旅は道連れ 世は情け
「俺、近々旅行に行こうと思ってるんだ」
「お、いいねえ。どこに行くんだ?」
「まだ行き先は決まってないんだけどさ。どこがいいかな?」
「うーんそうだな。あ、この季節だし、富士の樹海なんでどうだ?」
「この季節の意味が分かんないよ。」
「暑くなってきたし、涼むのにもってこいだぞ?」
「あそこ一度入ったら出られないっていう噂じゃないか。お前は俺を殺そうとしてるのか?」
「うん。」
「え?」
「だから、そうだよ。」
「……え。お前、俺の親友だよな?」
「改めてそう言われると照れちゃうなあ。」
「照れてる場合か。なんで殺そうとなんかするんだよ。」
「親友だからこそ、だよ。」
「どういうことだ?」
「親友である以上、俺はお前に幸せでいてほしい。」
「うん。」
「なるべくなら、危険な目には遭わせたくないんだ。」
「……。」
「だから、死んで欲しい。」
「おい待て。」
「どうした?」
「どうしたもこうしたもない、俺が死ぬっていうことは、俺が危険な目に遭うということじゃないか。」
「富士の樹海に行くのは別に危険じゃないぞ、歩くだけだからな。」
「それは自分で行ってから言えよ。」
「行ったよ。」
「行ったの!?」
「別に普通だった。ちょっと頭痛がしただけで。」
「それ普通じゃないよ。」
「一応病院には行ったよ。」
「病院よりお祓い行けよ。」
「写真撮ったらなんか白い影みたいなのが写ってたけど。」
「それも普通じゃない。」
「インスタにあげたから見てみなよ。」
「嫌だよ!」
「ほら、俺の頭のあたりに影があるだろ。」
「笑えねえよ。」
数ヶ月後、親友は死んだ。