KAMINARI BOYS RETURNS
元は浅草にあったシェフの米澤文雄のお店をみんなで盛り上げようみたいな感じでスタートした、最初は雷だったり、神風だったりととネーミングが決まっていなかった。それが、やっぱ浅草だし「雷」でいこうぜーで、ユニット名が決まったのが2018年。文雄が連れてきた当時のボニュのシェフ河島英明くんことヒデと僕と3名で作ったユニットだ。おそらく一回切りで終わる予定だったのだが、不思議なことに今日まで続いている。
僕らはいつも突然集まる。昨日がその突然だった。一度も集まることなく、当日にフラッとやってきて料理を作り合うというそんなライブなイベントだ。今回もテーマだけは立ち飲み&居酒屋でやろうということを決めて、エアーでメニューを投げあった。気づくと30メニューになって、唯一僕らが決めたことは「もう少し減らそうぜ」ということぐらいだった。不思議なのは、ほぼぶっつけなアドリブに近い即興セッションなのに、3人ともメニューがかぶらないこと。性格も違う3人だからこそ、楽しいし、今まで続いているユニットなのかも知れない。
文雄は年末で完全独立、そしてヒデは新たなフィールドであるτρεῖς(トレイス)にて活躍している。3年前と状況はかなり変わったなぁっと思う。もう雷ボーイズは5回ほど開催していて、昨日がその6回目だったのだが、最初のときはインスタだけで告知して外国人を中心に集めていこうということになった。全く知らない外国人のゲストたちに出会える喜びがあった。今年はついに外国人ゼロの日本人オンリーのセッションだった。僕らを取り巻く、外環境が変わっても、変わらぬバイブスの友人がいるだけで僕らはそれで満足だ。
別に和牛使わなくてもいいよ!と何度言っても、和牛メニューをメインに考えてくる律儀な文雄。相変わらずレシピは再現性がある丁寧な筆記でスタッフにシェアしてくれる。必ず置き土産を作ろうという姿勢を毎回みるに、彼が引っ張りだこになっていることがよく分かる。ヒデは居酒屋メニューって言っているのに、仕込み時点で鳩の爪が連なっていたり、塩フォアグラを仕込んできて、全く居酒屋ではなくなっているし。全然居酒屋じゃないじゃんと突っ込むと、「ちゃんと「唐揚げ」にしますー」と笑顔で答えてくる。いやいや、そういうことじゃないんだけどなーっと思いつつも、一口食べたら彼のワールドで居酒屋メニューになっているから不思議だ。もうすでにシャラン鴨のハツの焼き鳥が食べたくなっている自分がいる。
イベント当日はどういう順序で出すかも決めていないから、みんなアドリブでいつどうだすかを準備とともに見ながらメニューを追いかけていく。西麻布の少し高くなっている後ろのキッチンで仕込みをみていくのだが、その中に色々なヒントとテクニックが隠されていて、みんなで食材の話しや、塩の濃度や火入れの時間などをディスカッションしながら、酒も飲みながら作っていくというスタイルがとても楽しいのだ。
気づくと盛り上がっているカウンター、そしていつの間にかすべてのお客さん同士が仲良く話し合っている。食に携わっている者として一番生きがいを感じる時間だ。そして僕らはいつの間にかいい感じに酔っ払っていて、また次の雷ボーイズの話しをするのだった。次回は文雄のラボで開催予定だ。僕にとって久しぶりのアウェイで楽しみだ。
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