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みんなが歌い出す日本酒バーの話
今日はYATCHABARのこけら落とし。
長いこと僕らを支えてくれている友人の山本さんに最初のゲスト蔵になっていただいた。彼が率いる平和酒造ナイトである。思えば、山本さんは何かよく分からずたくさん応援してくれた。僕らが何ものでもなかったときからその姿勢は変わらなかった。ダメダメな時に応援してくれた人のことは、物覚えの悪い僕でもすべての人のことを覚えている。彼はその1人だ。だから僕は彼のクラフトビールしか使わない。それは高木さんという女性醸造者を応援していたい気持ちもあるけど、やっぱり山本さんが黎明期に僕らを信じてくれたことに他ならない。大手が金額を積もうが何をしようが、僕らのビールは平和酒造の平和クラフト一本である。
上記のコラムでも書いた通り、WAGYUMAFIAは1カテゴリー1社のルールを敷いている。ビールは平和クラフト(平和酒造)であり、日本酒は宮泉銘醸(写楽)だ。ビールはお願いできるけど「日本酒はごめんね。」を繰り返し伝えていたのだが、そんな1カテゴリールールを飛び越えるフリースタイル空間を作ろうと思ったのが、YATCHABARである。ここは日本酒しか飲めないバーだ。そして全国、僕と相方の堀江が行ったことのある酒蔵の酒しか置かない。言い換えると、全国の酒が集まるそんな空間になっている。
僕はこの店にとても愛着を持って作った。それは元々やりたかった3坪の店を作りたかったからだ。設立当時は3坪が一番難しいと色々な人に言われた。渋谷の横丁の物件はそれで流すことになった。6年ほど前の話だ。今回WAGYUMAFIA REPUBLICを作ると決めた時に、ファサードのちょっとした空間に3坪の可能性が見えたのだった。だまし絵と言ったら失礼かも知れないけど、3坪を大きくする魔法を思いついた。それはエレベーターホールのレンガをそのまま延長させるという方法だった。エイジングをかけて、延伸されたレンガ畳。気づく人がいないぐらい自然な空間の錯覚、エレベーターホールが繋がり空間以上の広がりをみせてくれる。
WAGYUMAFIAの原型はもともと僕の家のホームパーティから始まった。相方の堀江も「俺も料理したいなぁー」そんなホームパーティでの一言から、キッチンスタジオでのお題縛りのイベントが始まったのだ。だからその原型に立ち戻れるようなそんな店を作りたかった。きっと再現性のない店になるだろうし、3坪とはいえそれだけのスペースも失うのだが、それでも何かが大切なものが見える気がしたのだった。
今日は3度目のセッションだった。これがある意味、デビュー戦である。品数はなんだかんだで15品。スタートが19時で終わったのが23時。完全なるホームパーティタイムだった。平和酒造の醸造家のひとり、遠藤さんが三線を持ってきて歌を歌ってくれた。島唄だった。みんなで大合唱をしてエレベーターホールが反響した。いつもの通り、あぁこんな感じの店を作りたかったんだなぁっと。どこか僕もゲスト側の気分。そんなとても不思議な時間と空間が登場した瞬間だった。
キッチン内とカウンター越しの境を無くす。NO BORDER BETWEEN OVER THE COUNTER AND INSIDE OF KITCHEN、そんなことをWAGYUMAFIAの大切なフィロソフィーとしてずっとクリエイティブに落とし込もうと頑張ってきたが、今日はちょっぴりその瞬間が垣間見られたような気がした。
今日は平和酒造の山本さん、そして遠藤さん、そして大好きな身内なゲストな皆さんとのまたWAGYUMAFIAの新しい1ページの始まりな予感を感じさせてくれた。これも日本酒が奏でてくれたマジックかも知れないな。