夏の物語
地面に融けていってしまう
そんな予感の暑い夏
あの日のことが蘇ろうとしている
だから
あらゆる過去の記憶を
素直にたぐり寄せている
一人の人と出会ったことが
八月のある日だったところまで
物語は辿り着く
けれども
それ以上を思い出そうとはしない
だって
結末を知っているのだし
その過程だって
手帳に残っている
だから
地面に融けていくカラダを
そのままドロドロにしてしまう
新しい物語に作り変えよう
そう試みたこともあった
美しい「さようなら」など
なかったけれど
出会いは残酷な罰ゲームだ
恋はどんな毒薬なんだろうか
あのときの
行き止まりには
何色のどんな花が咲いて
どんな音楽が流れていたのだろうか
あの人の
スカートの柄も
思い出せない
夏の物語 note