お父さんは風俗嬢?!:4
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撮影スタジオはちょっと年季の入ったマンションの一室だった。
古めの集合住宅にありがちな無機質なスチール性の重いドアを開けて中に入ると、ドアの内側にある新聞受けの緩んだ留め金が外れて内蓋が思いっきり開きドアに当たり鈍い大きな金属音が部屋中に響いた。
「あ、すみません。すぐ外れちゃうんですよそれ、気にしないで奥まで入って来ちゃって下さい。」
少々聞き取りづらい早口の高い声が奥の部屋から聞こえてくる。
「奥」と聞くと結構なスケール感に聞こえるけれど、距離にすると玄関から4m程度先にあるこれまた年季の入ったガラスの引き戸の先が「奥の部屋」だ。
玄関に立つ僕の右手眼前には小さなキッチン流しがあり生活感あふれるアイテム類が積み重なっていた。
「えーと…、こちらパンギャラクティックフォトスタジオさんで間違いないですよね?」
あまりにも僕のイメージしていた撮影スタジオとかけ離れた風景を前に思わず僕は確認の声を上げた。
すると奥のガラスの引き戸が建て付け悪そうな音を立ててゆっくりと開き、中からモソモソと女子が現れた。
無造作にまとめた大きなお団子ヘアに丸顔、太めの黒縁メガネ、身体の線は細いけれどやたらと目ヂカラの強い…ひと目で何かしらのヲタク気質を持ってるであろう事が容易に想像出来るルックスの女子であった。
「パンギャラフォトで合ってますよ〜♪、自宅兼スタジオって初めてですか?最近多いんですよ。あなたがヘアメイクの塁さん?初めまして!私チコって言います。ここのオーナーカメラマンで今日撮影の5人のうちの1人です。よろしくです〜♡」
のっけから情報量が多い💦
話を整理すると、、、
・今日の仕事場「パンギャラクティックフォトスタジオ」は1DKの年季の入った自宅兼スタジオ
・ここのオーナーで本日のカメラマンの名前はチコさん
・チコさんはニューハーフヘルスのコンパニオンもやる
と、言うことらしい。
良く見ると無造作に束ねた大きなお団子ヘアは解くと腰まで届きそうなロングヘアを有している事は容易に想像出来る。
今日仕事するニューハーフ枠3人のうちの1人と言うことか…
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「ユリさんは新人連れて11時に来るそうです、それまでに私の撮影しちゃいましょ♪ちょっと着替えてきます。」
「ユリさん?」
当たり前の様に発せられた初めて聞く名に思わず聞き返した。
「え?、…あぁ、ユリは紗理奈さんの源氏名ですよ、源氏名って言うのは風俗従事する人が名乗る仮の名前です。やっぱり本名とか通り名って特別ですからね、日常とお仕事は分けて考えるのが普通ですよ。えっと、紛らわしいから今後の呼び名は源氏名で統一しましょう♪」
なるほど源氏名か…そう言う世界なんだな〜と思いつつふとチコさんの源氏名が気になった。
「そしたらチコさんの源氏名は何て言うの?」
「え、私?!チコですよw」
「あ、そうか、既に源氏名で名乗ってくれてたんですねw、ちなみに普段は何て名乗ってるんですか?」
「え?、チコですよw、そのままチコw、元々ギャグみたいな通り名なので特に変える必要性はないかな〜…ってw、ちなみに戸籍上の本名は龍之介ですw」
自分の通り名を『ギャグみたい』と言い放つ本名龍之介君はそう答えながら天井から垂れ下がるホリゾントの裏手に消えて行った…
そうか、そこが更衣室代わりなんだね(; ^ω^)スゲー
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