読書記録 「亀屋伊織の仕事」
ご存知の通り、和菓子の知識がないところからスタートしているので、京都の「亀屋伊織」さんの存在は最近知りました。
だいたい和菓子の本の干菓子に協力しているお店に名を連ねています。
干菓子を専門に作られているのだな…くらいに思っていましたが、普通に考えるお菓子屋さんとは立ち位置が全く違うお菓子屋さんだということがよくわかる本でした。
亀屋伊織さんは、お茶の世界の干菓子を専門に作られています。
著者の山田和市さんは、本の紹介では亀屋伊織17代山田伊織氏の長男とありますが、発行は平成23年(2011年)。
亀屋伊織さんは、京都の老舗の集まり「百味會」にもお名前があるお菓子屋さんです。
(「百味會」は、1名物に1店しか登録されておらず、新規の加入はできません)
先日、百味會が5年に1度開催する「百味展」に伺いました。
↓ そのときの亀屋伊織さんの展示がこちらです。
亀屋伊織さんは、基本的に店頭でお菓子を販売していません。
お茶事専用で、ご亭主と相談してお菓子をつくっています。
ですから、普通のお店のように訪れて購入することはできないんですね。
創業年ははっきりしていないそうで、約400年とのこと。
徳川三代将軍家光公に「木の葉」というお菓子を献上したときに喜ばれて、御所百官名のなかの「伊織」という名前を賜ったと伝わるそうです。
文中に何度も出てくる言葉が「作りすぎないように」です。
これは主役はお茶席。お盆にのせられて運ばれて全体の調和で完成するものなので、お菓子は控えめに作らなくてはならないということです。
「私どものお菓子が、いわゆるお土産のお菓子と異なる点はこういうところであろうと思っております。箱から直接摘んで召し上がられても何の価値もないお菓子なのでございます」
そして1年を通して「相変わりませずの菓子」を作り続けることを大切に400年。
相変わらずではあっても、歴史と四季が絶えず新しい空気を運び、古びることがないそう。
時折でる京都の言葉、上品なふんわりした語り口で、月毎の干菓子も紹介されていてスルスル読めます。
が、変わらないまっすぐな芯がスパッと通っている、そんな本でした。