今年最初の朝食会に添える言葉
おはようございます。
今日あなたがこの文章を読んでいるということは、早起きしてWAGYUMAFIAの朝食会に出られて、メニューに存在するQRコードを読み取ったからでしょう。早いものでこの朝食会ことBREAKFAST AT WAGYUMAFIA'Sもそのスタートからもうすぐ2年が経とうとしています。
いつの日か日本から朝食という文化が消えました。海外から帰ってきて深夜便で早朝に羽田と着いたとしましょう。スーツケース転がしながらそのままタクシーで温かい朝食が食べたい。そんな欲望に答えられるお店が残念ながら東京にはありません。ほとんどの人は朝食を取らないか、もしくはコンビニでサクッと買ってあるきながら食べるか、もしくは牛丼チェーンかバーガーチェーンで食べるか。そんな感じなのでしょう。日本に生まれてきた僕としては炊きたての米とその上に乗せる具が欲しい。そんなシンプルな欲求をなかなか果たせないことに疑問符を浮かべること幾度。
ないのであれば、作ってしまおう。
そんな行動することで全てが見えてくるというのがWAGYUMAFIAの原動力。お陰様で多くのゲストに支えられて、今日この日を迎えています。いつもメニューは、僕の即興的なアイディアとそしてスタッフとの議論で決まります。スタッフは迷惑をしていると思いますが、一度決めたことを頭の中で僕は覆します。だから数週間前から始まるメニュー会議も、昨日の土曜日である程度のことが変わってしまいます。それぐらいこの朝食というものをひとつの発表の場として大切にしています。
基本的に僕が食べたいと思うものを出しています。最初の南部鉄器で鍛えた白湯と自家製のヨーグルトは最初からお出ししているメニューですが、多くのメニューはこの2年間幽閉されたことによって始まった日本を旅することで出会った生産者や地元の料理、そういうものにインスピレーションを受けて生まれたものです。
基本的に僕は食材を料理するということを好みません。それはこれだけの食材が豊富にある国なので、丁寧にお出しするだけでいいと思っているからです。料理というよりも編集、そうデザインをするというイメージでしょうか。そこにパーソナルな想いを注ぎ込む、そんな作業です。想いというのはその時々で変わります。来て頂くメンバーが決まってから、きっと前の日に飲みすぎている人もいるんだろうな、とそのゲストの顔が浮かびます。そうすると青森十三湖のしじみを取り寄せて、そのエキスを抽出するのです。温かい滋味溢れる味であれば、きっとその人の顔がニコニコするはずです。
実は今日の朝食会は今年初めての朝食会となります。そして会場も慣れ親しんだ外苑西のWAGYUMAFIA DISTRICTから赤坂へと移し、プレのプレオープン中の照寿司TOKYOのカウンターを借りてお送りしています。コミューナルなテーブルで食べる朝食も素敵ですが、今日は僕がカウンターの中で一番好きなコの字のカウンターになります。砂と石で出来たカウンターも手伝って、いつもの朝食会とはまた違うフィーリングとなることでしょう。
今回のメニューには、成澤シェフとのおにぎりプロジェクトで訪れた酒蔵で出会った食材が多数登場します。その中でも心に残っているのは相方堀江の故郷である八女で出会った繁桝さんとのおにぎり会でした。彼のお母さんと握ったおにぎりはそれは美味しいもので、その帰りに立ち寄ったのが彼のおじさんの苺畑です。そこで数個の苺が繋ぎ合わさり、不揃いになった苺が登場します。それを地元では鶏のトサカになぞってそう呼ぶらしいです。サイズが大きいのと見た目も無骨なために市場には出ない。だから小さな堀江少年はその苺をおじさんからもらってずっと食べていたそうです。だからその苺を何十年か後に食べている堀江の顔は忘れらないぐらいキラキラしていました。
今日の朝食会の最後はその苺です。
食はこんな素敵なストーリーを持っています。ストーリーはとてもパーソナルなものですが、この苺の話しを今日のゲストが他の方に出来るように食べた瞬間にあなたのものにもなるというのが面白いところです。それはきっと食べて肉体となり、そして食べたものが心と繋がる。食とはそんな媒介としての役目を持っているものなんだなぁっとつくづく感じるのです。
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