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町民の願いをのせて。設計者選定プロポーザル一次審査レポート

中井町があらたにつくる生涯学習施設。「わいがやサロン」でまとめた町民の声、「基本構想(案)」「基本計画(案)」をもとに、2024年12月から設計者選定プロポーザルがスタートしました。このnoteでは、町民の皆さまの思いがどのように設計へとつながっていくか、引き続きそのプロセスをお伝えしていきます。

一次審査の概要

12月3日(火)に、生涯学習融合施設(仮称)基本・実施設計者選定の公募型プロポーザルを公告した中井町。12月24日(火)まで公募した1次提案資料の応募総数は33者にのぼりました。その書類審査(一次審査)が、去る12月26日(木)、中井町農村環境改善センター2階研修室で開かれました。

選定委員会の設置要領にもとづいて構成された選考委員、並びに陪席は以下の方々です(敬称略)。

選考委員:
遠藤克彦(建築家、茨城大学教授※選考委員長)
忽那裕樹(株式会社E-DESIGN代表取締役)
佐藤真悠(中井町民、わいがやサロン参加者)
岩本明人(中井町教育長)
森聡(中井町総務課 参事兼総務課長)*
*当日欠席となった鶴井淳(中井町副町長)に代わり参加

陪席:
岡本真(アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)代表取締役)

選考委員長を務めたのは、わいがやサロンの会場にも複数回訪れ、町民の声を直接聞いてきた建築家の遠藤克彦さん。
ランドスケープデザイナー、まちづくりプロデューサーの忽那裕樹さんは、エリア一帯をどう使っていくかを考えるランドスケープの専門家としての視点を担いました。
そして町民であり、わいがやサロンの参加者として選考委員に加わったのが、大学生の佐藤真悠さんです。わいがやサロンでの議論にも積極的に参加し、施設のあり方に向き合ってきた佐藤さん。この町で生活する実感をもつ当事者として、選考にあたりました。
そして中井町からは、教育長と参事が選考に加わり、わいがやサロンのファシリテーションを担ってきた岡本真さんも陪席として参加。

はじめに中井町の生涯学習課長が、戸村裕司町長から選考委員会へのメッセージを代読しました。わいがやサロンで町民とともに心を重ねてきた、あらたな施設への思い。そして応募いただいた方々への感謝が示されました。最後に、選考は選考委員会の熟議に委ねるとともに、透明性・公正性が保たれる審査となるよう伝えました。

一次審査の概要:
13時00分~13時30分 挨拶、進行の説明、要項による要求事項等の確認
13時30分~14時30分 各選考委員が提案書を自由に見分
14時30分~15時15分 全員で1者ずつ提案内容を見分
15時15分~15時30分 投票
15時30分~16時30分 熟議

一次審査で大切にされた視点

募集要項で求められた「提案内容」のポイントは、以下の3つでした。

1.「比奈窪56プラン」*を踏まえた望ましい土地利用計画(公共施設の再編を含む)はどういうものでしょうか
2.2030年代を見据えた、遠くない未来の公共建築の姿はどういうものだと考えますか
3.1と2を実現するために中井町にどのように寄り添うことができますか

*中井町生涯学習施設建設基本計画(案) P.10 
https://www.town.nakai.kanagawa.jp/material/files/group/21/kihonkeikaku.pdf

「比奈窪56プラン」とは、中井町役場、保健福祉センター、郷土資料館など複数の公共施設が集積する比奈窪エリア一帯をどう使っていくかを含め、あらたな生涯学習施設のあり方を検討していくプランです。対象地域全体のランドスケープも含め、未来のイメージを描くこと、そして中井町に寄り添いながら設計を進めていくことが、設計者には求められました。

一次審査では、上記のポイントを踏まえたビジョンが描けているかどうか、何をやろうとしているかという視点で選考してほしいと、委員長の遠藤さんは伝えました。「一次の段階では、計画の細部というよりは“人”を見ていただくのがいいと思います。この人と一緒に生涯学習施設をつくりたいかどうか」。

熟議を重ねること

続いて、審査の流れについてです。各選考委員が資料を読み込んだのち、支持する提案に投票し、最終的に4者を選ぶプロセスが共有されました。各委員が決められた票数をもち、ひとつの提案に対し1票を投票していきます。今回の満票は5票。審査で大切にされたのが、議論の進め方でした。

はじめに委員長の遠藤さんは「投票を経て無得票だったものについても、議論の俎上にあげるべき提案がなかったかどうか。まずは全員で協議するプロセスをもちましょう」と伝えました。

そのうえで「仮に1票だった提案があったとします。それについては、2票集まった提案とあわせて審査をすべきかどうかを議論したいと思います」と遠藤さん。続いて2票のものについても同様のプロセスを経て選考していくことになりました。

このような流れを経て、同じ票数になった提案をどのように判断していくか。選考委員長の遠藤さん、そして忽那さんは、建築やランドスケープの専門的な視点から意見を共有していく一方、教育長からは「生涯学習施設としての理念、それが明文化されているかどうか」という視点が挙げられました。

町民の佐藤さんからは「具体的に書かれていない提案と、具体的に書かれている提案」について、どのように選考を進めるべきかという問題提起もありました。それぞれの立場からの意見を尊重し合いながら、遠藤さんは議論をまとめていきます。

選考の過程で印象に残ったのは、中井町のこのエリアならではのものか、ほかのまちでも展開できるものかどうか、という視点でした。最終的には議論を経ても絞りがたい5者が残り、予定よりも1者多く2次審査へ進むことになりました(2025年1月6日(月)公表)。

1次審査を通過したのは以下の皆さまです(順不同)。

SUGAWARADAISUKE建築事務所株式会社
株式会社御手洗龍建築設計事務所
アトリエコ株式会社一級建築士事務所
株式会社アトリエ・トルカ
株式会社YAP一級建築士事務所

公開2次審査へ向けて

1次審査を終え、アドバイザーの岡本さんは「建築事務所として、評価が定まった事務所というよりは、これから活躍していく可能性をもつ応募者が多く残ったのではないかと思います。それは若い世代の設計者とともに町の未来をつくっていく、中井町のメッセージにもなっている」と、この日の議論を締めくくりました。

続く2次審査は、いよいよ「公開対話審査」です。選考委員と、応募した設計者との対話の様子を町民の皆さまにもご覧いただき、当日会場で結果を公表します。
わいがやサロンに参加されていた皆さまも、そうではない皆さまも、ぜひ公開審査を見届けてください。

2次審査(公開対話審査)
日時:2025年2月15日(土)13:00~17:30
会場:中井町農村環境改善センター 1階多目的ホール
※当日会場で結果を公表します
※どなたでもご覧いただけます
※オンライン配信も予定。詳細は町ホームページでお知らせします

取材・文:及位友美(株式会社ボイズ)
写真:菅原康太


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