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【書評】コレステロールの欺瞞―「悪玉」コレステロールは作り話 :ワルター・ハルテンバッハ著
コレステロールの欺瞞―「悪玉」コレステロールは作り話
著者のワルター・ハルテンバッハ博士はドイツのミュンヘン大学付属病院教授を務めた心臓外科医です。
博士は心臓外科医ですので動脈硬化性疾患を日常的に診ていたわけですが、動脈硬化を来した血管は病理学的には「線維性」の病変であり、cholesterolの沈着は最大でも1%に満たないと述べています。
このことからcholesterolが高いと動脈にcholesterolが沈着し動脈硬化に陥るというペテンを告発しています。
ペテンを終わらせよう!
本の帯にはこんな刺激的なことが書かれています!
薬剤によるコレステロール低下は、製薬企業、マーガリン産業や医師たちにとって何十億ユーロを稼ぐ商売ではあるが、ハルテンバッハ教授やコレステロール低下薬仮説に批判的な学者の見解によれば、コレステロール低下はまったく不必要であり、多くの場合生命に危険でもある。
著者最大の関心は「コレステロール悪玉論者たち」の心理テロから国民を解放し、不必要な恐怖を取り除き、がん患者の増加や死亡例を増やすような健康被害の徴候を阻止することである。
なんと、コレステロール低下は生命に危険であること。そしてコレステロール悪玉論とは心理テロである!と喝破しています。
この心理テロというのは、もちろん日本でも行われています。毎年毎年多くの企業で行われている健康診断です。
そこで、コレステロールが高い事や中性脂肪が高いことを指摘されてしまい、「自分は死ぬのではないか?」「食生活に問題があったのではないか?」「痩せているのになぜ?」「お父さんも高かったから・・遺伝でしょうか?」などと悩むヒトが続出しています。
この本は意外に薄い本ですので非常に読みやすいです。目次には以下のことが書かれています。
コレステロールの欺瞞―「悪玉」コレステロールは作り話:目次
1.反コレステロールキャンペーンは危険な欺瞞
2.コレステロールの評価
3.コレステロールの形態と血中濃度
4.コレステロール値の変動
5.コレステロールとその欺瞞の統計
6.動脈硬化症とその原因
7.栄養素群とコレステロールとの関係
8.コレステロール低下は命を脅かす
9.医師たちの反コレステロールというテロ
主な内容を抜粋しました!
成人の総コレステロールの平均値は250mg/dl
献血などでは総コレステロールしか測りません。日本のガイドラインではLDLコレステロール、HDLコレステロール値が対象ですので、総コレステロール値については現在は言及されてません。
すべての精神的、肉体的な付加があれば、特にスポーツ病気、事故による怪我および手術のような場合、ストレスホルモンのコルチゾールの分泌およびその前駆物質のコレステロールは増加します。
コレステロールを下げるために運動を一生懸命に頑張ると、逆にコレステロールは上昇するということですね。
「HDLはコレステロールから形成されている動脈硬化性のプラーク(巣)を解体するために使われる」という表現は、見当違いのファンタジーです。なぜなら、動脈硬化巣は繊維細胞的な性質の物であり、コレステロールの沈着は最大で1%に過ぎないからです。
これは大事です。HDLコレステロールはスカベンジャーであって、動脈に沈着したコレステロールを回収するということがもっともらしく言われていますが、これはファンタジーなんですね。
先天的な家族性高コレステロール血症は・・・LDLコレステロールを受けとる細胞のレセプターの数の不足あるいは働きの低下にあり・・・細胞はコレステロールの供給不足の結果、早期に腫瘍性の変化に陥る可能性があります。
家族性高コレステロール血症の本質は身体の細胞がコレステロールの供給不足になっているというのが病態ということです。
そして血液のコレステロールは絶えずその濃度を上げ、それがすべての器官に浸透し、コレステロールが結節状の沈着物を形成するので、その外科的除去が必要となります。最終段階では血管にもコレステロール沈着が始まりますが、それは動脈硬化的な変化の形態ではなく、幅のある帯状の拡散的な沈着です。・・・・・ 患者は動脈硬化症や心筋梗塞、あるいは脳卒中ではなく、拡散的浸潤を受けた器官の機能不全によって、また細胞のコレステロール供給不足による腫瘍状の組織変性の進行によって死ぬのです。
高コレステロールが動脈硬化をもたらし心筋梗塞や脳卒中になるというわけではないのですね。
手術、競技スポーツなどの異なる身体負荷では、副腎皮質ホルモンのコルチゾールは正常値の2倍から10倍の濃度上昇がみられる。それによってエネルギー物質のブドウ糖を活性化する。
コレステロールは副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの材料です。コレステロールが低いと必要な時にコルチゾール不足となってしまいます。
術後にコレステロールを下げると、身体の防衛反応を著しく弱体化し、心臓・循環系の安定を脅かすからである。
コレステロールが低下すると免疫系にも影響があるようです。
家族性高コレステロール血症はすべての例でその数値は400mg/dl以上となるので区別は容易である。このような先天的因子をもつ患者の場合には、コレステロール低下薬の意味はほとんどないと考えるべきである。
著者は家族性高コレステロール血症に対してもコレステロール低下薬の意味はないと主張しています。確かに細胞内へコレステロールを取り込む能力が低下しているのに、血中コレステロールを下げると更に細胞内コレステロール不足に陥ることが考えられます。
◆なぜコレステロール低下薬が健康被害の原因となるか?
コレステロール低下薬とは主にスタチン系薬剤です。
低下薬によってストレスホルモンのコルチゾールが減少すると、血糖の減少を経て、筋の弱体化、痙攣や昏睡状態がしばしば現れる。身体のあらゆる細胞は、その生命機能の維持にコレステロールを必要としている。コレステロール低下薬は、器官の機能不全のみならず、腫瘍性の退行現象の原因となる。
重要な肉体的負荷の場合、コルチゾールの需要は初期値の二倍から十倍に増加し、それに対応してコルチゾールの前駆物質であるコレステロールの需要も高くなる。コレステロールの変動は、我々の活動量の大きさにそっているので、コレステロールの個々の測定値は何の意味もない。
著者は動脈硬化性の血栓患者千人余のプラークを観察した。動脈硬化性の血管壁の変化があっても、コレステロール沈着は最大1%であり、動脈硬化性の変化にとって、この程度の沈着は考慮する必要がない。
人間の動脈硬化は、結合組織様の効果を伴い、細胞性の血管内膜増殖を特徴とし、コレステロール沈着は、せいぜい1%である。
まとめ
いかがでしょう。以上がこの本を読んで私がグッときた部分だけ抜き出したものです。通して読んでみると、この著者の怒りがひしひしと伝わってきます。その怒りの対象はコレステロール悪玉論を唱え続ける医師と製薬会社に向けられています。比較的薄い本ですので、是非一度読んでみて下さい。
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