「赤い風船」と「白い馬」
アルベール・ラモリスの映画「赤い風船」をデジタルリマスターする話があった。この「赤い風船」1956年のパリを舞台に最後は風船に乗って消えていってしまうというファンタジーなんだけど、スピルバーグにも宮崎駿にも多大な影響を与えたという傑作だ。日本旅行の赤い風船もこの映画から来ている。
映画の買い付けをしていた20代の僕はすぐさまオファーを入れた。争っていたのは当日の角川系の会社とあともう一社。僕はラモリスの監督の息子とも話し、オフマーケットで日本円取引条件で3000万円でプライスオファーを入れて、落札したのだった。
東京に戻り、共同の配給会社とともにすぐにシネスイッチ銀座で、半世紀前の映画をもう一度新作として封切ることができるか協議した。英語で”Classic never dies”という諺がある、古き良きものをデジタルリマスターして、そして新作上映させることの意味があると思ったのだった。
晴れて新作として半世紀ぶりに銀座に戻ってきた「赤い風船」上映時に当時子供の時に観たことがあるというおじいちゃん、そしてその孫が一緒に観に来てくれた。スピルバーグや宮崎駿が感動したように、この小さな子もラモリスの「赤い風船」に託す想いが生まれたら嬉しかった。
ラモリス監督はビジネスマンとしても優秀だった。彼は「赤い風船」公開時の翌年のボードゲーム「リスク」の原型となる「世界征服」を考案する。今でもハズブロ社が売っている世界的にヒットしたボードゲームとなった。残念ながら彼は1970年に新作映画の撮影中にヘリの事故で亡くなる。その後も残された家族にしっかりしたサポートができたのもこのボードゲームのお陰だ。
このボードゲームがなければラモリスの息子もおそらく「赤い風船」のデジタルリマスター化には応じなかったのではないか?とそう思うのだった。ちなみに当時同時上映したのが同じくラモリス「白い馬」だった。雄大なカマルグの湿原で疾走するシュバルブラン=白い馬の優雅な映像美も一緒に観てもらえたら嬉しい。僕が関わった映画の中でも心に残る2本の映画だ。
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