町寿司の人の香りに誘われて
町寿司のあの高揚感ってなんなんだろうな。昨日も久しぶりに行きずりの町寿司に訪れた。いつものようにgoogle mapで検索して、ふらっと訪れるというパターンだ。昨日が遅かったので、今日は早めの時間にカウンターを予約する。珍しいコの字カウンター、掘りごたつのような床の間に足を入れるタイプのカウンターで「寿司でいいですか?」と聞かれる。つまみを少しもらいながらも寿司を頂く、町寿司ならではの独特の握り方。桶は保温用のプラスチックコンテナに入っていて、機能的だ。横にガスコンロがひとつ、そこで穴子などを焼いている。
「お飲み物どうしましょう?」
「熱燗で」
奥さんらしき人が用意するのだが、ちろりを入れるのは象印の湯沸かしポットの中だ。これは考えたなぁっと感心する。見た目は決して美しくないが、僕にとっては最高のアイディアの結集だ。熱々の徳利にて、熱いですよと言われながら握る。最近、熱いものを握っているからか普通の暑さではあまり熱くない。クイッと飲み干すと、握りが矢継ぎ早に出てくる。
「白子とか好きです?」
「あ、ぜひ」
そんな手拍子のような合いの手で、スムーズに出てくるのが町寿司の魅力だ。実に独特な握り方だ、打ちっぱなしで面白いフォームなんだけどガツンと飛ばす、そんなおっさんのパワープレイな握りだ。大将の後ろには検査用の小さな手洗い場があて、そこで時折手を洗う。ゆずはネットの中に吊るされていて、そこから出してからイカの上にかける。種が落ちる、それを指で弾く。それを繰り返す、決して種をとってから絞ろうとなんていう野暮なことはしない。
外人の客が覗いては、「フルシーティング、ウェイトウェイト」と大将が話す。英語はブロークンながら心が通じる。腹も一杯になっていたので、「そろそろ僕ら出ますよ」と伝えるといえいえ6時半から待っている日本人の方がいるので全然ゆっくりで、そして赤だしを頼んだらネギマ汁がオススメとあまから手帖のラミネ記事をみせてくる。「じゃあ、それで。」壁に眼をやると、カレンダーにすべての予約と電話番号が書いてある、常連はきっと電話番号なしでいけるんだろうな。なんかこういう全てが人の香りがして、好きなのである。気づいたら10名ぐらいの人たちが寒い京都の空の下で並んでいる。さ、次の方どうぞ。