キーマンは現地に連れて行く
何万回酒を酌み交わすよりも、キーマンは現地に連れて行った方がいい。一週間前にスケジュールを開けて、弾丸で現地に行くことにした。会津若松、そして富山である。初めて訪れたときから、獺祭の「磨きその先へ」を出してくれたりと、大の日本酒ファンであるそのキーマン。ただし酒造りの現場は見たことがなかった。だったら日本来日の際に3日だけ時間をあけて現地で酒造りを体験しようと伝えたのだった。
朝早くから蔵に入り、香りに包まれていく。米を炊くときの香り、吟醸香の香り・・・、炊きあがりの酒米を食べて、14日ほど経って発酵が進んでいるタンクをみながら、香りをチェックする。そしてしぼりたての酒を少しだけ舐める。僕らにとっては、シーズンに何度かくる当たり前の光景だが、目をキラキラさせながら色々な質問をしていく彼らだった。そしてその夜は蔵人たちと、一緒に地元の料理を食べながら、ひとつづつ季節の酒を飲んでいく。
富山では最新鋭の蔵を訪れる。日本酒を混ぜて、ひとつの作品に仕上げていくという新しい蔵だ。蔵に泊まり、そして朝の6時から動き出す。昨日みた蔵とはまた違うプロセスをみながら、昨日よりも少し踏み込んだ質問が飛ぶ。地元の料理を食べて、地の酒を飲む。日本人には当たり前なのかもしれないが、イギリス人とアメリカ人の2人には本当に貴重な体験になったことだろう。彼らを東京に連れて帰ってきて、そして東京でまた2つの蔵の酒を飲みくらべる。
もう彼らの顔は、旅の前とは違う。目をつむり、あのときの立ち込める蒸気をイメージしながら、五感で飲んでいる。僕がWAGYUMAFIAを通して世界に伝えたいのはこういうことなんだよなぁっとサーブしながら思う。すべてのゲストにこんな対応はできないが、キーマンである人達にはしっかりと現地をみてもらう。彼らがおそらく100万人に伝える能力を持っているからだ。来年、初絞りのタイミングで世界からVIPを招聘してイベントをしよう、そう彼らはいった。また日本酒とWAGYUMAFIAの次のページが開きそうだ。