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アディオス、クールジャパン!

和牛の事業を立ち上げようとしていたスタートアップ期、僕は知り合いのツテをたどって経産省主導の官民ファンドクールジャパン機構への「ハイエンド和牛の世界輸出事業」への出資要請をかけていた。僕らのプロジェクトは"PROJECT VANGUARD"と名付けられた。担当者のお二人はとても優秀でめちゃめちゃ頑張ってくれた、ディスカッションからのパワーポイント作成という作業ループの連続。「プレミアム和牛の海外プラットフォーム構築」僕らが実現を目指したのは、この普通の和牛でも安い和牛でもなく、プレミアム和牛の世界流通プラットフォームの構築だった。一年の交渉を経て、最終的にテーブルを挟んだ僕に伝えられた言葉は次のような言葉だった。

「浜田さん、どうして日ハムや伊藤ハムといった大手が出来なくて、浜田さんという個人が出来るというドリームストーリーを信じられるのでしょうか?」

オタク文化には15億円出資ているのに、日本の和牛のビジネスにはゼロ回答だった。特に実績もない、これからのスタートアップにリスクマネーは出せないということだった。今だから話せるが当時のトップからは「国からお金をもらうとリポーティングなど面倒だから大切な浜田さんという経営資源を削られてしまう。だからこの判断は残念に思うかも知れないけど、良かったと思う。他を探して頑張って。」と内緒のアドバイスを頂いた。今から思うとこの言葉が全てだった。あれから8年経った。僕らはWAGYUMAFIAを設立して世界進出を果たた。クールなはずの官民ファンドは累計損失300億を計上し、どこかに吸収されるか、解散する方向とのニュースが流れた。

性格的に過去のことをどうこういうつもりはない。前述の通り、担当者2名の方々は超優秀だったし、ディスカッションもとても楽しかった。あのときのプレゼン資料を今でも持っているが、その内容と今の現実を比較するとある程度の仮定が間違いなかったことも分かる。

僕がこの10年間で学んだのは、和牛のような一見ヘビーな産業への参入でさえも、お金はそこまで要らないということだった。そして十二分に大企業と勝負出来るということだ。それはテクノロジーの進化がもたらした、人々のコミュニケーションの変化が大きい。特にWAGYUMAFIAがブランド化してから、その動きは更に強くなった。世界の人々がWAGYUMAFIAが発信する「和牛」に関する情報が一瞬で届くからだ。まだ名のない和牛の生産者は、僕らのプラットフォームを使えば世界的に一気に有名になることも可能になった。オセアニアまで広がった僕らのプラットフォームは、向こう一年で世界的にも規模が3倍になる予定だ。

クールジャパン機構に一番足りなかったのは、チームを作るという概念が欠如していたからじゃないだろうか?それは「フェラーリのエンジンはイタリア人が作るべきだし、ドライバーも生粋のイタリア人が乗るべきだ」というオールジャパン的な発想ではない。個別の案件に投資してVC的に伸ばしたかったのではれば、日本人ではなくて外国人がやった方がよかっただろう。僕もアジアの展開はカナダ出身の外国人としているし、海外チームは僕以外全て外国人だ。もう日本人、外国人という差を意識したアイデンティティで勝負している自体、旧世代的な発想だと思っている。

海外で育てている和牛の交雑や純血の海外産和牛もそれは面白いし、日本酒の酒蔵が世界の至るところで創業している話も夢がある。もちろん僕らは日本で生まれ育った和牛で勝負しているが、プロダクトではなくてアイディアが輸出されて海外で再編集される姿を見られるようになるのも、この国が生んだコンテンツの素晴らしさではないだろうか?オタク文化が海外でウケているということは評価できて、和牛が海外で育てられていることに危機感を覚えてしまう。そんなところもちょっと古いマインドだったのかなぁっと思うのだった。これから輸出すべきは日本的なマインドだ、輸出という言葉自体がもう古いのかも知れないが(笑)。

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