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アルベルト・アドリアという友人

今日はアルベルト・アドリアに会ってきた。彼の兄のフェランが僕らを見つけてくれた、2018年のことだ。「WAGYUMAFIAは革新的なレストランだ」まだ荒削りでまだここまで見向きもされていなかったWAGYUMAFIAの料理を食べながらそう言ってくれた。その言葉は嘘でなかったように、彼が喧伝してくれたことで、本当に色々な世界のシェフがやってきてくれたのだった。そこからフェランの弟のアルベルトに出会うまでには時間がさほど時間かからなかった。今でも覚えているのはバルセロナのエニグマのテストキッチンの中でだった。この兄弟無しでは今の僕らはない。ある意味、海外戦の僕らの立ち位置が決まったとも言える恩人だ。

そんな彼が初のアジアツアーの対バン相手に選んだのがWAGYUMAFIAだった。ちょうどコロナ前の2019年の秋だ、ツアーを一緒にしてアジアを回った。仕事終わりには、毎晩朝方まで飲んだ。赤札屋ではジョッキハイボールを72杯飲んで、まさかのハイボールの樽が無くなったという記録も作った。香港空港での別れ際に、「もう俺らはファミリーだからな!」と固くハグして別れた。それ以来、僕らは頻繁に連絡を取るようになった。バルセロナに行くといつも一緒に食事をする仲間となった。「そうだ、一緒にボデガ・エル・カプリッチョにおまえと行かないとだ。いつも忘れているな。」というのが別れ際の毎度のセリフだ。まだ僕らのステーキディナー会は実現していない。

とにかく僕と同じようにストリートフードが好きだ。フェランもそうだったし、弟のアルベルトもそうだ。「つまらない3時間コースの店だけにはお願いだから連れて行かないでくれ。」と、そう二人から言われて意外だったことを覚えている。一緒にヨーロッパを回ると、本当にカジュアルなところをまわる。僕が好きな食通というのはこういう人たちのことを言う。そんな彼がアルマーニリストランテでポップアップをするという、僕らにとっては初めて娘を家族に預けて二人で臨む会食となった。久しぶりに彼の作品を味わうことが出来た。随所に日本のエッセンスがしっかり入っていて、単純にテクニックで使っているのではなくて、その料理の真髄を理解して表現していた。世界中に数多の料理人がいるが、何気ない料理をしっかりと彼の世界で再構築できるの数少ない。ひとつづつ食べながら、すぐに戻ってキッチンで料理したい気持ちになる。そんな食べることでクリエイティブに目覚めさせる、すべてのヒントが入っている。

そんな彼の料理を食しながら、また一緒に何かするんだろうなぁっと確信したのだった。


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