ショートショート 帰省
今日はショートショートです。いつか本出したいです。サポートしてください。宜しくお願いします。
叫びたいんだ。大声で叫びたいんだ。もう苦しみに耐えきれない。私は悪くないのに。
葛西は会社から解雇された。新卒なのに初日から罵倒され、業務で少しでもミスをしてしまえば、公開説教。極めつけは暗くなってしまった憂鬱な私を狙い上司がセクハラをした。
「葛西さん。何もできない荷物なのに文句言うの?」
「やめてください、確かに仕事はできません。でも私を襲うのは違うじゃないですか。」大声で叫んだ。
「聞く耳なんか持つか。無能に発言権なんかない。」
私は23年生きてきて史上最大の心の傷を負った。総務には言ったが、見えない圧力に上司の〃不祥事〃は幻となった。社会は理不尽だ。被害を受けている私が会社をクビになった。噂だとその上司が私に罵倒されたと報告したらしい。
もう死にたい。土手でロープを持って座っている私。木にロープをかけて首をつって終わりにしたい。太い幹の木を見ていたとき、自分のスマホが鳴った。お母さんからのラインだ。
「今度帰ってくる?ゴールデンウイークに帰ると思ったけど帰ってこなかったね。いつでも帰ってきな。あんたの好きなオムライス作るから。」
私は実家に帰っていなかった。正しく言うと帰省するという行動をすることを忘れていた。お母さんのオムライスも食べたいけど死にたい欲が強い。あとは勇気だけなのに行動に移せない。
しまった。子供が遊び始めた。ロープ掛けられないじゃん。目の前小学生くらいの人がサッカーをしている。意外とスピードのあるプレイをしていた。味方にパスをしたつもりが取れずに私のところに転んできた。私はそれを足で止めそこそこ距離のあるプレイヤーにドンピシャな飛距離とコントロールで返した。
その中学生が「めっちゃ上手い。あっ、ありがとうございます。」と感謝した。
久しぶりに褒められて嬉しかった。全くたいしたことではないのに何故か両目から涙がこぼれた。昔は気づくことはできなかった、些細な喜びを感じた。
高校のときサッカーをやっていて良かったと今になって思った。
とりあえず家に帰った。テレビをつけると、パワハラをされた上司の顔が映った。わいせつで捕まったらしい。ざまあみろ。地獄に落ちればいいのに。
そいつが捕まったぐらいで死にたい欲は消えない。一生ものの傷は消えることはない。家で死ねばいいかと思った。
またスマホがなった。お母さんからだ。
「そうそう言い忘れていた。今度小料理屋開こうと思うの。お母さん料理好きじゃん。55だけどチャレンジしてみようと思うの。だけど、お母さんお金の事難しいから奈央に色々教えてもらいたいの。経済学学んでいたから詳しいでしょ。じゃあよろしくぅ」
母親とはいえ私より年上の人が前向きにチャレンジすることに驚いた。私は死のうとしているのに。なんだか馬鹿らしくなった。微笑ましくなった。
私は決めた。
「私実家戻って、お母さんと一緒に小料理屋やりたい!」
色々な記事を書きたいです。