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あの時跨ぎそうになった僕らの銀座

美術館に飾るクラスの写真があって、ちょっとしたご縁で額装作業に付き合うことになった。向かったのは銀座の伊東屋である。地下に行くとこれでもかというぐらいの額の種類があって、台紙ともに無限の組み合わせがある。額装作業もこの場で行うわけだから世界で一番高い額装屋の一つであるのは間違いない。

写真の点数は10点ほど、2時間ほど一つ一つの組み合わせを考えながら、選んでいく。支払いは100万円弱。以前、アートをやっていた時に頼んでいた小林額装では5万ぐらいだったと思う。そう考えるとものすごい金額だなぁっと思う。元の写真も売り物ではないが売値をつけるとなると車一台ぐらいの金額は優に超える。そう考えると釣り合いがつくのであろう。

12時からスタートした作業は2時半を超えて、カツ丼が食べたいとの友人のリクエストでリニューアルした梅林に向かうがインバウンドで階段上まで並んでおり撃沈。時間が時間である、その後二軒ともに中休みに突入してるおり通し営業の老舗の蕎麦屋にて板わさとカツ煮をいただく。90を超えたおばあちゃんがバーキンを隣において、まるで飾りのような天ぷらの盛りを斜めに店員と話している。

この泰明小学校の近くに僕らはお店を作ろうと思っていた。B工事も終わり、違約金は大変な金額になったがそのプロジェクトがWAGYUMAFIA DISTRICTと代わり、外苑にオープンした。「浜田くん、一度銀座を跨いだら跨ぎ続けないといけないんだよ。」夜の店に年間2億を使っていたその社長は20代の僕にそう言った。粋なおばあちゃんの増えも減りもしない天ぷらを見ながら、銀座は跨げなかったなぁと笑う。

僕らは港区が似合っている。

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