

諦めた矢先、頼みの綱である検索機に惑わされる事もしょっちゅうですよ。

あいつら、まともに位置情報を出すことなんかほとんど無いんだから。

まあ、僕が地図を読めないだけなんですけどね。

その上この性格だ、店員さんに声をかけることすら出来ない。

つい先日本屋に行った時、どうしても見つからなくて、勇気を振り絞って声をかけたんです。

そしたら淡々とした感じで「ああ、ここにありますよ。」って。

その時僕は全然違う本棚を探していました。

トラウマですよ。

でも、本を探すのが下手で良かったこともあるんです。

自分が思ってもみなかった、新たな出会いがありますからね。

普段なら全く興味を示さないようなものも、何故だろう、本棚に置いてあるとすごく魅力的に見えるんです。

買っただけで満足してしまうこともしばしばですが。

それに、僕はそこで本よりも大切なかけがえのないものを得ましたから。

僕が初めて声をかけた店員さんが、今の妻です。

彼女が働いていたのが古本屋だったもので、検索機なんかも置いていなくてね。

本が見つからない代わりに彼女を見つけましたよ。

出会って4年のなんでもない日に、机の上にゼクシィを置いておきました。

晴れて彼女と"本"契約。なんつって。