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高野山護摩行を世界ライブする話

仏教伝来の話をしていたら、和歌山に訪れることとなった。旅というのは計画するのだが、呼ばれることもある、とても面白い生き物のようなものだ。トライアスロンでもお世話になっている平和酒造の山本典正社長がこう言ったのだ。

「せっかくの来和になるのだから、高野山に行きませんか?」

高野山には金剛峯寺があるご存知の通り、弘法大師こと空海が開いた真言宗の修験の場だ。今でもほとんどの土地は金剛峯寺が所有しており、貸与されているという日本でも数少ない宗教都市として機能している。インバウンドで欧米の旅行者の盛り上がりをみせていたが、コロナ禍においてこの場所もその煽りを食らっていた。

空海は幾度との困難に遭遇しながらも遣唐使として大陸を渡り、密教などを学びそのベースが真言宗となったのだが、面白いのはチベットから唐に渡った密教がすでに中国には残っておらず、おそらく文革の影響もあったのだろう、だから当時のスタイルが現存するのはこの空海が持ち帰って今もなお永らえ続けているこの真言密教のみとのことだった。故に中国からの留学生の僧侶が絶えないらしい。歴史というのは実に面白い。

高野山を2時間ほど歩き、戦国武将などの墓から、近代日本を支えた明治以降の大会社の社碑を眺めながら、ちょっとした日本を平安時代からタイムトリップして巻き戻していくようなそんな素敵な時間を送ることができた。

高野山では恵光院の副住職近藤説秀(せっしゅう)さんにお世話になった。この方、イケメンなお坊さんとして有名で森永のラムネのコラボに出ていたりと、インターネットで高野山初のライブ説法を行っていたりと、年齢が近いこともあり、僕らの高野山のイメージがより身近な存在となるきっかけを作ってくれた方だ。

その近藤副住職はこう教えてくれた。高野山の歴史は1200年ほど、その昔は2000ほどの寺院があったが、今は117の寺院。そのうち護摩行を毎日行っているところは3寺院ほどらしい。

和歌山市内に戻る前に、その護摩行を特別に行って頂くことになった。護摩行というのは英語でGOMA FIRE RITUALと称しているらしい、文字通り香油が塗られた護摩木を焚く密教独自の祈祷の方法だ。まるで銅のBBQキッチンのような小さな場所で、太鼓のビートとお経を読む声が、焚かれた護摩木から生まれた炎と、独特の薫りに、ちょうどバリ島のウルワトゥ寺院横で観たケチャダンスにも似た非日常の世界にいざなわれる気分になる。不謹慎な話かも知れないが、エンターテインメントがなかった時代にこの祈祷を体験したら、今の弛緩された僕らの体験の比ではないだろう。

近藤副住職とともにこの護摩行を世界にライブ配信した。コロナが落ち着いたら、きっとまたいつものようにこの秘境を求め、世界から旅する人々が舞い戻るのであろう。そんな日々を想いながら、旅した一同とともに手を合わせるのだった。

護摩行のライブ配信のアーカイブはインスタグラムより。


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